活動の目的
本事業は、滋賀県大津市山中町に残る盆踊り「山中江州音頭」をはじめとする地域固有の文化資源が、担い手の高齢化や若年層の流出によって継承の課題に直面している現状を踏まえ、その価値をあらためて見つめ直し、共有することを目的としたものである。日常に息づく音や記憶に着目し、「聞く」という行為を媒介として地域と他者、過去と現在をつなぐ交流の場を形成することを目指した。また、地域住民と国内外のアーティストが協働するプロセスを通じて、地域文化への新たな関心と対話を生み出し、滋賀の音風景を住民とともに再認識する機会を創出することを目的としている。
活動の内容
山中suplexは、滋賀県大津市・山中町および比叡平を拠点に、地域文化と芸術、国際交流を横断する文化活動を継続的に実施してきた。本事業アーティスト・イン・レジデンス × 国際ラーニングプログラム「みんなで響きをラーンする!」では、山中町に残る盆踊り「山中江州音頭」といった地域固有の文化資源が、担い手の高齢化や若年層の流出により継承の課題に直面している状況を踏まえ、日常に息づく音や記憶に着目した交流型のプログラムを実施した。
事業の中核として、音楽や民俗芸能と地域資源を横断する創作活動に取り組むインドネシアの2組のアーティストコレクティブ(Waft Lab/Biohaha、Jatiwangi Art Factory)を招聘し、山中町の音環境や生活文化を主題とした①滞在型共同調査(アーティスト・イン・レジデンスおよびリサーチ)、②トークおよび市民参加型ワークショップ、③最終成果発表会(国際クロストーク、ワークショップ成果の公開、オープンスタジオ)を段階的に実施した。また、国外ゲストに加え、音文化・伝統芸能を専門とする佐藤健大郎・武田力、風景と身体の関係性を探る黒川岳、日常素材と記憶を通じて音を紡ぐ山田春江をリサーチコラボレーターとして迎え、多角的な視点から地域と音の関係を読み解く機会を設けた。これらの取組を通じて、地域住民と国内外のアーティストが共に地域を歩き、耳を澄まし、制作や対話を重ねるプロセスが生まれた。その結果、伝統芸能や盆踊り、木の音、自作の歌、陶片の響きといった、これまで意識されにくかった音や文化資源が改めて共有・可視化され、参加者間で地域文化への新たな関心や対話が促進された。本事業では、「聞く」という行為を媒介として、地域と他者、過去と現在をつなぐ交流の場を形成し、滋賀の音風景を地域住民とともに再認識する機会を創出した。
参加作家、参加人数
参加作家
佐藤健大郎 × 武田力、ヘルミ・ハルディアン & アンジェラ・スナリョ、黒川岳
山田春江、テディ・ヌルマント
佐藤健大郎 × 武田力トーク:37名
ヘルミ・ハルディアン & アンジェラ・スナリョワークショップ:18名
黒川岳ワークショップ:12名
山田春江ワークショップ:18名
テディ・ヌルマントワークショップ:14名
最終成果発表会(国際クロストーク、WS成果公開、オープンスタジオ):58名
全プログラム延べ関与人数:157名
実来場者・参加者数:108名(うち、こども7名)
ーー参考までにーー
①トーク「もう民俗芸能なんて要らないよね?ーアートとの接点から眺めてみるー」
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ゲスト2名(武田、佐藤)
スタッフ5名(池田、小宮、平野、堤、浪花)
カメラマン1名(山月)
観客 大人26名
子供3名
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売上 26000円
②ワークショップ「Sensewalking Flux:感覚をめぐる変容の散歩」
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ゲスト2名(ヘルミ、アンジェラ)
スタッフ5名(池田、平野、中井)
カメラマン1名(山月)
観客 大人5名
子供3名(+大人同伴2名)
*制作キットを配布する関係から、全参加者より参加費を徴収
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売上 8000円
③ワークショップ「山中の響きを聞く:山中suplexの丸太たたき」
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ゲスト1名(黒川)
スタッフ4名(池田、平野、八木、沖野)
カメラマン1名(山月)
観客 大人6名(参加者3名+ヘルミ、アンジェラ、テディ)
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売上 3000円
④ワークショップ「どこどこ?マイソング」
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ゲスト1名(山田)
スタッフ4名(池田、平野、八木、小宮)
カメラマン1名(山月)
観客 大人12名(参加者9名+ヘルミ、アンジェラ、テディ)
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売上 9000円
⑤ワークショップ「Singing Soil:奏でる土」
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ゲスト1名(山田)
スタッフ3名(池田、平野、八木)
カメラマン1名(山月)
観客 大人9名(池田、八木、小宮、武田、黒川、山田、藤井、岩本、有川)
*うち支払い者(藤井、岩本、有川)
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売上 3000円
最終成果発表 [オープンスタジオ2025]
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山中suplex 6名(小宮、小笠原、中井、木村、本田、池田)
スタッフ 8名(Okute 2名、八木、平野、音響2名、映像2名)
観客 44名(うち、こども1)
他機関との連携
特になし
活動の効果
本事業を通じて、アーティスト・イン・レジデンスを軸とした国際ラーニングプログラムを実施し、地域住民、国内外のアーティスト、運営関係者が継続的に関与する交流の場を創出することができた。滞在型リサーチ、トーク、市民参加型ワークショップ、成果発表会を段階的に展開することで、単発的なイベントに留まらない関係性が形成され、地域の音環境や生活文化をめぐる対話と協働の機会が生まれた。全プログラムを通じた関与人数は延べ157名となり、そのうち来場者・参加者は108名であった。来場者には地域住民に加え、県内外からの参加者が含まれ、こども(中学生以下)の参加も延べ7名確認された。また、アーティスト、スタッフ、記録担当者などの運営関係者については、同一人物が複数のプログラムに継続的に関与する形を含め、延べ49名分の関与が確認され、制作・記録・運営を横断した体制が構築された。これにより、事業全体を通して安定した運営と記録の蓄積が可能となり、各プログラム間の連続性が保たれた。
活動の独自性
本事業は、地域文化の再解釈を「音をつくる」という創作行為を通じて試みた点において、国内外の地域芸術実践の中でも独自性のある取組となった。Waft Labによる日用品を用いた楽器制作や、Jatiwangi Art Factoryによる陶器片を用いた演奏実験など、地域に存在する身近な「モノ」や「コト」に触発された表現が展開された。また、佐藤健大郎・武田力による民俗芸能に関する実践的な視察、黒川岳・山田春江による空間・記憶・身体を媒介とした音へのアプローチを通じて、複数の視点から地域文化を捉え直す機会が生まれた。昨年度の取組が「土壌」を主題としていたのに対し、本事業ではテーマを「音」へと展開したことで、より感覚的かつ共創的な関わりが促され、国外ゲストとの協働プロセスも一層深化した。これにより、地域文化を国際的な文脈で共有するための一つのモデルを提示する結果となった。さらに、本事業では、展覧会という完成形の提示を中心とした従来の手法とは異なり、調査や制作の過程そのものに参加可能性を開くことで、動的かつ有機的な関係性の構築を重視した。こうした取組は、美術館的機能とは異なる文化実践のあり方を提示するものであり、県内に多様な文化活動の選択肢を提供するという点において、公共性の高い成果をもたらした。
総括
本事業は、滋賀県大津市山中町に残る生活文化や記憶を「音」という視点から捉え直し、地域住民と国内外のアーティストが協働する場を形成することを目的として実施した。山中町には「山中江州音頭」をはじめとする固有の文化資源が存在する一方、担い手の高齢化や若年層の流出により継承の課題に直面している。本事業では、これらを保存の対象として固定化するのではなく、現在の生活や身体感覚のなかで再び立ち上げ、他者と共有するための素材として位置づけた。
インドネシアのアーティストコレクティブを招聘し、約32日間にわたる滞在型共同調査を基盤に、市民参加型ワークショップおよび最終成果発表会を実施した。地域を歩き、耳を澄まし、対話と制作を重ねるプロセスを通じて、これまで意識されにくかった音や文化資源が共有・可視化され、世代や国境を越えた関係性が生まれた。
本事業を単発的なアートイベントとして終わらせるのではなく、リサーチ、滞在、教育、発信が複層的に結びつくプログラムとして定着させ、地域に根ざした文化活動の拠点形成を目指したい。
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8/17開催したトーク「もう民俗芸能なんて要らないよね?ーアートとの接点から眺めてみるー」
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「最終成果発表」前半ではアーティスト、リサーチコレボレーターによるシンポジウムを開催した。
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「最終成果発表」後半では各プログラムで制作した音具、楽器、音楽などを上演した。