瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

Tainohata project - 多井畑空き家協働改修プロジェクト -

Tainohata project - 多井畑空き家協働改修プロジェクト -

実施期間
2025年4月1日~2026年3月31日

活動の目的

 瀬戸内の玄関である神戸の西、須磨海岸から山手へ車を15分ほど走らせたところにある多井畑。市街地からほど近い場所であるにも関わらず、多様な動植物が生息し、自然豊かな里山が奇跡的に残されている。また、里山のふもとには日本最古の厄除の霊地とされる「多井畑厄神」や平安時代ごろからつづく集落があり、たいへん歴史の深いまちでもある一方、他の地域と同じく、少子高齢化、文化やコミュニティの担い手の減少といった課題に直面している。  本プロジェクトは、多井畑地域に点在する未活用の古民家を対象とし、専門家と市民が一体となる「協働的設計・施工」の手法を用いて改修を行い、多世代が日常的に交流可能なオープンスペースとして開放することで、「いてよし・やってよし」の地域の共有財産(コモンズ)を創出するものである。また、この空間を核として、新たな地域自治のモデルを創出、また主体的なまちへの参画を促進し、地域での暮らしを通して文化を継続させる生活文化の再興と持続可能な地域社会の実現に寄与することが本活動の目的である。

活動の経過

 本プロジェクトは、地域住民や専門家など立場を対等にして議論を行い、単なる建物の修繕に留まらない誰もが参画可能な「普請」の場を創出した。専門家による指導のもと、自ら手を動かし、現場での身体的な経験を通じて空間を形作っていくプロセスを重視したことで、工事期間中から既に、完成を待たずして多様なコミュニティが芽生える結果となった。
 拠点のオープン後は、9:30-17:00まで用途を限定せず開放し、利用者の創造性に委ねる「余白」を保つことで、地域資源を活かしたワークショップや他地域との連携事業が自発的に連鎖していった。

活動の成果

 本プロジェクトにおいて設計・施工のプロセスを広く一般に開放した結果、延べ1000名近くの参加者が活動に携わり、「マ(空間)」と「ニワ(共有の場)」としての機能を備えた共有場が創出された。周辺地域の参加の中から組合を設立、またこれらの活動を基盤として、非企画時における主体的な利用が定着し、竹馬づくりや野草摘みなど、地域固有の自然・文化資源を再発見するワークショップが来訪者を中心に自発的に企画・運営されるに至っている。
 活動の広がりは多井畑地域内に留まらず、沿岸部の塩屋地域をはじめとする他地域との有機的な連携へと発展した。実施したアンケートやヒアリング調査の分析によれば、協働による設計・施工やオープンスペースの利用を通じて、参加者の間に確かな「居場所」が形成され、自己肯定感の向上が見られることも明らかとなった。こうした包摂的な場づくりは、誰もが等しく参加できる社会的なセーフティネットとしての機能を果たしており、物理的な空間再生を超えた、地域コミュニティにおける精神的・社会的な支柱としての成果を収めている。
 さらに、活動を通じて集落内の旧棚田エリアにある耕作放棄地を譲り受け、循環型の農業を中心とする再生、また合わせて水路の再生計画がスタートされるなど、自然環境レベルの活動まで展開された。

  • 協働設計・施工/漆喰塗などWSの開催 @sotanishitani

  • 地域行事・周辺環境でのWSの開催 @sotanishitani

  • オープンスペース「マ」と「ニワ」の開放 @sotanishitani