活動の目的
地域の催しや文化的な活動を通じて、世代を跨いだ担い手を育み、個性豊かな取り組みが自発的に生まれ、継続していくまちを目指す。また、近年増加する外国籍住民の実態を知り、言語を越えたコミュニケーションや協働の機会を育むことで、開かれた場づくりを目指す。
活動の内容
【展示発表関連】
<梅田哲也個展>
会期:2025年3月20日(木)~3月31日(月)
内容:大阪市此花区四貫島にある古い倉庫付き住宅を会場に、梅田がこれまで各地で制作・発表してきた作品や、作品会場となった場所での役割を終えた品々が棚にぎっしりと並ぶ。これらの物品は、展覧会やパフォーマンスのたびにスケールに応じて、役割や形を変えながら異なる場所で繰り返し用いられてきた。本展では、その循環の過程を、小さな一滴が町の川、水門、港を経て海に混ざり、また別の港へ流れ着くように、感覚に訴えかける鑑賞作品として発表した。
展示会場内でろ過されながら循環していた淀川(此花区を流れる川)の水は、会期中に開催されたイベントで来場者に振舞われた。
作品の構成や会場のリノベーションには、石川県珠洲市の銭湯や製材所から譲り受けた能登半島の木材を使用し、作品の中核を担う会場のフロア全面には、珠洲市で伐採された木が、加工されない自然なままの姿で用いられた。
また、近隣住民との対話から鳥との共生を目的とした植物の生態系が提示され、能登半島の地震で被災した燕の巣も、会場入口に移築された。
<関連イベント>
・トークライブ『たまり』(ゲスト:川俣正)
日時:2025年3月29日(土)18:00~21:00
内容:此花区で作品設置中の川俣正をゲストに迎え、互いの創作を深掘りするトークライブを開催。
・梅香・四貫島オモシロ物件ツアー(ガイド:大川輝)
日時:2025年3月23日(日)・29日(土)14:00~15:00
内容:POS代表の大川がまちを案内し、地域の歴史や「オモシロ物件」を紹介。
<リサーチ>
梅田が展覧会準備のため能登半島を訪れる機会に同行し、2024年の能登半島地震以降の状況把握を目的に、能登地域で活動する3つのボランティア団体、地域団体、ゲストハウス等に対し、活動内容や課題、地域の実態についてヒアリングした。
【地域活動】「梅香盆踊り大会」への参加
日時:2024年8月2日・3日
例年開催されている地域行事「梅香盆踊り大会」に、会場設計・演目・コンセプトなどの面で『水門』のプロジェクトとして参加協力をおこなった。梅田哲也がやぐらのインスタレーションと音響で関わり、演目として地元のコーラスグループや地車囃子会に加え、ジャワガムランユニット・マルガサリが出演した。
また、地域の飲食店に加え、韓国料理やネパール料理の出店も新たに加わり、国際色豊かな構成となった。
<リサーチ>外国籍住民の実態把握を目的に、自治体関係者や先例となるような団体への聞き取り調査を実施した。
参加作家、参加人数
【展示発表関連】
展示作家:梅田哲也(来場者数:460名)
トークイベントゲスト:川俣正(来場者数:40名)
物件ツアー:ガイド大川輝(参加者数:10名)
【梅香盆踊り大会】
出演:踊りの和田師範と秀西会、プラムマザーズ、住吉神社地車囃子会、マルガサリ、旭堂南歩、梅香連合振興町会 女性部
(来場者:1500人)
他機関との連携
本企画の実施にあたっては、ふつか、新出製材所、海浜あみだ湯、大阪市市民局ダイバーシティ推進室、NPO法人DANCE BOX、梅香地域活動協議会、梅香連合振興町会をはじめ、多くの個人や地域店舗、団体等の協力を得た。
活動の効果
梅田哲也個展および関連トークイベントには、当初目標としていた200名を大きく上回る、延べ約500名が来場した。長期間にわたる制作を通じて、会場近隣の住民との関係も徐々に深まり、会期中には多くの地元住民が足を運んでくれた。住民との日常的なやり取りが作品の着想や構成に影響を与える場面も多く、まさにこの場所でしか生まれ得ない展示となった。
これまでPOSの活動では接点のなかった地域の若者たちも多数来場した。彼らの多くは、地域のカフェや口コミを通じて情報を得て訪れたり、会場の外観に惹かれて飛び入りで来場した後、リピーターとして再訪する姿も見られた。
このほか、本プロジェクト協力者の一人が、会場向かいの空き物件を活用し、シルクスクリーンのスタジオ兼ショップ「ふつか」を新たにオープンするという展開も生まれた。本展では会場の所在地を公開せず、「ふつか」を受付にしたことで、来場者がそのまま印刷体験やワークショップに参加したり、逆に「ふつか」を訪れたことをきっかけに展覧会へ足を運ぶなど、相互的な連携と相乗効果が生まれた。
また、梅田展では能登半島とのつながりが重要なモチーフとなっていたが、事前にヒアリングを行った能登半島の住民たちが実際に展覧会を訪れるなどの嬉しいサプライズもあった。
外国籍住民との関わりの成果については、「梅香盆踊り大会」にて、近隣のインド・ネパール料理店に出店依頼したことから新たな関係が生まれたことや、インドネシア国籍の住民がガムランの演奏を聞きつけて来訪する場面もあった。一方で広報物の配布や近隣の語学学校・店舗へ案内をおこなったことからの成果は確認されなかった。先例となるような団体やボランティア団体へのヒアリングでも指摘があったように、外国籍住民との関係づくりは時間のかかるプロセスであり、今後も長期的な視点で信頼関係を築いていく必要があると考えている。
活動の独自性
POSの活動は、2009年から継続してきた地域活動や地域との連携・信頼関係に根ざしており、アーティストやクリエイターとの共同作業が、町会や地元の保存会など地域活動と地続きなものとして行われている点に特徴がある。今回のプロジェクトにおいては、夏の一大行事である盆踊り大会に『水門』を迎え入れてもらい、梅田哲也個展においては、制作過程においても様々なかたちで地域の人々が関わりを持ってくれた。あらかじめ決められた計画を実現するのではなく、その場その時に生まれる偶然や関係性を受け止めながら展開していく梅田の手法は、アーティスト固有の創造性によるものであると同時に、本プロジェクトの独自性を成すものであった。
総括
今回のプロジェクト『水門』は、POSがこれまでの経験を通じて培ってきた地域との関係性を基盤に、梅田哲也というアーティストと伴走することで、より多様な立場のコミュニティに開かれた新たな試みとなり、POSの従来の活動とは異なる展開や広がりが生まれた。これまでPOSが手がけてきたイベントでは見られなかったほど遠方から多くの来場者が訪れたことも、梅田のアーティストとしての力によるところが大きい。
また、プロジェクトを通じて、共感や興味をきっかけに地域住民との関係が少しずつ広がっていく実感も得られた。
一方で、近隣の外国籍住民との関係づくりにおいては目立った成果は見られなかったため、今後も地域に根ざした長期的な活動を継続していくなかで、国籍を問わず、さまざまなコミュニティに開かれた場づくりを進めていきたい。