活動の目的
将来公開される展覧会の「予告編」をコンセプトとした映画を作るための撮影に着手。これまでに撮りためた膨大な撮影記録に加え、福島県の避難区域内外での新たなインタビューや、今しか撮影できない場所・風景を記録に収める。そして今後の映画上映や資料展示のための候補場所を福島県内の住民の方々の協力を得ながら探す。
活動の内容
・東京都内で実行委員会を開催
・避難区域内の本展会場で作品メンテナンスや掃除、また参加作家一名の作品のための放射線調査
・会場の経年変化を見るための定点撮影
・区域周辺の視察
・避難者の方々、地元協力者の方々との交流、映画のためのインタビューなどを撮影
・VR 映像展示用のヘッドセットを新たに制作
・ニューヨーク、香港でのVR映像作品の展示、バルセロナでプロジェクトの発表
・2020年3月の避難区域の再編に合わせ「Donʼt Follow the Wind」のホームページを更新。元住人の方が語る新しいオーディオトラックを公開
・英語圏向けの出版物の制作
参加作家、参加人数
参加作家 :Chim↑Pom、竹内公太、グランギニョル未来、
Nikolaus Hirsch、竹川宣彰、小泉明郎(6組14名)
キュレーター:Jason Waite、窪田研二、Eva and Franco Mattes (4 名)
カメラマン :森田兼次、他
実行委員 :上記以外2名(写真記録、映像記録、音声記録)
他、地元の協力者の方々
他機関との連携
・避難区域自治体に施設見学や作品設置、取材など協力を得る
・「The Influencers Festival, CCCB (バルセロナ)」、「K11 Art Foundation (香港)」、「Art in General (ニューヨーク)」で展示・情報発信の機会を得る
活動の効果
5年間の活動の継続性、国内外の展示やイベントなど発信機会の多様性、出版物・ウェブ媒体・映像・ VR映像など形態の多様性が、被災地の「その後」への注目を持続的なものにしている。
活動の独自性
避難区域の立入制限が解除されるまで観に行くことができない展覧会として開始し、5年が経過した。プロジェクトが長期にわたり、かつ一般来場者の訪問条件が整わないという状況が災害の余波を伝える独自の手法として成立している。
現地訪問が制限された状況では、記録の重要性が増す。展覧会自体のため、また災害の記録として、各種媒体で記録画像や映像を発信する。
それとは別に、展覧会を象徴する公式ウェブサイトは画像や文字を掲載せず、音声コンテンツによって訪問者の想像力を促す趣向である。2020年3月11日に発表された音声には、復興工事で変わりゆく故郷の風景に対峙する避難者の語りが加わった。
場所の制限を逆手に取り、情報発信を工夫することで、長期にわたる制限の困難さと紋切型で捉えきれない複雑な被災者感情を表象している。
総括
2019年度は「映画を作る」という展覧会とは別の軸を作り、活動内容に広がりが出た。地域の協力者との連携で得た、変動する避難区の風景や人々の心情を捉えた撮影素材は、現状の学びとなり、将来的に貴重な記録となる。2020年3月の避難区域再編に際し海外から批評家を招いて実地散策、発信内容に外側からの視点を加えられた。
2020年、新型コロナウイルスという地球規模の厄災下、DFWも地元住民の方との会合や県をまたいでの移動を自粛したり、放射性廃棄物の中間貯蔵施設見学会が中止されたりするなど、活動の重要な軸である「交流」がままならない場面があった。
同年4月現在、国内外の文化施設で休業・休館が続いている。「見に行くことのできない展示会・無観客のイベント」が世界中に立ち現われた状況は、特殊と評されることの多いDFWについて、皮肉にもその普遍的な側面を追認する機会となった。ただ、被災者視点に立てば、放射能汚染によって自宅に帰ることが叶わない人たち、ウイルスで自宅にいなければならない人たちの状況は真逆とも言え、原発事故と感染症流行を同様のカテゴリーに収めるのは早計だ。DFWは結論を急がず、刻一刻と変化する状況にその都度議論して対応する。それは長期に渡る非常事態と粘り強く付き合うために必要なスタイルだ。あえて言えば、個別の知見や工夫より、こうした姿勢そのものを広く社会と共有することが、ウイルス禍の世界における DFW の意義と言える。次年度も記録と議論を怠らず、その時々の状況に柔軟に対応しながら活動を継続する。
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Don't Follow the Wind, Collective on project site visit
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Installation of Non-Visitor Center at Extra City, Antwerp, Belgium
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Installation of Non-Visitor Center at Extra City, Antwerp, Belgium