アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

Don't Follow the Wind

Don't Follow the Wind 実行委員会

  • 福島県,
  • 東京電力福島第一原子力発電事故に伴う帰還困難区域内,
  • 2024
実施期間
2023年4月1日~2024年3月31日

活動の目的

会場の一部の除染が開始される見込みとなったため、2024年度は除染後の帰還困難区域解除にあわあせて公開する予定の展覧会の「予告編」の意味も含めたドキュメンタリー映画制作の本格的着手すること、そして住民の方々の意見を踏まえ除染前の土地の清掃・メンテナンス、作品の移動・再設置などを行い、2025年度の展示公開を目指すことが主な活動の目的とした。

活動の内容

Don't Follow the wind展の会場の一つが、2024年度から本格的に除染スタートとなった。
除染後に展覧会をオープンできる可能性が高くなったことで、除染作業前から作業後まで、除染業者、オーナー様と、現地で立ち会って継続的な協議をしながら、会場の掃除、それまで動かすことができなかったゴミの処理、メンテナンス(主に建物の柱や土台部分)、作品の一部移動、除染後の作品再設置などを行なった。
長期間継続中の、帰還困難区域内の(人間以外の)生物の生態調査(定点撮影)も同時並行として進めた。
さらに、除染に伴い長らく会場周辺を覆っていた雑草を大々的に刈り取り、除染によって取り除かれていくさまや、そしてDFWの活動の協力者である土地建物のオーナーさまへのインタビュー、除染前後の会場の撮影などを収めたドキュメンタリー映像も撮影、完成させた。
※除染作業は想定より長期に及び、2025年5月現在も完了しておらず、避難指示解除も見通しが立たないため、2025年度中の展示公開は見送りとなった。

参加作家、参加人数

(参加作家)艾未未(アイ・ウェイウェイ)、Chim↑Pom from Smappa!Group、グランギニョル未来、ニコラス・ハーシュ&ホルヘ・オテロ=パイロス、エヴァ&フランコ・マッテス、宮永愛子、アーメット・ユーグ、トレヴァー・パグレン、タリン・サイモン、竹川宣彰、竹内公太   以上12組
(キュラトリアル・コレクティブ)Chim↑Pom from Smappa!Group [発案者] 窪田研二、ジェイソン・ウェイト、エヴァ&フランコ・マッテス   以上4組
(実行委員)Chim↑Pom from Smappa!Group(アーティスト)、藤城里香(無人島プロダクションディレクター)、窪田研二(キュレーター)、緑川雄太郎(アートディレクター)、椹木野衣(美術批評)、竹内公太(アーティスト)、ジェイソン・ウェイト(キュレーター)、山本裕子(ANOMALYディレクター)
以上8組



他機関との連携

福島県郡山市にある国立環境研究所(www.nies.go.jp)とデータの共有を開始した。国立環境研究所は、福島の野生生物に関する研究に画像やビデオを組み込んでいる。また、国立環境研究所より20台のオーディオレコーダーが提供協力され、この地域の野生動物をよりよく追跡できるようになった。この結果、国立環境研究所の研究者、元住民、Don't Follow the Windが協働した学術論文が発表されることになる。。これらの論文は2025年秋に出版が開始される予定である。

活動の効果

2025年は、Don't Follow the Wind最大の会場である場所の除染作業が始まった重要な年だった。高齢のオーナーが現在関東にいるため、実行委員会は現場で業者や行政とのミーティングをたびたび行った。そこで2027年に作業が完了したときの展覧会の計画が立てられた。
DFWは農場のドキュメンタリーを制作し、除染等によって空間が根本的に変わる前の状態を撮影した。このドキュメンタリーは、来場者が将来この場所を理解するのに役立つ、場所の重要な歴史を伝えるもので、オーナーやその家族、友人へのインタビューや、この場所の歴史的な映像も含まれている。
1つ目のドキュメンタリーは完成したが、まだ公開することはできない。
ただこのことがきっかけとなり、『Don’t Follow the Wind』で2番目に大きな会場であり、2026年から除染が予定されている場所で、二つ目のドキュメンタリーを制作することになった。この二つ目のドキュメンタリーは、2025年にバンコクで開催されるゴースト・ビエンナーレで上映される予定。
現地での画像、映像、音声の記録は、アーティスト、研究者、そして福島県郡山市に拠点を置く国立環境研究所(www.nies.go.jp)の政府雇用研究者のコラボレーションにつながった。これらの論文は、科学者、研究者、元住民、アーティストの共著による初の科学的研究となり、帰還困難区域に生育する動物群について、各グループのユニークな技術と観察に関わるものとなるだろう。

活動の独自性

「Don't Follow the Wind」の活動は、アート、科学、そして自分たちの土地であるにもかかわらず災害に起因するネガティブな記憶を抱えた人々が関わる場所を融合させたユニークなものである。「Don't Follow the Wind」プロジェクトは、将来の展示のために帰還困難区域で会場の整備等をするだけでなく、さまざまな方法で、土地の持つ歴史と生態系を記録している。アーティストたちは、科学者、政府関係者、避難住民とともに、除染、生態系調査、ドキュメンタリー映画制作を通して、この場所の変容を記録し、その記憶を保存する。このプロジェクトは、災害後10数年以上を経過した避難住民からのオーラル・ヒストリーを収集することで、時間に対する感受性を高め、帰還困難区域内での作業に取り組むことで、長期的文化的・生態学的事業を行っている。定点撮影、アーカイブ資料、セクターを超えた共著(アーティストと元住民が関与する近刊の科学論文を含む)の統合は、社会参加型アートの強力なモデルを作り出している。DFWが制作するドキュメンタリーは、将来この地を訪れる人々に、この地だけでなく、この地を形作った人間と人間以外の物語を理解してもらうためのものである。

総括

「Don't Follow the Wind」プロジェクトは2024年度、最大の会場である福島の帰還困難区域のとある農場での除染開始とともに重要な活動を行った。チームは、清掃、構造物の修復、アート作品の移設、定点撮影、ビデオ、サウンドスケープによる長期的な生態系モニタリングなどの準備を行った。大規模なドキュメンタリーの制作も開始され、コミュニティ・プロジェクトとしての農場の歴史について、高齢の所有者へのインタビューや記録映像を交えた映画と、2025年にバンコクで開催されるゴースト・ビエンナーレで上映予定の映画がこの時期に制作された。これらのドキュメンタリーは、除染前後の現場を捉え、重要なオーラル・ヒストリーを保存するものである。国立環境研究所(NIES)とのコラボレーションでは、画像やビデオを共有し、野生生物を追跡するためのオーディオ・レコーダーが提供協力された。このような学際的な取り組みによって、この場所の変貌が確実に記録され、将来の展示と理解のために文脈化されるのである。

  • ドキュメンタリー映像より静止画

  • 除染作業の様子

  • 地域動物の観察