活動の目的
「干潟と芸術」は、アーティストと研究者によるプロジェクトとして出発しています。2020年より東京湾を中心にフィールドワークや観察を行い、干潟という場から自然と芸術の関係性を考えています。河口の自然地形のひとつである干潟では、目に見えないバクテリアやプランクトンから、魚類、底生生物、鳥類に至るまで、繁殖や捕食といった生と死の循環が無数に起こっています。有機物の分解や海へ酸素を供給する沿岸の生態系としても注目され、人の手によって再生が試みられている場所もあります。しかし、 かつて東京湾に広がっていた自然干潟は、 現在では一割ほどと言われていま す。 私たちは木更津市沿岸に分布する盤洲干潟の一部を希少な環境と捉え、 生物や 植生、 物質、 風景、 歴史に目を向け、 保全・清掃活動等にも参加しています。 そして、この場所から生まれる表現が環境と響き合うことで、芸術を通してより多くの人に干潟を知ってもらう契機になると考えています。
このように多分野の研究者やアーティスト、参加者とともに盤洲⼲潟をテーマに⾃然と芸術の関わりを考える機会を継続的に持ち、アートを通じてこの環境の保全に寄与することを⽬的としています。
活動の内容
「⼲潟と芸術」は毎年、⽣物や漂着物、⾳、光、波など、環境に現れる変化をテーマに表現するアーティストを招き、⼲潟を歩きながら鑑賞するツアー形式の「タイドウォーク」やワークショップを⾏っています。参加者は⾃然の変化を肌で感じ、⾳や環境との対話を通して⼲潟の新たな魅⼒を体験します。
関連企画として研究者や⾃然保護団体の⽅をゲストに迎え、市⺠をはじめ幅広い層の参加者を募り⼲潟ツアーやトークを実施しています。多くの生物が行き交い、生命が生まれる、あるいは分解されて循環されてく自然のメカニズムである干潟は、後世に残されるべき自然環境だと考えています。この場所の行方を傍観することではなく、この場所が大切にされていく未来に関わる存在であるために、干潟という環境への適切な参加者でありたい--そうした考えのもと、年に1名のアーティストを招聘し、干潟でのリサーチとその成果公開を継続しています。
参加作家、参加人数
【参加作家】山田 悠
【参加者】
10月4日(土)~24日(土) + 1月25日(日) 6名※振替開催日 = 70名
・県外 70%、県内 30%
・予約 80%、招待 20%
・20代 20%、30代 30%、40代 20%、50代 20%、ほか(最年少 5歳、最年長 82歳)
幅広い年齢層の方に興味を持っていただき、ご参加いただきました。
他機関との連携
制作に関するリサーチで以下の機関と連携、ご協力をいただいた。
・一般社団法人まちづくり木更津/駅の図書室FLAT
地域の文化に関する聞き取りの他、広報拠点・成果物の閲覧拠点として継続的にご協力いただいている。
・湯谷賢太郎氏(盤洲干潟をまもる会会員、生態工学者、木更津高専教授)
干潟の調査に長年関わり、木更津市史アーカイブ(盤洲干潟)のご執筆をされている湯谷先生を招聘作家と共に訪問し、干潟のメカニズムに関するお話しを伺い、こちらの作品プランについてもご紹介しました。 ※ツアーのゲストとしても予定していたが、天候不良により開催中止となり、今年度は実現せず。
・木曽野正勝氏(君津市、半兵衛炭焼塾)
房総地域の産業の変化に伴う地形の変遷について、お話しを伺うことができました。
活動の効果
地域では活動を何となくご存じだったという方も増えており、活動の浸透が急速に進んでいる一般社団法人まちづくり木更津/駅の図書室FLATさん代表者の方にもツアーにご参加いただけて、5月には成果発表としてのアーカイブ展と今年度、次年度の作家を交えた振り返りのトークイベントを開催。20名ほどの方々にお集まりいただき、地域における活動への注目度が上がっている。今後、より協力関係への人脈が築ける見込みがあります。また、美術業界でも知られ初めており、横浜や大学等でレジデンス事業を行っている代表者様や、アートコーディネーター、都内のギャラリーや美術館に勤務されている方々にもご来場いただきました。
活動の独自性
参加アーティストは、その場にある素材を記録したり移動させたりしながら、環境への負担を最⼩限に抑えた⽅法で制作を⾏います。そして、一度に多くではなく、少⼈数制のツアーで場や作品鑑賞の深度・経験を深めていくのが特徴です。また、美術館やギャラリーのように受動的に鑑賞する場ではなく、訪れる時間帯や天候によって体験が変化し、鑑賞者には能動的な姿勢が求められます。表現者と鑑賞者の境界がゆらぐこの関係こそ、⾃然と向き合う⾏為であり、命と環境との関わりを実感できるものになっていると考えています。⼲潟は⼀⽇⼆度の潮の満ち引きによって現れる、陸でも海でもない⼀時的な場所です。潮位に合わせて砂に潜ったり浮かんだりする⼩さな巻⾙のように、表現者も鑑賞者も状況に応じて姿勢を変えながら場と関わることは、表現と鑑賞の新たなかたちの一つだと考えています。
総括
干潟という干潮時にのみ現れる地形という場所の性質上、その日の潮の満ち引きの時間帯に左右されます。2025年は広報を行える拠点も地域にはなく、県外からの参加者が割合として多かったこともあり、初週のAM10時開始の日程が一番予約者が少ない結果となりました。逆にPM開催の日は早くから予約が埋まる結果となり、来年度はそうしたことを踏まえて開催日時を考えていく必要性を感じています。2025年度の参加者数⽬標は合計100名(うち3割を地元の⽅)で、70名と⽬標に届かない結果でしたが、⼩学⽣から80代まで多様な年代の⽅々に参加いただき、参加者の内訳としては今後に繋がる好結果と感じています。
思いがけず、5月に地域でアーカイブ展を開催することができ、認知度や注目度も上がっていると思います。来年度は、興味をもってくださる方々が実際に参加しやすい、わかりやすい広報や、開催日時の設定を意識し、また、安全な運営と⼲潟環境への⼗分な配慮を重視し、持続可能な体制を構築したいと考えています。
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晴天時のツアーの様子
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雨天時のツアーの様子
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アーティストによるツアー参加者への作品説明