アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

おおみかアートプロジェクト2023 ピザ窯大煙突プロジェクト

おおみかアートプロジェクト

実施期間
2023年4月1日~2024年3月31日

活動の目的

大みか町の地域住民や町工場により深くアプローチをすることで、地域への帰属意識の向上と住民同士の交流の機会促進を図る。

活動の内容

2023年度は地域の職人とアーティストが協力し、日立の大煙突をモデルにした巨大な作品制作に取り組んだ。アーティストは地域の職人や工場からの技術的な支援を受けながら、巨大な彫刻作品を制作した。地域の職人や住民は「食」というきっかけからアートに触れることで、地域の中に新たな「煙突を囲んでつくるコミュニティ」を形成することを目指す。完成後は、大みか町と日立市を中心に様々な場所で大煙突の展示をし、煙突を囲んでピザを食べるイベントを開催。地域の人々は自分たちのまちで制作された作品を見ることで、地域の文化やアイデンティティを再確認することができる。

参加作家、参加人数

今年度はアーティストと運営を兼ねる形式で実施した。
主なアーティストはピザ窯大煙突の制作・イベント立案として、東弘一郎、浅野ひかりが参加して、プロジェクト全体を統括した。12月24日のイベント参加者数は250名程、ピザ提供枚数は180枚程。2回目の2月25日開催の「第二回 大煙突フェスティバル」でのイベント参加者数は1600人程、ピザ提供枚数は160枚程。

他機関との連携

日立市地域の工務店や職人さん方、地域企業からのご支援に加えて、大煙突とさくら100年プロジェクトからのご協力があった。具体的には、地域の工務店である石井工務店や、石川工務店の職人さん方より、ダイニングの設計・制作や設営サポートをいただいた。新たに日立の大煙突を後世へ継承していく団体「大煙突とさくら100年プロジェクト」との出会いがあり、地域への周知・広報でのご協力や、主催として実施している大煙突フェスティバルへの出展をおこなった。イベントをきっかけに、アートプロジェクトそのものや大煙突を地域の方々に認知していただいた。

活動の効果

活動を通して、地域の方々が大煙突を再認識すると共に、地域の歴史へ再接続するようなきっかけができた。イベントへ参加した地域の方々の中には「大煙突があることは知っていたけど、折れてしまったことは知らなかった」「小学校の遠足で煙突を見に行ったことがある」などの声があった。ピザを食べながら大煙突を観ることにより、大煙突だけではなく日立市の地域を考えるような瞬間があった。また地域の小学校へチラシを配布したことにより、子どもたちが積極的にイベントへ参加する姿があった。イベント開始時間前から受付に並び、ピザを楽しみにしている様子が伺えた。

活動の独自性

地域のシンボルである大煙突を展示することに加え、地域の方々が参加しやすいよう「食」の要素をイベントに追加した。100年前、日立市では銅精錬による煙害を企業と住民が協力し、たった1年で世界一高い煙突を建設することに成功した。しかし、1993年に大煙突は3分の1を残して倒壊してしまった。このような歴史的背景を踏まえ、再びアート作品として地域へ蘇らせるべくイベントを実施した。昨年度の「星と海の芸術祭」の反省を踏まえ、地域の方々へよりアプローチすべく、食の要素を取り入れた。アート×工業×食のイベントを実施することで、参加の敷居が低くなり、より多くの方々に楽しんでいただけた。

総括

おおみかアートプロジェクトは2021年から活動を開始した、茨城県日立市を拠点とした団体である。昨年は、地域の町工場の職人とアーティストが共同して作品制作を行う「星と海の芸術祭」を開催した。今年度は新たに「食」というテーマを追加したことで、短期間のイベントでありながらも沢山の方々にイベントを楽しんでいただけることが実現できた。
また制作プロセスの中では、運営メンバーが何度も日鉱記念館へ訪問して館長のお話を伺ったり、大煙突の設置を実現するために高度なテクニックや技術を要する場面もあった。更には飲食販売を実現するために、保健所の資格取得やプロのピザ職人のもとでピザの試作を何度も行った。たった1日限りのイベントであったが、1つ1つの壁は高く、その度に運営メンバーが顔をつきあわせて相談したり、外部への協力を募った。イベントを実施することも、巨大彫刻を展示することも、飲食を実施することも一筋縄ではいかないことばかりであったが、何とか地域の方々が喜んでもらえるような企画を実現することができた。

  • ピザ窯大煙突プロジェクト本番の様子(12/24 茨城県日立市にて実施)。行列が出来るほど、地域の方々が大煙突とピザを目当てに足を運んだ。

  • 採掘作業員をイメージした衣装を着用したスタッフが調理に携わる。日立の大煙突をモチーフとしたワッペンも制作。

  • 「ピザ窯大煙突」記録写真。オリジナルの鋼鉄製窯でピザを焼き、大煙突から煙が立ち上る。