活動の目的
百島で40年近く空き家となっていた民家をアーティストのディレクションで改修し、刺激的な美術作品と共に来訪者が滞在できる宿泊施設に再生するプロジェクト。島内に多く残る廃屋を活用してART BASE百島が実施する「アートハウス・プロジェクト」の第2弾となる。
活動の内容
2017年2月に島民と協働で改修工事を開始し、2017年、2018年秋に開催した企画展では作品展示会場として一時的に公開した。2019年にはゲストハウスとしての完成目前のお披露目として、1階母屋で榎忠が機関銃と大砲、薬莢作品の重厚感のあるインスタレーション「L.S.D.F」を常設展示。2階寝室では池内美絵による自身の身体から生み出された素材を用いたデリケートでフェティッシュな作品群を企画展示した。柳幸典は百島の民家で発見された江戸時代の日本刀に憲法9条の条文を彫刻した「籠の鳥」を2018年より継続展示。
また、地元学生の協力を得て制作した特大五右衛門風呂も完成し、来場者数組限定で体験入浴を実施した。
参加作家、参加人数
参加作家:榎忠、池内美絵、柳幸典
参加人数:学生ボランティア20人、来場者950人、地域住民の皆さん
他機関との連携
数年前より海外からの団体客を積極的に受け入れており、Japan Travel Companyが企画する「Inland Sea Odyssey」と題した瀬戸内のアートを巡るツアーの会場となっている。
活動の効果
島内に作品の展示場所を点在させることで来場者が徒歩で島内を巡り、作品鑑賞のみでなく離島というユニークな環境を体感しながらより充実した時間を過ごすことが可能となり、地元住民との交流も生まれた。
また改修工事の大部分を移住者の職人が行い、地元住民によるランチを販売するなど、島民との協働で事業を行なった。
活動の独自性
ART BASE百島はアーティストによる企画、ディレクションで運営している。「アートハウス・プロジェクト」では百島の大きな課題となっている空き家を芸術で再生し、展示作家は通常の美術館やギャラリーとは異なるユニークな空間でサイトスペシフィックな新作やインスタレーションを創造する。乙1731-GOEMON HOUSEの改修の過程では、特大五右衛門風呂の竃作りの土練りと成形の作業を、地元の美術学生を招いてワークショップ形式で行った。従来の作家による作品制作や展示に留まっていた美術館の機能を再考し、都心部の喧騒と離れた離島でアーティストによるコミュニティ創造を目指している。
総括
ART BASE百島は2012年より毎年企画展を行っているが、百島には来訪者が宿泊できる施設がほぼないことが課題であり、フェリーで行き来をしなければならない離島という環境であることから来場者の滞在時間は限られていた。乙1731-GOEMON HOUSEの完成により、日本の現代アートを贅沢な環境で味わいながら、地元住民との交流や自然を十分な時間を持って体験することが可能となった。またアーティストにとっても従来の展示スペースとは異なった唯一無二の空間で作品を発表できる機会になり、日本家屋に刺激的な現代アートというユニークな組み合わせは特に海外からの来訪者に注目されており、瀬戸内の隠れたアートの名所として2020年のフルオープンが期待されている。
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1階大広間 榎忠による展示風景
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建具を利用した、池内美絵の展示風景
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特大五右衛門風呂