アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

基いの町2024

まほらプロジェクト

実施期間
2024年4月1日~2025年3月31日

活動の目的

まほらプロジェクトは、次の3つの目的をもって広島市中心部に位置する基町を拠点にアートプロジェクトを展開している。 ①地域の記憶の継承、地域資源の活用 ②多文化・多世代間の理解や交流の促進 ③地域の「いま」の記録 2024年度は、とくに地域の記憶の継承と地域資源の活用に重点をおいた活動を行った。

活動の内容

本プロジェクトのメイン事業として、県外からの招へい作家、基町在住作家、継続的に本プロジェクトに関わる作家3名による作品制作と展覧会実施「基いの町2024 めぐるものたち」を実施(9月28日(土)~10月27日(日)金土日会場(計14日)/会場として基町アパート内のスペース4カ所を使用)
オープニングイベントとして、アーティスト・トーク、参加作家による被爆樹木を巡るツアーやレセプションでの獅子舞パフォーマンスを実施。基町小学校の3年生を対象としたワークショップや展覧会鑑賞ツアーの実施。一般向けに、植物観察に基づいた絵画制作やプローチ制作、また倉庫のモノをモチーフにしたデッサンのワークショップ、及び各展示会場を案内人と一緒に作品鑑賞をする「基いの町を巡るツアー」や基町の被爆樹木を見てまわる「被爆樹木を巡るツアー」を開催(計10回)。また、週末には中国のお茶やお菓子を楽しみながら展覧会の感想を共有する交流の場を設置。

参加作家、参加人数

参加作家(3名):イタイミナコ、小田原のどか、鹿田義彦
プロジェクトメンバーを含む関係・協力者:50名
来場者:のべ696名
ワークショップ等参加者:のべ152名

他機関との連携

本企画の実施にあたっては、基町プロジェクト(広島市立大学・広島市中区役所)、基町地区社会福祉協議会、基町連合自治会、オルタナティブスペースコアや広島市立大学の協力を得た。
基町アパート内での取材や作品制作・展示については、基町小学校や広島大学大学院都市・建築計画学研究室の協力を得た。

活動の効果

・枯死した被爆エノキを作品展示で取り上げたことで、長年、被爆エノキに関わってきた基町小学校と連携して、同エノキの調査や被爆樹木を巡るツアーを実施することができ、小学校と密な関係性を構築することができた。
・基町小学校で被爆樹木を描くワークショップを行い、その作品を会期中に展示したため、保護者を含む住民にも見てもらうことができた。
・ワークショップや中国のお茶を楽しむ空間に、基町に育つ花や植物を取り上げた作品を展示したため、住民らが気軽に立ち寄れる場となった。住民同士、住民と団地外からの訪問者、あるいは留学生をはじめとする学生らとの交流に繋がった。
・高層アパートの倉庫に眠るモノ、被爆樹木や地域の植物を取り上げた作品展示やワークショップを通して、地域資源や地域の記憶を継承する機会に繋がった。

活動の独自性

・基町アパートという、広島の復興において歴史のある公営団地に固有の、多様な国籍の人々の共存、高齢化が進む中での多世代交流と記憶の継承といった課題に美術を通じて取り組んでいる。
・作品制作や展示への住民参加、大学や地元の小学校との連携、基町で活動する団体との連携を通じ、より多様な人々を巻き込みながら企画を行なっている。
・地元の作家を中心に、一部の作家を複数年にわたり招聘することで、一回限りではない関係性、より深い地域の理解に基づいた作品づくりなどを試みている。

総括

2024年度は「めぐるものたち」をテーマに「地域の記憶の継承、地域資源の活用」に重点をおいた企画構成とした。基町の被爆樹木や植物、倉庫に眠っていたモノを取り上げた作品制作やイベントを通じて、見過ごしていた日常や忘れられていた地域の記憶を創造的に更新させながら、新たな気づきや発見につながる機会を創出することができた。特に基町小学校や広島大学大学院都市・建築計画学研究室と連携して、作品制作の取材やワークショップを実施したことで、住民や関係者の参加を向上させる上で大きな成果となった。一方で国籍が異なる住民同士の「交流」はまだ限定的で、団地生活の中での変化を生むには、継続的な機会創出が求められる。基町での4年間の実践を通じて、美術が、日頃のしがらみを超え住民同士が出会い交流する場、あるいは作家や地域外からの訪問者らの視線から住民らが新たな関係性を開く場として機能しうる実感を強めている。今後も引き続き、さまざまな取り組みを通じて、美術が可能にする関係性づくり、場づくりを試みていきたい。

  • 基町アパートの倉庫に眠っていたモノを取り上げるイタイミナコの展示作品

  • 被爆エノキを取り上げた小田原のどかの作品を鑑賞する地元の小学生

  • 鹿田義彦の作品展示と共に中国茶を楽しみながら展覧会の感想を共有する場