アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

島・まるごと!美術館計画

高見島プロジェクト

実施期間
2020年4月1日~2022年3月31日

活動の目的

高見島を1つの美術館として捉え直し運営することで、人々が集まりゆったりと芸術を楽しめる場所にし、同時に島の伝統的な家屋や景観を守ることが、このプロジェクトの目的である。現在、空き家は放置され、崩壊してきている。少しの補修、修理で現状維持が可能な今このタイミングで手を打つ必要がある。崩壊してからでは間に合わないため、迅速な活動が求められている。

活動の内容

まず、高見島の空き家の現状調査を行い、倒壊状況など具体的に把握する。その上で最低でも1年に2軒の空き家を修理し、景観保護の一助にする。
これらの活動は、高見島の場所作りに向けた5年計画の基準となる。3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭での作品制作と空き家修理の2つの活動を、クオリティーを高めながら継続して続ける。この積み重ねで島へのリピーターを増やし、常設作品を増やすことで芸術祭以外の年にも楽しめる場所作りを目指す。加えて、高見島ミュージアムショップ運営を計画している。2022年の瀬戸内国際芸術祭にショップを運営できるよう、場所作り、記録集の販売、小さなグッズだけでなく若手作家の作品を販売できるよう、計画を進めている。

参加作家、参加人数

作品が継続設置となった作家5名に加え、2022年に新たに作品を制作する芸術祭参加作家6名を加えた11名が参加している。加えて、多度津町、多度津高校、地域のボランティア、島民の皆様の協力のもと作業を行っている。

他機関との連携

高見島の島民の皆様、多度津町、香川県、多度津高校、地域のボランティア、京都精華大学、アートフロントギャラリー

活動の効果

空き家4件を展示会場として整備補修することができた。草に覆われ損傷が激しい状態であったが、蔦草の撤去、余分な木の伐採、崩れた壁や納屋、瓦礫の撤去を行い2022年芸術祭の展示会場として「浦集落・フジタ邸」「浦集落・イシダ邸」を使用する。「浦集落・ナカムラ邸」は、2階をミュージアムショップに改装し、「浦集落・スミダ邸」は参加作家が使える宿舎として整えた。

活動の独自性

高見島を人々の集まる美術館のような場所にするためには、島独自の景観を残し地域性を活かすことが大切である。高見島には地形に沿った坂道、続く石垣、多くの古民家が連なり、残すべき景色がある。他の芸術祭参加地域に比べて群を抜いて過疎化が進む限界集落だからこそ、残された景色だと感じられる。
高見島プロジェクトは、3回の芸術祭を経験し、合計9軒の空き家を補修し整備してきた。町並みや作品は、高見島を支えるボランティアによって環境整備が定期的に行われてきた。これまでの活動で得た空き家補修のノウハウと、住人やボランティアとの協力体制を築いている。
郷土料理である「茶粥」「醤油豆」や町並みなどの地域の魅力と、芸術作品によって人が集まる場所作りを行う。

総括

高見島プロジェクトは最初に芸術祭に参加した2013年から継続して島と関わり、2022年で4回目の会期を迎える。高見島は芸術祭に関わる島の中で最も過疎化の進む地域であり、島民の数も当初30人だったのが、今では一桁に進むほどスピードを速めている。島民に景観を保存する余力は無く、島に古くから残る石垣、塩飽大工が建てたであろう100年を超える民家による街並みを、どのようにアピールし保存していくかが重要となる。芸術祭では空き家を利用した作品を展開し、ボランティアと協力しながら島を盛り上げてきたが、この数年で空き家群が次々と倒壊している。今回この地域振興助成金により、これまでの崩壊を止める活動から、きちんとした家の修理、ミュージアムショップの開設を行うことができた。これは芸術祭が行われる年だけ島に関わるこれまでの活動方法を考え直し、コンスタントに人が訪れる場所を目指す私たちの活動にとって大きな一歩となった。この先の課題として、継続したプロジェクトにしていくためのショップを活用した資金面での工夫に加え、組織構造の透明化や見直し、ハラスメント防止活動、安全性の見直しなど、地域住民やボランティア、大学機関とも連携しながら進めたい。