活動の目的
1:私たちがより地域を面白く見られるような機会を生み出す
アーティストの視点や切り口とそこから生まれる作品は、地域をより魅力的に輝かせてくれるものになることがある。想像を超える出会いや化学反応が各地で起き、私たちが暮らす地域がもっと面白く見えるようになる、その実感と成功事例をつくる
2:地域×地域、地域×アーティスト(さらにその関係者)、 アーティスト同士など、関係人口の拡がりを生み出す
アーティストによるリサーチ・創作活動をハブとして、思いがけない人と人、コミュニティが出会い、 地域の関係性が複雑にかつ有機的に拡張させる
活動の内容
・胆振エリア4市町(苫小牧・白老・登別・室蘭)を舞台に、複数のアーティストを招聘し、多層的なアーティスト・イン・レジデンス(AIR)を実施する。アーティストは、胆振・滞在エリアを中心としたリサーチや作品制作を行う。
・AIRアーティストは、公募制をとり、受入地域とのマッチングを行う。
滞在期間中に、地域プレイヤー・住⺠・アーティスト間のコミュニケーションを密に、リサーチや作品展示、その共有を行う。
・発表は記録として残し、胆振エリアで配布・共有する。
参加作家、参加人数
参加作家:小槙ひなこ(苫小牧エリア)、氷見房子(白老エリア)、田中彰(登別エリア)、葛谷允宏(室蘭エリア)
・参加希望する受入地域の組数:4組
・関わった人数:ゐぶりのメンバー及び深く関わった人数/30名
イベント等の来場者数/約300名
(概算/ 苫小牧 100名 ・ 白老 50名 ・ 登別 80名 ・ 室蘭 60名)
・応募アーティストの人数:6名
(居住地/北海道、石川県、茨城県、福島県、山口県、東京都)
全国各地からこのプロジェクトに興味を抱き、応募していただいた
他機関との連携
今回4地域の地域プレイヤーと一緒にこのアーティスト・イン・レジデンスに挑戦することになり、そのプレイヤーと地域のつながりによってさまざまな展開ができました。今回4地域のうち3地域は地域のお寺が展覧会会場として協力してくれ、檀さんやそこに訪れる人たちとの繋がりができるなど大変興味深い形になりました。
白老:白老町内で開催される「ルーツ&アーツしらおい2024」のアーティストとゐぶりのAIRアーティストの交流、また地元コンテンポラリーアートギャラリーで展開するプログラムとのコラボレーション、展示・パフォーマンス会場さらにはピアノの練習場所として「観音寺」をお借りすることで交流に広がりが生まれたと感じています。
登別:地域の学芸員や、温泉団体、炭鉱を管理するセンターなどリサーチを通して多くの人とのつながりが生まれていました。特に会場となった瀧泉寺では、アーティストが着目した裏山にある源流が他地域の人たちにもその価値が見直され、行政や観光に携わる人が訪れるなど次の展開に発展する種になりました。
苫小牧:滞在・制作拠点となったコワーキングスペース「Tomakomai Hub」がハブとして機能し、アーティストの制作過程を地域の人たちが見守り、応援する風景が生まれていました。展示等に関しても、そこを訪れる人たちがアイデアを出したり、展示作業に協力してくれたりと新しい繋がりが生まれた他、Tomakomai Hubに登別地域から訪れる人も多々あり、新しいネットワークができていました。
室蘭:室蘭で開催されているアートプロジェクト「鉄と光の芸術祭」との連携をはじめ、活動拠点になった雑貨屋「ミニマム」店主をはじめとする町内会の方、室蘭工業大学の学生など、スナックごっこというプラットフォームを使ってさまざまな人たちが繋がる機会ができていた。ゐぶりのメンバーもみんなで「すなっくマキシマム」に集合してコミュニケーションの場として活用するなど良い場として機能していた。
活動の効果
・参加した受入地域・プレイヤーの満足度(満足した・有意義だったが8割以上)
→大変満足・満足/71%、どちらとも言えない 29%
・参加したアーティスト・クリエイターの満足度(満足した・有意義だったが8割以上)
→満足 100%
・参加した自治体およびプレイヤーの意向度(次回も参加したいが8割以上)
→どちらとも言えない/75%、参加したい15%
・連帯感や課題感の共有が生まれる (そう思うが8割以上)
→そう思う/86%、 どちらとも言えない/14%
・情報交換や飲み会などコミュニケーション機会が増える(そう思うが8割以上)
→そう思う/86%、 どちらとも言えない/14%
・今まで出会わなかった人が出会う機会になる(そう思うが8割以上)
→そう思う/86%、 どちらとも言えない/14%
・胆振や居住地域に、今までなかった新しい視点や切り口に気づく、面白く感じるようになる(そう思うが8割以上) →そう思う/86%、 どちらとも言えない/14%
・胆振エリアにワクワク感を感じるようになる (そう思うが8割以上)
→そう思う/72%、 どちらとも言えない 28%
・参加したアーティストが、胆振エリアにまた訪れたいと思うか(そう思うが8割以上)
→そう思う100%
活動の独自性
このプロジェクトの独自性はやはり、マッチングイベントによる地域×アーティストとの合意によるスタートと、同時にレジデンスを行うことでの相互作用にあると考えてます。
応募してくれたアーティストらと4地域のメンバーが1泊2日で、合宿のように互いの地域を知り、活動について語り合い、交流したマッチングイベントは、最も「ゐぶりのAIR」らしい場だったと思います。振り返りミーティングでも、「マッチングイベントが楽しかった」「あれが複数回行えたら良かった」が総意になっています。
また、それぞれの地域がどのようなことを行なっているのか、LINE WORKSを用いてブログ的に活動をシェアするなどは、地域間の気づきややり方の共有に有効だったと考えています。孤独になりやすいアーティストですが、みんなそれぞれの活動の様子を見ながらモチベーションを保つことができたという効果もあったようです。
意識的にメンバーやアーティストそれぞれが他地域に訪れたり、イベントに参加するなどしたものの、特にアーティストは制作に集中する時間も必要で思ったほどの対話には至らなかったと考えています。今後は、滞在期間や制作状況を踏まえた上で、交流プログラムの優先度を高め、より綿密な計画を立てる必要があること、さらには滞在期間を長くするなどの工夫が必要だと思います。
総括
初開催となる「ゐぶりのAIR」を振り返るにあたり、「こんなことをやりたいんだけど」と繋がりのあるメンバーに相談し、「面白そうだからやってみよう」と乗ってくれたことで、胆振4地域での実施が実現したことは本当にありがたかった。
今回、プロジェクトスタートの段階で、ゐぶりのAIRが大事にするべきところに課題が生まれていました。1つは、重要視していたマッチングによって選ぶ人と受け入れる人の不一致。受入地域側の体制や状況によって難しくなる可能性は起こりうると思うのでその都度、誰が主体的な窓口であるかを確認すべきでした。ゐぶりのメンバーとしてのコミットや主体性があって、初めて「ゐぶりのAIR」という形が成立するものだということがよく理解できたので、次回以降に十分活かせるものになりました。
もう1つが、4地域が同時期にレジデンスを開催できなかったこと。初回のアーティスト募集の不安や相乗効果を計算するあまりアーティスト(田中彰さん)への負担が大きくなりすぎてしまいました。結果的に登別の開始が全体と大きくずれ込み、4地域が同時に展開することが出来ませんでした。田中さんが白老で創作活動していたことから生まれたことももちろん多くあるが、4名が同じタイミングで各地で活動していたら、また何が起きていた・起こせていたかなと考えています。
この2つの課題を抱えながらも、実施できたことにより多くの学びが得られました。
苫小牧では今でもトマハブに小槙さんの作品が飾られ、新たな出会いが生まれています(6月には個展が開催される)。登別では2025年春に「登別十景」展が企画され、室蘭では「スナックごっこセット」による新たなコミュニティの場として機能しています。白老では氷見さんのパフォーマンスの残像とともに、ドローイングが家に飾られており、次の白老入りの機会も現在調整中です。
地域にアートの土壌がない中でのプロジェクトの難しさと面白さも改めて感じた。登別や苫小牧では特にアートプロジェクトに免疫がないながらも、アーティストを通して、また地域の中心的な人物らの動きから興味を持ち参加する人が多く見られました。
また滞在を通して「他の地域も面白そう」と感じたアーティストも多く、これは他地域で同時展開する「ゐぶりのAIR」ならではの成果だろうと思い嬉しく思った。
また、継続的にこのプロジェクトを進められるかどうかについても、やはり人と人のコミュニケーションでしか成り立たないAIRは、時間はもちろん精神的な負担も大きくあります。ゐぶりのメンバーへの次回以降の参加意向度(次も参加したいかの問いに、どちらとも言えないの回答が多い)は、とても素直な意見であり、それぞれがアーティストにしっかり向き合って活動したからこその結果だと感じています。
初年度、まず4地域で始めたことで生まれた繋がりは確実にあり、また地域の心理的距離もかなり縮まったこと、「ゐぶりのを通して、他地域との距離感がかなり近くなったことや、それぞれの顔が浮かぶようになった」という感想はメンバー総意となりました。ゐぶりのAIRを通して生まれた繋がりから何を生み出していけるのかは、今後関わった人たちの課題意識や企画力によるところも多くあり、ゐぶりのAIRの本当の真価はこれからであるし、それは参加したメンバーたちで生み出していくことでより大きな成果に繋げていきたいと考えています。
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4地域で行われたマッチングイベントにて、アーティスト・地域プレイヤーと共に行った地域視察の様子
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各地域にてレジデンスが行われ、成果発表が行われた(氷見房子によるパフォーマンスの様子)
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アーティストによるワークショップで地域の新たな繋がりも生まれた(田中彰による版画ワークショップ)