活動の目的
釜川流域で人や生き物が健やかに育まれる空間を創出することを目指し、これまで交わることの無かった動植物・土地活用・歴史・アートなどの分野の専門家を招聘することで地域の魅力を多角的に考察している。そのために官民連携を実現し、公共空間の活用など民間の力だけでは実現しにくいアプローチにも積極的に取り組むことで、地域活動の担い手の育成にも繋げている。また、弊会の調査で、絶滅危惧種の生息が確認できるなど、豊かな生態系があることが判明してきた。このような釜川が持つ豊かな生態系を手掛かりに、地域の特性をクリエイターとともに発信し、人と生き物がより良く共生することができる空間づくりを行う。
活動の内容
1.釜川の⾃然環境および周辺市街地の調査研究にアーティストが同⾏し、まちへの理解を深ていくリサーチベースのアーティスト・イン・レジデンス(アーティストの滞在)をのんき跡で実施(後述のイベント実施と併せて、2024年9月から2025年2月にかけて、アーティスト2名、キュレーター1名計20日間実施)
2.滞在の過程で、招聘アーティストが地元クリエイターや地域住⺠と交流するラーニングプログラム(アーティストやゲストを招いたトークイベント等)を2024年10月より以下3プログラムで実施。この中で、のんき跡や、釜川河川敷、市街地の公共空間でのワークショップを通じて、上記調査結果を表現を通じて地域住⺠らと共有。
①釜川にビオトープをつくろう!まちなかで釣り生き物調査!
最初に、寺田氏のレクチャーのもと、ふれあい広場付近で魚釣り調査を実施。調査後は、釜川図鑑を見ながら、釣れた魚の観察会を実施。
その後、安田氏のレクチャーのもと、牧水亭付近で生き物の居場所となる石積みビオトープづくりワークショップを実施。
併せて、親水空間となる置石・飛び石の設置も実施
②トークイベント「“流域”から釜川の風景と文化を考える」
最初に、廣瀬氏より、ランドスケープデザインや釜川流域の地図や地質調査を通じて明らかになった釜川の歴史、古写真や釜川周辺で暮らす人々の話を手掛かりにした、かつての釜川の姿や人々の暮らしについてお話いただく。
その後、2グループに分かれて、これまで、そしてこれからの釜川の風景や文化について考えるワークショップを実施。
③釜川の植物でたたき染め!ブックカバーをつくろう!
最初に、釜川沿いにて前田氏の解説を聞きながら、植物採集(モミジ、ヨモギ、ツツジ、サンショウ、エノキ、ドクダミ等)を実施。
その後、のんき2階に移動し、山本氏のレクチャーのもと「たたき染め」によるブックカバーづくりを行う。
3.これらの⼀連の活動記録のアーカイブ展⽰「釜川河岸アーカイブス」を、2025年2月に実施
参加作家、参加人数
①釜川にビオトープをつくろう!まちなかで釣り生き物調査!
実施日時:2024年10月19日(土)・10:00-12:00
参加作家:寺田浩之(KOKOPELLI+代表)、安田陽一(日本大学理工学部土木工学科教授)
参加人数:18名(定員:20名)
②トークイベント「“流域”から釜川の風景と文化を考える」
実施日時:2024年10月20日(日)・13:00-15:00
参加作家:廣瀬俊介(風土形成事務所・主宰)
参加人数:15名(定員:15名)
③釜川の植物でたたき染め!ブックカバーをつくろう!
実施日時:2024年11月23日(土)10:00-12:00
参加作家:山本愛子(美術家)、前田瑞貴(箱根植木株式会社)
参加人数:19名(定員:20名)
④釜川河岸アーカイブス(アーカイブ展⽰)
実施日時:2025年2月15日(土) ・16日(日)10:00-18:00
参加作家:安藤 隆一郎(染色作家)
参加人数:8カ所の地元商店を訪ね歩きし、展示紹介とヒアリングを実施。また、訪ね歩きする中での通行人や公共空間「KMGWBOOKS」を訪れた多数の方々にアーカイブ展示を紹介・発信
他機関との連携
実施に当たっては、釜川周辺エリアのまちづくり団体・会社である、釜川プロムナード整備協議会、ビルトザリガニまちづくり合同会社と、周辺団体・住⺠の仲介、施設設計・整備の点等で協力し実施した。
また、宇都宮市、⾃治会、商店会、⼤学関係者、有識者等による協議会である「カマクリ協議会」と、地域関係者との調整、⽣物や植物等の専⾨家による助⾔の観点で協力いただき実施した。
さらに、招聘アーティストが滞在する中で、宇都宮美術館や宮染めの染工場(中川染工場、福井染工場)、地域の人々とのつながりができた。
活動の効果
本活動を通じて、アーティストレジデンスを3組のアーティストに対し計24日実施。併せて実施したトークイベント、ワークショップ等では、計52名が参加。また、釜川河岸アーカイブスにて、8つ地元商店への訪ね歩き・展示紹介・ヒアリングを実施するとともに、当日釜川を訪れていた多数の方々にアーカイブ展示を紹介・発信している。こうした活動を通じて、地域住民、地元クリエイター等との交流を図るとともに、前述のとおり、宇都宮美術館や宮染めの染工場等とのつながりも創出できている。
活動の独自性
宇都宮市街地を流れる日本で初めての二層式河川「釜川」流域を舞台にしたリサーチベースのアートプロジェクトは、これまで当団体が積み上げてきた自然環境および周辺市街地の調査研究を元に、研究結果をトークやワークショップを通じて地域住民らに共有できたほか、アーティスト・イン・レジデンスを契機に地域団体との新しい関係性の構築を行なうことができた。一連の活動をコミュニティ拠点として整備を進めている空き家(釜川沿いにある元おでん屋)を会場として行ったことで、今後の拠点活用についての効果的なヒアリングの機会にもなった。
様々な専門化が集まっているプロジェクトだからこそ、質の高い調査研究をアーティストへ共有し、そしてアートを作品鑑賞や体験だけにとどめずこれからの釜川流域を形づくる具体的なアクションへと繋げていく可能性があるだろう。
総括
2024年度の事業においては地元産業を⽀える企業や宇都宮市美術館などとの新たな交流が⽣まれたことで、他団体との協働の可能性や地域の歴史や⽂化を収集するコミュニティアーカイブの必要性も見いだせた。また、今回、レジデンスアーティストが滞在できるレジデンスを整備し、本事業のイベントでも活⽤。本施設は、レジデンスのほか、商店が集まる⽂化複合施設としての⻑期的な活⽤に向けて改装計画なども進み始めている。
また、本事業に取り組む中で、郷⼟資料館など地域の歴史を学ぶ場所が無いこと、市内⽂化施設の地域連携プログラムが希薄になっている等の課題が⾒えた。当初は中⻑期⽬標として「芸術祭」等への展開も⽬指したが、芸術祭という形式⾃体が問われる昨今、釜川エリアを拠点としたコミュニティアーカイブの設置や地域活動を促進する中間⽀援など、作品展⽰を中⼼とした芸術祭形式だけではない社会とアートを繋ぐ仕組みづくりを模索したい。それは⽣物多様性や都市の調査実績がある当会だからこそ⾒えてくるシビックプライドの醸成や⽣涯教育としてのアートプロジェクトの可能性があると考える。