活動の目的
PARADISE AIRは国内外のアーティストを対象として、松戸を拠点にアーティスト・イン・レジデンスの運営を行っている。アーティストとしてただ街にいられるように滞在場所と制作活動への支援を提供することで、彼らのキャリアアップやリフレッシュの場となっている。また、滞在制作をきっかけに、行政、地域団体、市民との様々なつながりが生まれ、文化を育んでいる。運営主体(一般社団PAIR)は多様な専門性をもつフリーランスによって構成されるコレクティブ組織であり、彼らをはじめとする文化芸術従事者の新たなつながりや仕事を生み出す場である。
活動の内容
運営をはじめて約8年、事業の実施に集中してきたため、いかに事業を価値化していくか、評価していくかに時間を使うことがあまりなかった。今回10周年を目前とするタイミングで、なかなか評価のしづらいアーティスト・イン・レジンデンスの事業評価について、全国でレジンデンス、助成などに関わる3団体(セゾン文化財団、青森公立大学 国際芸術センター青森(Aomori Contemporary Art Centre 以下ACACと略)、アッセンブリッジ・ナゴヤ)に、個別にそれぞれの活動の紹介、並びに事業評価、長期的な運営に関する議論を行った。ACACのみ現地にて、他は基本的にオンラインにて実施となったが、ヒアリングとは別の機会に現地視察などを行った。それらを経てPARADISE AIRとして今後の事業評価の検討、レポート等のWEBサイトへの公開を実施した。
参加作家、参加人数
セゾン文化財団 1名
青森公立大学国際芸術センター青森 2名
アッセンブリッジ・ナゴヤ 2名
PARADISEAIR メンバー 10名
他機関との連携
セゾン文化財団
ACAC
アッセンブリッジ・ナゴヤ他
活動の効果
当初の計画の意図にそってそれぞれの活動を共有することによって、事業評価を考える機会になった他、各団体が想像以上に事業を柔軟に転換してきたお話を伺うことができた。これまでの蓄積をふまえつつも、大きな変化に対してもポジティブに考える姿勢を強めることができた。
活動の独自性
PARADISE AIRの活動の意義は、その現場に携わるメンバーによっておぼろげに認識されてはいるものの、評価、つまり成果や価値の言語化や、それを裏付ける資料を残し活用する方法は現場の試行錯誤に委ねられており、運営組織内やステークホルダーとの間で共通認識を持ったり、さらには第三者が確認可能なかたちで開いていくことには、本業であるアーティストの受け入れとのバランスのなかで難しさがあった。
そこで、このプロジェクトでは、アーティスト・イン・レジデンスを通じてみえてくる可能性の芽をいかに文化事業として評価するのか、その視座や方法について考え、同様の事業を行う他者とノウハウを共有し、連帯していくことを目的に、ピアレビューを行った。自分の姿を自分で見ることは困難である。けれども、ピアの活動を鏡にして見ることで、お互いの特徴が見えてきた。
総括
・セゾン文化財団
「創造活動への支援」「長期的視点に立った継続的な支援」「資金提供のみでない複合的な支援」という方針の下、先例のない助成プログラムや環境整備・人材育成プログラムを次々に生み出してきたセゾン文化財団とともに、アーティストの制作活動をどのように支援し、成果を評価し、プログラムを更新していくのかについて考えた。
・ACAC
アーティスト・イン・レジデンスといっても、場所や歴史、運営主体などによってその具体的なあり方はさまざまである。首都圏の交通の要所にあり滞在を主な機能とするPARADISE AIRと、地方都市の自然の中にあり、企画・制作から発表・アーカイブまでをトータルに支援するACAC。松戸とは対照的な環境でアーティスト・イン・レジデンスを運営するACACと共に、市民との関わりの持ち方、運営組織の持続性などについて考えた。
・アッセンブリッジ・ナゴヤ
名古屋のまちづくり団体を中心にはじまったフェスティバルから、最近アーティスト・イン・レジデンス事業に移行したアッセンブリッジ・ナゴヤとともに、持続する場を持ち続けることの意味や、エピソードベースの成果を可視化する方法について考えた。
-
ACACでの視察風景
-
滞在アーティストとのZOOMMTGの様子
-