活動の目的
「瀬戸内」に関係する歴史・民俗・風俗・地理・自然科学などの多様な分野を学術的な観点から捉え、次代へのメッセージとして残すため、書籍「瀬戸内全誌」(仮題)の編纂に向けての準備作業を行う。
活動の内容
2017年度は、5月にプレゼン検討会を実施し、「全誌」でとりあげるテーマについての章立てや項目の方向性を決定するとともに、重点活動として、人文・自然分野共同による調査を実施した。
共同調査は、8月~翌3月にかけて9回にわたり瀬戸内沿岸9県の島々や海運拠点などを中心に展開した。各回5~9名の歴史・民俗・地理・地質・生物・水産・建築分野などの専門家が一緒に瀬戸内各地の植生や景観、歴史、民俗などの現況確認や地域の特徴などについて調査した。
また、1~3月には、中間的な報告書の刊行に向けて、テーマ設定や分担等について事務局と個別、全体の協議を行い、目次構成や分担案を作成した。
実施場所:香川県立ミュージアム、瀬戸内各地
参加作家、参加人数
○5月 プレゼン検討会15名(県立ミュージアム)
○8月~2018年3月 共同調査(9回延べ61名参加)
和歌山県加太、友ヶ島、兵庫県沼島、室津、坂越、岡山県牛窓、沖新田、広島県大崎下島、下蒲刈島、倉橋島、江田島、山口県周防大島、長島、室積、彦島、蓋井島、福岡県簑島、大分県姫島、国東半島、愛媛県日振島、魚島、徳島県島田島、大毛島ほか
他機関との連携
○下関市立水族館「海響館」や江田島市さとうみ科学館、政田民俗資料館など、地域の資料館や地域住民より、それぞれの地域の生物状況などの資料提供やレクチャーを受け、交流をもった。
活動の効果
2016年度より引き続き、人文・自然等の分野から成る検討メンバーが瀬戸内全域を対象に調査を行うことによって、各分野やモノ、コトについての、これまでの固定的・通俗的な「瀬戸内」イメージがその東西や地域により、かなり異なることが明らかになった。逆に全域に通底していることや灘などの海域・地域に特徴的なものなどが少しずつ見えてきた。また、多分野の専門家間の意見交換が進み、質の高い総合的な書籍の実現に向けて前進した。
活動の独自性
「瀬戸内全誌」は、2016年度に構想した基本方針「地域と海域との関連性を前提とした地域像の提示を試み、スケールの多様さや重層性を理解し、個別の事象に偏重せず、その背景に通底するモノ/コトに視点をおいた体系的・総合的な叙述を志向する」ことを目指しており、その目的を達成するため、人文・自然総合視点での共同調査を、瀬戸内全域を対象に実施した。これは昭和12年に日本常民文化研究所が行った「瀬戸内海島嶼巡訪」(備讃海域)調査の平成版共同調査であり、対象範囲・分野も広い。
総括
本準備委員会は「瀬戸内全誌」の編纂を目的としているが、その過程での調査や情報交換活動により、瀬戸内で活動する多分野の専門家や地域の活動家等と知のネットワークを構築し、書籍刊行後も交流し、調査研究の深化、地域づくりの参考に資することが求められる。今年度、9回におよぶ調査の過程で、それぞれの地域の研究者や地域住民から聞き取りを重ねることにより、そうしたネットワークの端緒を開くことができた。
「瀬戸内全誌」編纂に向けた中間的な報告書の刊行を目指して協議を重ね、テーマ設定、分担案を作成した。今後は、個別の補充調査等を行い、一般を対象にした中間的な報告書の作成を目指し、その成果をふまえ、活動目的である「瀬戸内全誌」の編纂につなげていく予定である。
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5月9日 プレゼン検討会(香川県立ミュージアム)
出席者:瀬戸内全誌準備委員会北川ディレクターおよび検討メンバーほか15名
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2月10日~12日 大分県国東半島ほか共同調査 中津市歴史民俗資料館見学・参加者意見交換
出席者:検討メンバー9名
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3月25日 愛媛県魚島・新居大島共同調査 新居大島にて漁師への聞き取り調査
出席者:検討メンバー7名