活動の目的
高齢者による創作物をはじめ、「かかし祭り」などの伝統行事、地元企業による創作和菓子など、地域には美術館に負けない文化資源がたくさん存在している。そこで本事業を実施することにより、地域住民の生活のなかにこそ「表現」が存在していることを多くの人々が共有し、地域の活性化が促進されることを目的とする。
活動の内容
当該地域の備後圏域は、穏やかな瀬戸内海を望む南部(広島県福山市・三原市・尾道市・岡山県笠岡市)と背後に雄大な中国山地がそびえる中・北部(広島県府中市・世羅町・神石高原町・岡山県井原市)の6市2町から構成されている。タレントゲストがアテンド役となり、参加者と備後圏域で活動する表現者のアトリエや自宅、そして地域の魅力的なスポットや奇祭を巡るツアー「びんごトリップトラベル」を開催した。
第1回 びんごトリップトラベル 2019年6月22日(土)開催
参加ゲスト:井上咲楽
第2回 びんごトリップトラベル 2019年10月5日(土)開催
参加ゲスト:片桐仁
第3回 びんごトリップトラベル 2019年12月1日(日)開催
参加ゲスト:今立進(エレキコミック)、七瀬カオリ
参加作家、参加人数
第1回 :参加者18名/虎屋本舗、こめどこ食堂(昼食)、
小川卓一、山名勝己
第2回:参加者24名/阿伏兎観音、zono kitchen(昼食)、
スギノイチヲ、貝と珊瑚の館、スナックジルバ
第3回:参加者24名/東村町かかし祭り、中国料理 蓮華(昼食)、
喫茶「伴天連」、スナックジルバ
他機関との連携
旅行会社(富士急トラベル)と連携し、ツアーを企画開催した。地元の経済情報誌やタウン誌での取材をはじめ、訪問先の飲食店などの協力を仰ぎ、ツアーを開催することができた。
活動の効果
芸能関係のゲストを迎えたことにより、SNSやラジオなどを通じて広く活動を周知することができた。その影響により、近隣県だけではなく、九州や関西、中部、東北、関東地方など幅広い地域から参加者が集い、それまでアートや備後圏域に興味のなかった人たちが、ツアーを通じて、地域の活動や表現を知って頂く契機になった。また、地域で人知れず表現活動を続ける人たちにとっては、自身の活動や存在をアピールする場となった。
活動の独自性
本ツアーの見どころは、美術館や画廊などではなかなか実感できない表現者たちの表現が生まれる生々しい現場を、「珍スポット」「B級スポット」として蔑視するのではなく、わたしたちが敬意を持って訪問することにある。特に、市井の表現者の自宅を個々人が訪問するには、本来難しいことが多い。しかし、そうした場を訪問することは、美術館に陳列された作品を儀礼的に鑑賞するのではない、通常とは異なる新しい美術の見方を世の中に提示することにも繋がっている。さらに、そこでひとりひとりが、ゲストや参加者、そして表現者と対話を重ねることで、周縁で生まれる価値について深く洞察する機会にもなっている。
総括
これまで「現場訪問ツアー」と題したツアーを全国で開催してきたが、初めて年間を通じて、「びんごトリップトラベル」という備後圏域の表現者や場所を巡るツアーを開催した。未だ評価の定まっていない作り手の表現に興味関心を持っているゲストを外部から招聘したことで、改めて地元を批評的な視点で見つめ直すことができ、さらにゲストと表現者のやり取りも面白い化学反応を生み、これまでにない魅力的な企画になった。アンケートにもそのことを明記する参加者が多く、そうした化学反応を楽しむために3回とも参加する方も数名いた。本ツアーを通じて、地域に眠る魅力的な人や場所の存在を再発見することができたが、それは同時に、どの地域にも素晴らしい表現者や場所が存在していることを明示している。ツアーに参加した人たちが、その後、独自にそれぞれの地域で、同様の表現者や場所を発掘・紹介するといった報告も届いており、そうした意味でも本ツアーが果たした役割は大きいと感じている。
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井上咲楽さんと尾道訪問
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片桐仁さんとクシノテラス訪問
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今立進さんとスナックジルバ訪問