活動の目的
坂出市の島嶼部、櫃石島、与島、岩黒島などは、かつて幕府の御用水主として水運業などで栄えた地域ではあるが、近年は著しい人口減少による過疎化により、学校も廃校となりはじめ地域の伝統行事でさえも守ることが難しくなってきた。
聞取り調査や小規模の伝統行事を中心に記録し、資料の収集や調査を行い、誇りある地域の歴史・民俗を記録し語り継ぎ、地域の活性化や島を紹介する資料とすることが活動の目的である。
活動の経過
4月からスタートダッシュし、活動途中に於いて福武財団より活動方針についての助言もいただき有意義な活動を行った。
活動は、調査地域を中心に喫緊の課題である聞取り調査を1年を通じて各島で、多くの録音、文字起こしを行った。
8月には、失われつつある民俗について、大きな行事より小さな行事の方が簡略化・廃止になりやすいことから、盆踊りの後の盆行事を中心に現地調査を行った。また、藤原純友が築いたと伝わる鳴瀬の暗礁の現地調査は、よく潮が引く1月に行った。あまり知られていない寺社の調査では、ドローンを使って方位を守護する四神の調査を行った。古地図についても虫食いで開いてみることが出来なかったものを補修して調査や報告に活用することが出来た。
瀬戸大橋架橋前の比較的新しいものについての調査では、これも30年たっており、すでに歴史であることから、新聞記事や聞取り調査から当時の島しょ部の暮らしを調べた。
活動の成果
いくつかの活動計画を立てたが一番の成果は、鳴瀬の暗礁の調査である。天慶年間の藤原純友の乱に塩飽が巻き込まれた時、櫃石島はその最前線に位置し、東側にある釜島に純友が立て籠もりその隣の松島に純友の弟が籠った。その松島と櫃石島の間にある純友が築いたという伝承のある鳴瀬の暗礁。漁業者からの「あそこは捨て石だから足場が悪い。」という聞取りを踏まえての現地調査を行い、捨てられたと思える石を見てそこに立った。また一つ小石を採取し、今後に生かせる調査だった。
古地図は開くことも出来ないものだったが、価値があるものとの確信から補修し、2月の香川大学の坂出サテライトセミナーで資料として生かすことができた。今後の研究にも生かすことが出来るものと確信した。
聞取り調査は年度を通じて主に高齢者より行い、無くなる伝承や伝えられていた島の歴史を録音して文字起こしした貴重な資料となった。船霊(フナダマ)さんや「よどのばん」は、もう消えていると言ってもいいものであるような価値ある調査と思える。
小さな行事は簡略化、そして消滅しやすいものであることから、盆踊りのあとの岩黒島のお大師様と、観音様の盆踊りの調査、櫃石島の地蔵盆の調査を行った。どれも細々とではあるが引き継がれている貴重な伝統行事であった。
瀬戸大橋の完成する前の島についての調査では、新聞記事より調べることができた。30年前の事ではあるが、古い歴史ではないにせよ記録になりにくいが、島の貴重な、残さなくてはならない記録の調査であったと思える。
語り継がなくてはいけないものを掘り起こしての調査活動を行うことができた。
活動の課題
高齢化、そして知っている人がいなくなることから聞取り調査はますます厳しくなる。また、今回調査したものやその活動から得られたヒントを生かして継続していくことが重要なことから、新しい協力者を増やし、地域の歴史を掘り起こし新たな課題を作り、調査する必要がある。そして、常に情報発信をしていき、得られたものを地域に還元していく必要がある。
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藤原純友が築いたという鳴瀬の暗礁の調査
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櫃石島の地蔵盆。千体流し札を流す
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盆の後の観音堂での白昼の観音様の盆踊り