活動の目的
地域の各所に遺る様々な地域遺産は、年配の島⺠のかすかな記憶にその存在を留めるだけになっており、いわば地域の中で「無意識化」している。しかしこれら地域遺産は、先⼈たちが重ねてきた「⽣きるための実践」であり、その存在と記憶を「意識化」することは、これからの地域の持続可能性を考えるための強いメッセージになると考えている。地域遺産を「意識化」するためには、ある局⾯では我々が島の⼈々に学び、別の局⾯では我々が専⾨的知⾒で得られたコトを⼈々と共有し、さらなる学びの基礎にしていくという双⽅向的なコミュニケーションが必要と考えている。このようなコミュニケーションを「カウンセラー不在のカウンセリング」として⾃覚的にとらえ、この⼀連の活動を「ヘリテージ・カウンセリング」と呼んでいる。
今回の活動では、直島諸島が本来持っていた地域の潜在⼒や可能性を「意識化」することを目的に、直島諸島の⼈々への聞き取りから学んだことを、フィールドワークによって実地に追体験し、その成果を町民向けに展示やモニタツアーなどで発信するプロジェクトを実施した。
活動の経過
これまでの聞き取りの成果を踏まえ、⼩規模島での過去の農耕の実態を探るため、6~12月にかけて荒神島、屏風島、喜兵衛島でフィールドワークを実施した。特に、荒神島では棚田の調査(棚田と⽔源(溜池)の現状確認)、動植物の調査を実施した。屏風島・喜兵衛島では、フィールドワークを実施するとともに、屏風島の島民からの聞き取り調査を実施した。
その後、1~2月にかけて、これまでのフィールドワークの成果を取りまとめ、『直島野帖』vol.1を作成し、直島町で全戸配布を行った。
3月19日~4月11日には直島町役場を会場に企画展『直島野帖』を開催し、関連イベントとして、3月24日に島民などを対象としてモニターツアー(8名+ガイド2名)を開催した。さらに、4月11日には島民との談話会を実施し、調査成果を踏まえた対話の機会を設けた。午後からは本村地区を展示パネルを担いで練り歩き、6箇所でライブ展示を開催した。今後、5月23日(金)には讃岐おもちゃ美術館にて、トークイベント「直島野帖~つながりから「かたち」を探る~」を開催する予定である。
なお、活動内容については、四国村落遺跡研究会のFacebook、instagram、Xで発信した。
活動の成果
荒神島のフィールドワークを通じて、地形を巧みに利用した農地の造成、水の確保が行われていたことが確認でき、他の小規模島における調査とともに、小規模島における複合的な生業のあり方を確認することができた。また、聞き取り調査でも、直島島内や周辺の島で生活圏やつながる地域や場所に違いや共通点があることから、複数の島や島内の地点とつながりをもちながら、暮らしが営まれていたことを明らかにすることができた。
また、これらのフィールドワークによって顕在化した事柄を、直島の島民に共有することを目的に実施した『直島野帖』の制作や企画展の開催によって、地域に埋没し、すでに「無意識化」してしまったものの「意識化」に向けた取り組みの端緒とすることができた。
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フィールドワーク実施状況
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モニタツアー実施状況
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企画展示の様子