活動の目的
まほらプロジェクトは、次の3つの⽬的をもって広島市中⼼部に位置する基町を拠点にアートプロジェクトを展開している。
①地域の記憶の継承、地域資源の活⽤
②多⽂化‧多世代間の理解や交流の促進
③地域の「いま」の記録
基町は、⾼齢者が地域⼈⼝の約半数を占め、外国⼈住⺠は増加傾向にあるため、2023年度は特に、多⽂化‧多世代間の理解や交流 を促進する活動により重点をおいた。
活動の内容
本プロジェクトのメイン事業として、台湾からの招聘作家、基町在住作家、継続的に本プロジェクトに関わる作家5名による作品制作と展覧会「基いの町2023 おとなりさん」を実施(9⽉30⽇(⼟)~10⽉29⽇(⽇)⾦⼟⽇開場(計14⽇)∕会場として基町アパート内のスペースなど6カ所を使⽤)。
オープニングイベントとして、アーティスト‧トークや参加作家による獅⼦舞パフォーマンスを実施。週末に、中国のお菓⼦やお茶 を楽しみながら、お菓⼦の包装紙を使ったワークショップや、各展⽰会場と基町アパートを案内⼈と⼀緒に回り作品を鑑賞する「基 いの町を巡るツアー」を開催(計11回)。また地域の児童館に通う⼩学⽣を対象にスチレンボードを⽤いた版画制作や、⾼齢者を対象に昔の写真を⽤いた回想法ワークショップを⾏なった(計4回)。
参加作家、参加人数
参加作家(5名):キャンディー‧バード、古堅太郎、イタイミナコ、⿅⽥義彦、魏双斌 プロジェクトメンバーを含む関係‧協⼒者:50名
来場者:のべ674名
ワークショップ参加者:のべ186名
他機関との連携
本企画の実施にあたっては、基町アパート内での取材や作品制作・展示について、基町地区社会福祉協議会、基町連合自治会、基町プロジェクト(広島市立大学・広島市中区役所)、オルタナティブスペースコアや広島市立大学の協力を得た。
ワークショップの実施に際しては、児童館や高齢者関連3団体の協力を得た。
活動の効果
‧台湾⼈作家の招聘を通じて、中国系の留学⽣や住⺠が作品制作に参加する機会を創出できた。関わった⼈数は少ないものの、展覧 会終了後にもつながる密な関係性構築に繋がった。
‧より気楽に参加できるお茶会/ワークショップの場は、住⺠らが⽴ち寄る場となり、住⺠同⼠、住⺠と団地外からの訪問者、あるいは留学⽣をはじめとする学⽣らとの交流に繋がった。
‧基町アパートに住む作家2名が新たに加わったことで、内容の⾯で基町アパートでの展覧会としての独⾃性が増したほか、住⺠による 本企画の認知の向上及び来場に繋がった。
‧地域回想法を⽤いた⾼齢者施設でのワークショップを通じて、継続的にワークショップを⾏うためのツール開発につながったほか、 展覧会を⾒に来られない層にもアプローチすることができた。
活動の独自性
‧基町アパートという、広島の復興において歴史のある公営団地に固有の、多様な国籍の⼈々の共存、⾼齢化が進む中での多世代交 流と記憶の継承といった課題に美術を通じて取り組んでいる。
‧作品制作や展⽰への住⺠参加、⼤学との連携、基町で活動する団体との連携を通じ、より多様な⼈々を巻き込みながら企画を⾏ なっている。
‧地元の作家を中⼼に、⼀部の作家を複数年にわたり招聘することで、⼀回限りではない関係性、より深い地域の理解に基づいた作 品づくりなどを試みている。
総括
2023年度は「おとなりさん」をテーマに「多⽂化‧多世代交流の促進」に重点をおいた企画構成とした。作品制作やイベントを通じ て、特に中国系住⺠の参加や認知を向上できたことは⼤きな成果である。⼀⽅で国籍が異なる住⺠同⼠の「交流」は限定的で、団地
⽣活の中での変化を⽣むには、継続的な機会創出が求められる。基町での3年間の実践を通じて、美術が、⽇頃のしがらみを超え住⺠同⼠が出会い交流する場、あるいは作家や地域外からの訪問者らの視線から住⺠らが新たな関係性を開く場として機能しうる実感を 強めている。来年度も引き続き、さまざまな取り組みを通じて、美術が可能にする関係性づくり、場づくりを試みていきたい。