アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

見えない気配/痕跡

阿部峻久

実施期間
2024年4月1日~2025年3月31日

活動の目的

本事業は、震災と原発事故により失われた「人の気配」や「痕跡」に対し、単なる記録ではなく、未来にあり得る可能性を探究・可視化する試みです。アーティストのレジデンスを通して、地域住民や関係者との対話の場を創出し、アートを媒介に町の歴史を次世代へと継承することを目的としました。

活動の内容

2024年3月より準備を開始し、オンラインおよび現地での打ち合わせ・リサーチを経て、5月から9月にかけて大熊町、浪江町、富岡町にてレジデンスを実施しました。アーティストによる現地フィールドワークと対話を重ね、2025年1月には大熊インキュベーションセンターにて成果展示を実施しました。展示では、町の「見えない痕跡/気配」をテーマとした写真・サウンド作品を通して、訪れた人々と新たな視点を共有しました。

参加作家、参加人数

参加アーティスト:
新津保 建秀(写真家)
細井 美裕(サウンドアーティスト)
参加人数(関係者・来場者含む)
アーティスト・スタッフ・町関係者:約15名
展示期間中の来場者数:約80名

他機関との連携

大熊町役場、富岡町役場等をはじめとする地元関係者との定期的な協議・調整
(一社)HAMADOORI13との協力体制により、展示実施と広報展開を支援

活動の効果

町民・行政関係者とアーティストが地域の現状と未来に対して共に考える機会を創出し、アートを通じた対話の糸口が生まれました。来場者へのアンケート結果からは、町への新たな視点が得られたという感想が多く寄せられ、アートによる記憶の継承と未来の可能性への関心を喚起する場となりました。

活動の独自性

震災・原発事故という重層的な背景を持つ地域において、「見えないもの=気配や痕跡」をテーマとしたアート制作は、単なる記録や観光振興とは一線を画し、深い思考や感情を呼び起こす取り組みです。写真と音という異なる表現を組み合わせることで、多層的な感覚体験を提供し、見る者の内面に働きかけました。

総括

本事業は、震災から10年以上が経過し、急速に再開発が進むなかで見過ごされがちな「記憶」や「見えないもの」に焦点をあてる貴重な機会となりました。アーティストの視点から地域を見つめ直すことで、町民・関係者の間に静かな共感と関心の広がりが見られ、今後の文化事業の基盤づくりにもつながりました。

今後は、継続的なシリーズ化・芸術祭の開催・団体の法人化など、中長期的な展望のもと、地域と共に歩むアートプロジェクトとして発展させていきたいと考えています。

  • 中間貯蔵施設内にある旧熊町小学校でのリサーチ

  • 中間貯蔵施設内でのリサーチ

  • ワークプログレス展 展示風景