活動の目的
「瀬戸内」に関係する歴史・民俗・風俗・地理・自然科学などの多様な分野を学術的な観点から捉え、書籍「瀬戸内全誌」として取りまとめる。瀬戸内とは何かを文明論的に、また、歴史的に追究し、瀬戸内の未来のあり方を考える礎とするとともに、広く国内外に「瀬戸内」を発信するツールとする。
活動の内容
2014年度から勉強会を開始し、瀬戸内に関連する専門家等による講演会を開催した。
2016年度からは、「瀬戸内全誌」編纂に向けて章立てや項目の方向性の検討を始めた。検討メンバーとして、県内外の歴史学、民俗学、地理学、生物学、水産学、地質学などの専門家13名を選定し、書籍の構成、執筆項目の検討を行うとともに、瀬戸内各地のフィールドワークを開始し、瀬戸内沿岸や島などほぼ全域を調査した。
2017年度は、現地調査を中心に活動を行い、和歌山県和歌山市、兵庫県洲本市、徳島県鳴門市、山口県下関市、広島県江田島市、兵庫県赤穂市、愛媛県上島町などの島や海岸沿岸部などの調査を行った。また、「瀬戸内全誌」」編纂に向けた中間的な報告書を次年度刊行することとし、項目及び執筆者の選定を行った。
2018年度は、検討メンバー13名がテーマごとに執筆した原稿を報告会にて報告するとともに、原稿検討会を開催した。
活動の効果
2016年度から人文・自然等の分野からなる検討メンバーが瀬戸内全域を対象に現地調査や意見交換を行うことによって、各分野やモノ、コトについてのこれまでの固定的・通俗的な「瀬戸内」のイメージがかなり異なることが明らかになったり、逆に全域に通底したり、海域・地域に特徴的なものがあることがわかってきた。
こうした中、書籍の章立てに当たっては、地域ごと、島ごとという切り口ではなく、「海と島々の間」、「海と陸の間」など、スケールの多様さ、スケールの重層さ性を念頭に置き、海への視点だけでなく、海域世界の基盤、後背地としての内陸にも目配りするような章立てとした。また、各論においては、個別の事象に偏重せず、その背景に通底するもの/ことになるべく目を向けた体系的な叙述を目指し選定した。
2018年度に5回開催した原稿報告会においては、検討メンバー執筆原稿に対し、各検討メンバーがその専門性や分野の枠組みにとらわれない視点での意見交換が活発に行われ、質の高い総合的な書籍「瀬戸内全誌」の前段として、根幹となる学術部分の作成に目途がたった。
活動の独自性
総括
2019年度に刊行する「瀬戸内全誌報告書」をもとにして、さらに瀬戸内で活動する多分野の専門家や地域の活動家などとの知のネットワークの構築、調査研究の深化などにより、活動の最終目的である「瀬戸内全誌」の編纂につながる取組みが必要である。