活動の目的
加賀市山中温泉大土町は、加賀市東南部の山奥、東谷地区の最奥部に位置する集落である。本事業開始時(2020年)、住民は80歳代と60歳代の親子2人であったが、2021年以降は、60歳代の男性1人となった。大土町は集落消滅の危機に直面しており、「集落の存続と活性化」が地域の課題である。モモモモンタージュ・プロジェクトでは、映像のアーカイブ活動によって、大土町の成り立ちへの興味で繋がった新たなコミュニティを出現させることを目指している。この目標にあたり、本事業では郷土映像資料における閲覧システムの構築を整えることを目的とする。
活動の内容
2021年度までに収集された資料(写真825点・動画5点・小冊子2点)の一般公開に向けて、閲覧システムの構築を行った。
閲覧プラットフォームは現在公開にむけて制作中である。
併行して、3つのイベントを開催した。2021年9月20日、オンライン・ワークショップ『ボードゲームづくりで学ぶ地域の未来』を開催。同年10月17日、イベント『大土町・町歌(山レディオ 第2回)』を現地とオンラインのハイブリッドで開催。2022年3月11・12日、「世田谷クロニクル1936-83」やAHA!で活動する松本篤さんをゲストに迎え、オンライン・トークイベント『地域の記憶を現在と未来に活かす「コミュニティ・アーカブ」』を開催した。
参加作家、参加人数
『ボードゲームづくりで学ぶ地域の未来』
ゲスト/林直樹(金沢大学准教授)氏、会田大也(山口情報芸術センター[YCAM]学芸普及課長)氏
参加人数 12人
『地域の記憶を現在と未来に活かす「コミュニティ・アーカイブ」』
ゲスト/松本篤氏
視聴者 71人
他機関との連携
開催地の市町、加賀市立図書館、一般社団おおづち、NGO NICE(日本国際ワークキャンプセンター)、金沢大学地域創造学類などと連携して事業を実施した。
活動の効果
2021年9月からは「加賀市立図書館が所蔵する市史等の資料及び地区等で保有する郷土資料等のアーカイブ」事業を加賀市より受託し、大土町から市内全域へと活動領域を広げることとなった。これに伴い、映像の専門家1名と、ウェブエンジニア1名を新たに迎え、2024年8月までともに進める予定。また、資料の活用においては、『地域の記憶を現在と未来に活かす「コミュニティ・アーカイブ」』で展開した議論を通じて、今後の可能性についてのコメントが多く寄せられた。
活動の独自性
本事業は、大土町の消滅危機に直面して企画された。企画の独自性は、「資料のアーカイブ活動」を通じて地域のコミュニティをつくろうとすることにある。大土町のような山奥の小集落に新たに住み続けることは、市街地へのアクセスの悪さや冬期の積雪の多さから、現実的に難しい。そこで、たとえ住民がゼロになっても集落の田畑や建物が若い世代に引き継がれるような体制を整えるために、大土町へ関心を寄せ続ける関係人口を増やしていきたいという思いがベースにある。
若い世代にむけて、デジタルアーカイブソフトウェア「MediaWiki」を導入して閲覧システムを構築した。このソフトウェアはもともと、オンライン参加型の百科事典「Wikipedia」用に開発されたもので、閲覧者は手軽に記事の投稿・編集を行うことができる。
総括
当初の計画では、収集資料を活用して現地でワークショップやレクチャーイベントを開催することを重視したが、コロナ禍によりオンラインでの開催となった。思うように効果があがらず、このまま遂行することの難しさを実感した。2021年度は、ウェブエンジニアと映像の専門家を新たにスタッフに迎え、既に収集した資料のオンライン公開に向けて閲覧システムの構築に注力した。2022年3月にシステムが完成し、現在は、デジタル化した収集資料に一つずつタグを付与しながら、データのアップロードを行っている。また、一方で各資料の著作権処理も進めている。収集した資料は、撮影場所や年代などが特定できないものも多い。閲覧サイトを通じて、未完のアーカイブを多くの参加者とともに仕上げていくようなプラットフォームを目指したい。
また、アーカイブ活動と併行して行ってきた資料の活用イベントにおいて、特に記述したいのは『地域の記憶を現在と未来に活かす「コミュニティ・アーカイブ」』である。郷土資料アーカイブを行う団体どうしで、方法や目的を共有し、ネットワークを作ることの重要性を実感した。今後は、こうしたネットワークづくりにも注力したい。