活動の目的
島内の檀家の減少の中で管理者である畠中夫妻がご高齢であることにより男木島唯一の寺「道場」の維持管理が難しくなっている。そこで本プロジェクトでは、島の交流スペースとして「道場」を共同で維持管理を行う方法を考え、畠中夫妻をはじめとした島民の方々との繋がりを増やしながら、新たなコミュニティの創生を行っていくことを最大の目的としている。それにより、島民の高齢化や移住者増加の中で失われつつある男木島の歴史や文化の継承も図っていきたい。現在はその第一歩として、「道場」に隣接する納屋を、「オフグリッドと循環を学ぶ宿泊施設兼交流スペース」に改修している。納屋のオフグリッドな計画が、今後の島での暮らしを考えるきっかけを生むことや、島ならではの魅力や学びを提供すること、大学のサテライトゼミや企業の研修の場として使用されアカデミックな繋がりを生む場として機能し、関係人口を創出することを目的としている。
活動の経過
2023年度は男木島への合宿を5回行い、島民の方々と交流しながら納屋の改修を進め、構造補強や三和土土間を施工した。各合宿では、施工やテントサウナ体験のワークショップや食事会を開催したり、体育館開放や自治会の清掃、祭りの準備片付け等に参加したりすることで、島民の方々との関係性を深めた。大学では納屋の詳細設計に加えて、構造研や設備研との共同研究として構造補強の計画やオフグリッドな暖房・給湯設備のモックアップ作成と検証を行った。関係人口の創出を目的として、東京都世田谷区用賀での活動発表や渋谷区青山での展覧会にて展示を行い、男木島の魅力や活動内容を発信した。また、学生3名が男木島をフィールドとして修士論文を執筆し、大学院修士過程を修了した。現在も継続して学生5名が研究を行っている。
活動の成果
納屋改修における構造補強の実践と研究の過程で高松市内の製材所・材木店の方々とのネットワークの増強や製材の過程で発生する廃材の新たな活用方法の模索を図ることが出来た。現地でのワークショップとして三和土土間の施工を行ったことで、男木島の若い移住者を中心とした方々に参加していただき、関係性を構築するのみならず、移住者の方々が他の空き家で改修や生活を行っていく際に参考となる知見を共有することが出来た。食事会の開催や島内イベントへの参加においても、島内の関係性を構築するのみならず、島内の文化や歴史、コミュニティの在り方への理解を深めた。東京都世田谷区用賀や展覧会での活動発表では多くの方々に集まっていただき、関係人口や移住者の創出の足がかりを形成することが出来た。これらの活動が本年度修了した学生3名の研究へと繋がり、本年度は製材所・材木店から発生する廃材に関する研究、島内の廃棄物等を活用した断熱材に関する研究、移住者とコミュニティに関する研究が行われ、そこでの知見を島民の方々に共有した。
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高松市の製材所・材木店で発生した廃材を用いて、納屋の構造補強を完了させた。
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三和土施工のワークショップを開催し、島民の方々と一緒に左官を行った。
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祭りの稽古から片付けまで参加し、島の文化を学びながら島民の方々との関係性を深めた。