アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

イシノマキ アート はい!スクール ーモヤモヤよ、こんにちはー

一般社団法人Reborn-Art Festival

実施期間
2020年4月1日~2022年3月31日

活動の目的

震災から10年を迎えた石巻に発動させた若手世代を対象にしたスクールプロジェクト。高校生世代に焦点をあて、アーティストや表現者、地域活動団体によるレクチャーやワークショップなどを学校外で実施。多様なジャンルの表現者や活動家を講師に迎え、今、起こっている町の変化や、地元にある創造的な生き方・実践を対話方式で知ることができる機会を作りながら、家や学校では得難い経験や未知の価値観に触れ、地元と向き合う。ゆくゆくは、参加者自身が企画立案したり、表現活動をしたりするなど、地域で行動を起こす基盤になるような交流や機会にしていく。また、Reborn-Art Festivalをきっかけに派生したアーティストと地域とのつながりやプロジェクトを、会期以外の地域の日常で展開できるような連動を目指した。

活動の内容

1 街歩き ここではないどこか/ギャラリーや工房、人を訪ねる定期企画。
2 フィールドアクションin石巻/通学路や川沿い舞台にしたリサーチと発表。2022年の本祭につながる仕掛けの検討。
3 オンライン授業/「《金時》を見かけてどうでしたか」。「アートのあれこれQ&A!先輩たちが答えます!」。「地理人がみる石巻―地図感覚で石巻をみてみると…?」。オンライン談話室の実施。
4 3.11を持ち寄る会/地元の写真家Ammyによる、地域の方と3.11を振り返るイベント。
5 学校連携/美術部を対象にした会期中の作品鑑賞。石巻で継続している職業体験企画「街ミッション」と連動し、過去の作品会場を訪れるツアーの実施。今後の連携の相談。
6 はい!スクール本棚の設置/参考図書などの蔵書、貸し出し。

参加作家、参加人数

1 石巻のキワマリ荘、有馬かおる、廣瀬智史他(計4回、12名)
2 梅田哲也(リサーチ1名、発表約50名)
3 ちばふみ枝、中﨑透、冨井大裕、地理人(今和泉隆之)、Yotta、ミシオ、平野将馬(オンライン授業合計16名。談話室4回実施で12名)
4 Ammy(5名)
5 市内高校2校(合計23名)

他機関との連携

いしのまき学校(街ミッション)、市内高校美術部。地元アートスペースmado-beya。菊池旅館、まちづくりまんぼう等と、連動企画や会場提供、講師としての参加など。

活動の効果

同じ地域であっても足を踏み入れる機会が持ちにくい、アートスペースや工房訪問を実施し、活動拠点現場での交流や、人を知るきっかけを設定することができた。参加者は地域の特徴や資源をより具体的なイメージを掴んで楽しめ、若手世代が一人では気づかなかった地元の特徴を知ることで、将来的に参加者がそれぞれの地元の関わり(企画の実践の場、仲間を見つける、事業を始める)を持つ動機づけとなった。

活動の独自性

東日本大震災以降、クリエイティブな活動が活発になったり、アーティストなどの出入りがある石巻の環境を生かしながら、多様な視点や地元の特徴を知る・関わりはじめたりすることにより、これから世代の活動基盤につなげる。
サブタイトル「モヤモヤよ、こんにちは」にあるように、普段一人では向き合いづらいことや考えなかったようなことを、講師に迎えた地元で活動する大人や、アーティスト等の実践や存在を通して、知る・気づいていくきっかけにする。
「街歩き ここではないどこか」「3.11を持ち寄る会」のように、特別なことではなくても、今の資源や人の生き方を活かしたり、地元発信で掘り下げられたりするような企画が生まれつつある。

総括

地域の高校生世代にアートを切り口にアプローチを試みていたが、「絵を上手く描きたい」「作品を発表する場」というようなイメージしやすいことへの期待が多かったものの、今の石巻で向き合うこと、新たな視点を持つこと、「モヤモヤよ、こんにちは」につなげていくような展開を目指した。
参加人数が莫大ではないものの、何かくすぶっているユニークな高校生などが参加し、独自でギャラリーに行くようになるなどの動きが生まれている。また、 Reborn-Art Festival本祭では連動できていなかった地域内の個人やスペースなどと連動しやすくなり、日常で活動していくからこその規模感で進められた。
今後はまずは継続が課題だ。企画自体も単発のものが多かったが、Reborn-Art Festivalの常設作品や、関連作家の継続プロジェクトと連動することで、より地域に根ざしたやり方を工夫し、学校の部活や授業にお邪魔するなどの、地道なやりとりを通して関わりのハードルを下げていきたい。
また、新型コロナウィルス感染症対策の中での実施となり、学校への直接的なアプローチができず、野外での活動や、オンラインを通した方法を模索した。対面が難しく参加者の温度感を測りづらかったが、オンラインだからこその気軽さや、アーカイブになることで地域を問わない参加者や石巻の発信につながった。

  • 配信トーク「アートのあれこれQ&A!」

  • 街歩き ここではないどこか

  • 「《金時》を見かけてどうでしたか」