アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

炭鉄港アートプロジェクト2025

炭鉄港推進協議会

  • 北海道,
  • 小樽市、室蘭市、夕張市、岩見沢市、美唄市、芦別市、江別市、赤平市、三笠市、歌志内市、上砂川町、栗山町、月形町、沼田町、安平町,
  • 2025
実施期間
2025年9月20日~2025年10月13日

活動の目的

15市町からなる炭鉄港エリアでは、炭鉱遺産や工場景観、港湾や鉄道施設などが今もなお歴史をたどる文化財や遺産として存在し、訪れる人に北海道のまだ見ぬ魅力を語っています。しかしながら現在では最盛期から大幅に人口が減り、過疎化、人口減少が他の地域よりも早く進んでいます。私たちはこの「<すでに起きた未来>としての地域」から「あるモノで、ないコトをつくる」という視座に立ち、地域が人口の取り合いをするのではなく、それぞれ幸せに生きられる地域になることを目指して地域振興活動を続けています。 今回会場とする旧住友赤平炭鉱立坑櫓は、北海道近代化の歴史を伝える貴重な資源でありながらも、赤平市内では保全に対し賛否が分かれています。「炭鉄港アートプロジェクト」を通じて赤平市内や周辺の住民に対し、彼らの負の感情も受け止めながら、立坑櫓や周辺施設を保全していく意義を伝え、これまでよりも保全に向けて市民の意識が向かっていく状態を目指します。

活動の内容

炭鉄港アートプロジェクトは空知の石炭、室蘭の鉄鋼、小樽の港、それらをつなぐ鉄道を舞台に繰り広げられた北の産業革命「炭鉄港」のストーリーをアートを通じて再考する試みです。炭鉄港アートプロジェクト2025では、これまで「炭鉄港」に触れることの少なかった若者や地域住民等を対象に、旧住友赤平炭鉱立坑櫓に焦点を当て、その壮大な施設跡地を背景に現代アートのインスタレーション、ライブパフォーマンス、シンポジウム、ワークショップ等を2025年9月20日(土)~10月13日(月)の期間実施し、炭鉄港ストーリーの重要性を考える機会として開催しました。

参加作家、参加人数

ディレクター:端 聡(CAI現代芸術研究所)
【作品展示】
「残響する地層|Resonating Strata」(2025)/大黒 淳一
「呼応する炭鉱|Evoking Coal Mine」(2025)/大黒 淳一
「郷愁の赤平」2025/上遠野 敏
fragile distance(赤平)/西田 秀己
展示期間:2025年9月20日(土)~10月13日(月)
来場者数:約800名(開館日18日間)
【ライブパフォーマンス】
演奏者:畠中 秀幸(フルート奏者)、大黒 淳一(サウンドメディアアーティスト)、小川 紗綾佳(ピアニスト、打楽器奏者、シンガー)、有馬 圭亮(ピアニスト)
開催日時:2025年9月20日(土)11:00~12:00、15:00~16:00
参加者数:約80名
【シンポジウム】
登壇者:上遠野 敏(美術家)、酒井 裕司(NPO炭鉱の記憶推進事業団常務理事)、井上 博登(赤平市教育委員会学芸員)
開催日時:2025年9月21日(日)15:00~16:30
参加者数:約40名
【ワークショップ】
講師:ACT ART PROJECT GROUP(北海道教育大学岩見沢校学生活動団体)
開催日時:2025年10月4日(土)14:00~15:00
参加者数:18名

他機関との連携

本事業の実施にあたっては、地域内外の多様な主体と連携しながら展開しました。
会場を管理する赤平市教育委員会とは、企画・運営の両面で連携を図り、立坑櫓の歴史的背景の共有や会場調整・安全管理体制の構築を行いました。広報面では市広報誌へのイベント情報の掲載及びチラシ折込の協力を赤平市から得て、市内全域への周知強化につなげました。
NPO法人炭鉱の記憶推進事業団とは、産業遺産の価値や炭鉄港地域の歴史的背景、保存の意義について情報共有を行い、シンポジウムの構成に反映させました。
また、赤平コミュニティガイドクラブTANtanと連携し、会期中に立坑櫓周辺を巡るまち歩きやトークイベントを開催しました。これにより、鑑賞と地域理解を組み合わせた体験機会を創出し、双方の事業における集客・広報面での相乗効果を図りました。
さらに、赤平炭鉄港推進協議会とは、会期が重なった産業関連イベントと広報連携を行い、来場者層の拡大を図りました。
加えて、市内企業・団体に協賛を募り、3団体から協賛金の支援を受けました。地域内事業者が本プロジェクトの趣旨に賛同し、文化芸術活動を支える構図を形成できたことは、地域内での理解醸成と継続的実施に向けた基盤づくりの一歩となりました。
協賛金によって実施したワークショップについては、北海道教育大学岩見沢校の学生団体ACT ART PROJECT GROUPと連携し、若年層が主体的に関わる機会を創出しました。
これにより、単なる鑑賞機会の提供にとどまらず、地域資源を題材とした学びと実践の場を形成しました。

活動の効果

会期中に実施したアンケート(回答数459件)では、赤平市内在住者38名を含む来場があり、市民も参加する形で事業を展開することができました。展示の満足度は「満足」「やや満足」が97.7%、「また参加したい」が85.9%と高い評価を得ました。
「地域の文化に誇りを感じるか」という設問では、「とても感じる」「やや感じる」と回答した割合が95.6%に達しました。自由記述では「立坑櫓を新たな視点で見ることができた」「保存の意味を改めて考えた」といった声も見られ、市民を含む来場者が産業遺産の価値を再認識する契機となりました。
また、炭鉄港を「知らない」「分からない」と回答した層も一定数存在し、本事業が新たな関心層への入り口として機能したこともうかがえます。
地域では立坑櫓の保全に対して賛否がある状況の中、本事業は対立構造を強調するのではなく、アートを媒介に多様な感情や立場を受け止める場を創出した点において、市民の保全意識の醸成に向けた一歩となったといえます。

活動の独自性

本事業の独自性は、立坑櫓という保存の是非が議論されている産業遺産を、現代アートの表現の場として再解釈した点にあります。単なる展示会ではなく、インスタレーション、音楽ライブ、シンポジウム、ワークショップ等を組み合わせることで、歴史的価値を多角的に体感できる構成としました。
また、産業遺産に対する賛否や複雑な感情を排除するのではなく、それらを含めて表現・対話の対象とした点も特徴です。アートを媒介とすることで、対立構造を強めることなく、価値を再考する場を創出しました。
さらに、市教育委員会や市内団体、企業等との連携により、文化芸術活動を地域全体で支える体制を構築した点においても、炭鉄港エリアにおける新たな地域振興モデルの一端を示しました。

総括

炭鉄港アートプロジェクト2025は、旧住友赤平炭鉱立坑櫓を舞台に、炭鉄港の歴史を現代の表現で再解釈する試みとして実施しました。来場者459名からのアンケートでは、満足度97.7%、再参加意向85.9%と高い評価を得るとともに、地域文化への誇りを感じると回答した割合も95.6%に達しています。赤平市民を含む多様な来場者が、立坑櫓の価値を新たな視点から捉える機会となり、保全意識醸成に向けた契機を創出しました。
本事業は特定地域での単発開催を目的とするものではなく、炭鉄港を構成する各市町の産業遺産を舞台に展開していく連続型プロジェクトの一環です。2024年の岩見沢、2025年の赤平での実践を踏まえ、今後は開催地を移しながら、日本遺産「炭鉄港」のストーリーをアートでつないでいきます。
各開催地では、これまでの取組をパネル等で紹介し、活動の蓄積を可視化することで、単年度事業ではなく連続性と物語性を持ったプロジェクトとして位置づけます。これにより、炭鉄港地域内の横のつながりを強め、行政区域を越えた面的な広がりと周遊促進につなげていきます。

  • 炭鉄港アートプロジェクト2025展示作品「住友赤平立坑ネオン再び」

  • 炭鉄港アートプロジェクト2025ライブパフォーマンスの様子

  • 炭鉄港アートプロジェクト2025地元学生によるワークショップの様子