活動の目的
本プロジェクトの最終的な目標は、私たちが住む小豆島の土地を“アートによって耕作する”ことで、人間以外の生き物が持つ五感を超えた六番目のセンスをプロジェクト参加者が掴むことです。この六番目のセンスこそ地方で生きる希望となり、私たちが子供達の世代に渡すことのできるスキルだと考えます。そのために2025年の活動は代表のジャックと越後がこれまで「働きアリ」として築いた巣に栄養を与え、巣の内側の構築と巣の外側を広げます。シロアリには発散される「フェロモン」をキーワードに、シロアリの巣作りや相互の関係性が築かれます。巣の内側では、「フェロモン」となる若⼿アーティストとの協働を進めました。
活動の内容
小豆島を中心に創造的な社会生態の可能性を模索するため、島内外の若⼿アーティストをTermites studioに招き、新たなアンテナの構築を⾏いました。巣の外側では、Islanders(⾹港)と共にTermites Studio の本を出版しました。また国外のレジデンス・プログラムとのネットワークを構築しています。代表のジャックと越後は引き続き⼀働きアリとなって、実⾏委員会(⽫井氏、宮脇氏、今川氏、慈⽒氏、⽮⽥氏)との対話から活動の更新を続けました。シロアリの巣で⾏われる働きアリの循環とフェロモンの発散に倣った創造的コミュニティーの形成プロセスの重要な実践として捉えています。翌年度以降も継続的なコミュニティの更なる広がりを期待しています。
参加作家、参加人数
スタジオでのゲスト滞在者
キュレーター:Michelle Lim(シンガポール)
人類学者:Wei-Hsiu Tung(台湾)
キュレーター:Leonhard Bartolomeus(インドネシア)
アーティスト:Fabio Perletta(イタリア)
海洋学者:Serina Rahman(マレーシア)
歴史家:Duncan Drum(アメリカ)
アーティスト:升谷絵里香(日本)
(探索アリ)ジャック・ジェームズ、越後正志、升谷絵里香
(女王アリ) 今川早苗、慈氏周豊、矢田常寿、皿井明日夏、宮脇慎太郎
(収穫アリ)チャン・イー・チェン、ザイ・チウトン、神谷知里、牧山雄平、川畑彩夏、久留島咲
(栄養アリ)温开林、楊アンドリュー、董維琇、四方幸子
ワークショップ参加者:230名
展覧会訪問者:760名
スタジオ訪問者:110名
合計:
参加人数1100人
他機関との連携
小豆島における最後の活動年となったアーティスト集団「めちゃ工房」のメンバーたちとの地域協働型アートプロジェクトは、創設者・河田良昭氏の逝去以前に、ふるさと村・夢想館で開催された彼らの年次展覧会への参加とともに実施された。
また、池田・草壁・土庄の清見寺児童館において隔月で子ども向けワークショップを開催したほか、オリビアンホテルの庭園にて Little Duck’s との協働による子ども向けアートワークショップも継続して行った。
国内における一般向けの活動としては、福岡で開催された糸島国際芸術祭への参加や、東京の早稲田大学でのレクチャーおよびワークショップの実施が含まれる。
国際的な協働としては、香港の Islanders 書店および出版社との共同制作による書籍出版、フィリピンの haboean weaving craft artists collective や VIVA EXCON Aklan festival との連携、さらに台湾で開催予定の桃園Land Art Festivalへの参加準備などが挙げられる。
活動の効果
生きた生態系としての小豆島に暮らす存在として、The Termites のメンバーは、日常的な交流、ボランティア活動、そして真摯な分かち合いを通して、特に池田地区を中心に、土庄やその他の地域を含む島内の健全なローカルネットワークに貢献し、同時にその恩恵を受けている。
今年も私たちは、大小さまざまな地域イベントにおいて地元のパートナーたちと協働を続けるとともに、台湾やヴィサヤ諸島をはじめとするアジアの島々のパートナーたちとのネットワークを拡張してきた。そのなかで、群島的(archipelagic)なつながりが、親密な個人的関係性や、公に開かれた発表の場を通じて花開いていることを実感している。
私たちの活動は、『Setouchi Style』誌、新聞、学術書、オンラインジャーナルなどで大きく取り上げられ、人間以外の種との深い芸術的関わりに焦点が当てられてきた。また、誰もがアクセス可能な形で、創作活動を記録したバイリンガルのオンラインアーカイブの運営も継続している。
The Termites website
1.メイン:https://ecoart.studio/nesting-main
2.展覧会:https://ecoart.studio/moisture
3.アーティスト・イン・レジデンス:https://ecoart.studio/Growth-Season
活動の独自性
日本各地には人間中心的な目的に基づくアートプロジェクトが数多く存在する一方で、The Termites は、人間以外の種との芸術的協働に取り組む、数少ない、あるいは唯一の存在であり続けている。昆虫、海藻、スナメリ、そして複数種間の関係性を含み込む私たち独自の「地域」という実践的定義は、現在の日本の地方が抱える深刻な社会的・経済的状況のなかにあっても、前向きな方向性を切り拓く可能性を生み出している。
他種から学び続けることは、年齢、性別、文化、背景を問わず、人々が創造的に、長期的な共生的関係性へと関わっていくことを可能にする。さらに、The Termites が、アーティストやキュレーターだけでなく、人類学者、歴史家、海洋科学者、漁師、農家などと共に築き上げてきた学際的なモデルは、小豆島の外にある異なる文脈や固有の生態系にも応用可能である。
そのような実践を通して、昆虫、植物、動物、人間、移民、トランスジェンダー、不可視化された存在を含む、あらゆるコミュニティの未来に向けた再活性化を願っている。
総括
今年The Termites は、小豆島という土地にすでに存在する豊かな生態系と、多様な新しい移住者たちによる刺激とを結びつける、共生的な関係を育む「巣」を成長させてきた。三年ごとに島々へ押し寄せる大きな祝祭の前後、そしてその最中においても、私たちのクイーン、スカウト、ハーベスター、ナリッシャーたちによる微細な活動は、ゆっくりと着実に取り組む持続可能な創造的実践の重要性を明確に示していた。
島に実際に滞在し、絶え間ない対話を通して地域の主体的な運営者たちと協働することで、私たちの collective な実践は、訪問者たちが多様な生きものたちとの関係性に長期的に関わっていくための基盤となっている。
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VIVA ExCon Aklan 2025において、「Termite Symbionts」と題し、The Termitesの活動の紹介、ワークショップを実施し、その痕跡をマングローブ林に残しました。他の参加者との対話から、渡り鳥の視点へと思考を開く契機となりました。
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糸島国際芸術祭2025「分解の祝祭」 において、糸島という土地で創造の余白を編み込み、小豆島、糸島共に同じように訪れる森の訪問者の痕跡をリサーチし作品制作を行いました。この展開を新たな共生の風景として糸島で展示を行いました。
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ふるさと村・夢想館 めちゃ工房とシロアリから派生した、本展覧会は小豆島の植物とハチなどの生き物にまつわる制作リサーチを行いました。本展示は、私たちが人間主体の視点から一旦離れるための手がかりとなりました。