活動の目的
これまで、被災沿岸部各地区の町内会等をパートナーに、主体的に環境や復興状況に応じた取り組みを行ってきた。また、すでにアーティスト川俣正のプロジェクト「仙台インプログレス」(主催:せんだいメディアテーク)により在仙のアーティストらが参入し、イベント時のみでない関わりも芽生えている。この関係性を活かし、さらに地域の側からアーティストへの関わりを求め、新たな状況づくりを目論む。ねらいとして、アーティストらによる諸活動を通して、関心のある第三者と住⺠による、所有の関係を超えた「コモンズ」が形成される可能性を提示するべく展開する。地域資源を活かし暮らしを立ててきた集落と向き合う時、第三者もまた、資源を享受するだけでなく、育む側になる道が開かれる。地方創生における関係人口の創出が求められる今日、都市も農村もある仙台において、資源管理・活用という第三者への関わり方を示し、現代的な「コモンズ」の運営を目指し活動を行なう。
活動の内容
【井土地区】
未利用の地域資源に着目し、その管理と活用を考えるためのプログラム「井土アレザレキャンパス」を実施した。初年度であったため、特に被災後の活用について地域住民から再検討の声が上がっていたヨシに着目して、「ヨシ入門編」としてプロダクトデザイナーの小松大知氏とともに4回のプログラムの実施をとおして、井土地区にしかない自然資源の再生、およびプロジェクトに関わることをとおした関係人口の創出を果たした。また、現時点の状態を写真・映像によってアーカイブし、今後のプロジェクトを広く発信していくための状況を整備した。
【新浜地区】
・貞山運河小屋めぐり
伊東豊雄氏らが設計した新浜みんなの家をスタートし、川俣正氏が制作した運河沿いの新浜タワーまで、若いアーティストなどが制作した小屋をめぐり、アーティストから制作意図などを聞き、懇談しながら歩いた。
加えて、地元で子どもたちに絵を教えている美術家の佐立るり子を中心に、地元の豊かな食材をテーマとした、小屋めぐり参加者へのおもてなしと食育のプログラムWelcomeClubを開催した。また、WelcomeClubの活動内容を報告するまんが冊子を作成した。
・貞山運河フォーラムの開催
アーティストたちに参加してもらい「貞山運河界隈の風景をつくる」をテーマに、地域資源を活用し、新たな景色、賑わいを作り出すために、アイデアの共有ディスカッションを開催した。
・新浜フットパス
新浜町内会と連携して、川俣正氏が制作した浮き桟橋やみんなの舟で運河を渡り、海辺の自然とアート作品を鑑賞しました。また、仙台市の施設でアーティストたちに参加してもらい新浜学習会を開催し、活動報告と今後の展望を共有し合う議論を行なった。
参加作家、参加人数
参加作家:
小松大知、川俣正、佐々瞬、佐立るり子、佐藤貴宏、建築ダウナーズ(菊池聡太朗、吉川尚哉、千葉大)、熊谷海斗
参加人数:
【井土地区】井土アレザレキャンパス
〈第1回/井土のヨシ見学+ヨシ刈り〉6月30日(日)17名
〈第2回/ヨシをつかったモノづくり①(夜を灯すあかり)〉7月20日(土)19名
〈第3回/座談会:良いヨシを育てるには?〉12月7日(土)9名
〈第4回/ヨシを使ったモノづくり②(ミカド)〉2月11日(祝・火)12名
【新浜地区】
〈貞山運河小屋めぐり〉5月19日(日):37人、9月15日(日):46人、11月17日(日):44人、3月9日(日):68人
〈貞山運河の渡し船と新浜フットパス〉8月3日(土):66人、10月13日(日):36人
〈新浜学習会〉12月1日(日):40人
〈貞山運河フォーラム〉2月11日(祝・火):50人
他機関との連携
【井土地区】
本プロジェクトは、被災後の集落のコミュニティ再生に取り組む「井土まちづくり推進協議会」が企画制作を行ったが、地縁団体との井土町内会との連携によって、ヨシに詳しい地域住民を紹介していただいたり、新旧住民へのイベント参加の呼びかけが促進された。
また、中止となってしまったが、3月に予定していたヨシ原の火入れに関しては、国土交通省仙台河川事務所および東北大学とともに取り組むこととしており、「地域資源の手入れと活用の循環を取り戻すことによって、地域コミュニティ再形成と関係人口の創出に取り組みたい」という井土地区の目的も理解していただいた上で実施に向けた協議を継続して実施していた。
【新浜地区】
町内会及び地域のシンボルである貞山運河を文化転用するプログラムを実施していた団体、貞山運河倶楽部が中心となり事業を実施。他、せんだいメディアテークやせんだい3.11メモリアル交流館といった公的な文化施設や、地域にて畑を利用する第三者のサークル、環境活動に取り組むNPO、農業や自然観察を通して地域再生に取り組む団体など、多様な主体と協力することにより、複数の異なるチャンネルを通して、地域資源の魅力、活用の過程を届けることができた。今後も継続的な連携のもとに展開する予定。
活動の効果
【井土地区】
・ヨシに触れる機会は、地区外の市民だけでなく、ヨシ原周辺で遊ぶ機会が少なかった60代以下の地域住民にとっても新鮮な場となり、新たな地域資源の魅力に気づくきっかけを提供することができた。
・ヨシの特性を活かした新たなプロダクト開発は、つくるプロセスだけでなく、使う場面においても住民・市民のコミュニケーションが生まれており、地域資源活用が新たな地域コミュニティを創造する可能性を見出すことができた。
・ヨシへの関心が高い団体と出会うことができた。国交省や東北大だけでなく、地元である六郷中学校の教員が興味を持ってイベントに参加してくださり、次年度の活動のきっかけにもなった。
【新浜地区】
アーティストが現場で制作した作品が常に地域にあり、イベントの際にアーティストと懇談できることは住民の励みになるし地域の魅力になる。加えて、イベント時のみならず、アーティストらが日常的に農作業や各種制作を行うようになり、地域との関係を深めながら、相互に良い影響を与えている。また、イベントを通して、海外の来訪者が興味を持って地域を巡ったり、イベントのない日にも散策している方が見られたことは、今後、沿岸部の自然とアートの力で、仙台市の沿岸部を魅力的な自然&アートミュージアムを目指す上で、特筆すべき変化だと思われる。
活動の独自性
【井土地区】
東日本大震災における被災によって、地域コミュニティの再形成が急務である井土地区において、まちづくりに関する直接的な議論の場だけでなく、かつて集落に根付いていた自然資源の手入れと活用の場面の再創出によって、地域住民同士が再び集まれる機会が生まれることを証明することができた。イベントに参加していない地域住民からも、他の地域活動の場でヨシについて尋ねられたり、かつてのヨシに関する情報提供の場面も増え、関わり方のグラデーションがありながらも、地域住民の中でヨシへの関心が高まっていることがうかがえた。
井土地区が目指している地域コミュニティの再形成の観点からも本プロジェクトが寄与できるよう、活動を継続していきたいと考えている。
【新浜地区】
アーティストが制作した作品が屋外に常設され、訪れた人がいつも見ることができる。また、若いアーティストが随時訪問して作品に手を加えたり、ワークショップを開催している。
アーティストが地域に密着し、震災で被害を受けた集落の魅力を引き出して住民を励ましている。アートを通して現地再建した暮らしや生業の魅力を市民に広く知らせるなど効果的ある。
総括
仙台市沿岸地域において、既存の地域活動とアーティストやクリエイターとの協働により、地域資源の新たな活用、及び継続的な第三者の関わりを、各事業を通してトライアルする助成1年目となった。今後は、2024年度の活動で得た新たな団体とのご縁や、アイデアをもとに、地域資源を通した「コモンズ」の運営に引き続き取り組んでいく。
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「井土アレザレキャンパス」のプログラムにて葦でランプシェードを制作
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「貞山運河小屋めぐり」にて地域で活動するアーティスト佐々氏が参加者と交流
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「貞山運河フォーラム」にてデザイナー熊谷氏がプランについて話す