アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

たつのアートシーン2021

NPO法人ひとまちあーと

実施期間
2021年11月3日~11月29日

活動の目的

2011年から始まった「龍野アートプロジェクト」を引き継ぎ、地域に残る文化財を活用し優れた芸術を国内外に発信する。また、同じく龍野では「オータムフェスティバルin龍野」や「龍野劇場プロジェクト」などアート的要素を含む地域イベントが各種団体によって開催されてきた。現状、個々での活動になっているが団体間の連携を深め、広報活動における全体的、包括的な体制をより強固なものにし、ただ観光客を誘致するということではなく、歴史ある城下町龍野での地元住民とともに歩む持続可能なアート発信の場を育むことが目的である。

活動の内容

「たつのアートシーン2021」と題し、大きく分けて3つの活動を実施した。
1 龍野国際映像祭2021
たつのに縁のある映像作家宮嶋龍太郎氏監修の国際映像祭。約ひと月に渡り佳作作品をたつの市内の6箇所の会場で上映、ノミネート作品を「ゐの劇場」にて上映し受賞作品を決定。本イベントの為に作成された「野見宿禰」「樽の唄」、招聘作品・山村浩二監督「幾多の北」を上映。
2 山展
「山」をテーマとして、城下町後背の鶏籠山や台山あるいは白鷺山公園などを背景としながら、自然と人間との関わりについて考え、また山の持つ神秘的な魅力の源を探ることをコンセプトに展覧会を開催。歴史文化資料館館長を招いての山を題材としたトークセッションや、ガイドツアー、アーティストトークも行った。
3 龍野舞台芸術/「ゐの劇場」をメインに5会場にて6演目を実施。(トークセッション、演劇、能舞台、ライブ、コンサート、人形芝居)

参加作家、参加人数

龍野国際映像祭:作品応募数3,350作品/国と地域117ヵ国、延べ入場者9,386人
山展:ダニエル・コニウシュ/宮嶋龍太郎/アグニェシュカ・ポルスカ/山下耕平/ベアタ・ズバ、延べ入場者4,123人 
龍野舞台芸術:陽介(芸術監督)/薮田翔一(作曲家)/多田周子(歌手)/小倉ヒラク(発酵デザイナー)/劇団「安住の地」/能楽団体「瓦照苑」/人形芝居えびす座/Jusqu'à Grand-Père他、期間中の来街者数は延べ80,000人にのぼった。

他機関との連携

たつの市、Kiss FM KOBE、公益財団法人 関西・大阪21世紀協会、東京藝術大学「I LOVE YOU」プロジェクト、ポーランド広報文化センター、西日本旅客鉄道株式会社、一般社団法人北前船交流拡大機構、朝日新聞社、等
協賛:14団体、助成:4団体、協力:10団体、後援:13団体

活動の効果

「ゐの劇場」を中心に6箇所の施設を会場にすることで、地域住民と協働して開催し、来街者は各会場を歩いて巡るなかで城下町を堪能し、地域に根付いた文化、芸術を発信できる仕組みづくりができた。他のイベント団体との連携をはかり共に広報活動の相乗効果を得ることができ、たつのにおける秋の芸術祭の共通プラットフォームとなりうる活動となった。次年度へ、さらに様々な公共団体や企業、住民団体と連携体制を取りながら、持続可能な運営に繋がる活動となった。

活動の独自性

2019年に重要伝統的建造物群保存地区に選定された、たつの市の城下町を中心に開催。『播磨風土記』に相撲の神様と称えられる「野見宿禰(のみのすくね)」を題材にアニメーション作家宮嶋氏による作品の制作や、たつの出身の作詩家三木露風の「樽の唄」を映像作家高木氏により映像化し、上映。明治時代に作られたと言われる元醤油蔵の「ゐの劇場」をメイン会場とし、龍野城下町を中心に残る醸造文化、文化財を守りつつ活用し、アーティストと協働することで、新たな芸術の創造、発信を試み続ける。
また、行政主導ではなく、地元NPOが主体で運営し、昔から地域に根付いて活動してきたアート的要素を含む諸団体や地域を応援する企業と連携しながら、運営体制を構築する。

総括

2021年11月3日に行われたオープニングイベントには、行政、地域の企業・住民・店舗経営者や作家、公共団体、財団等、さまざまな方々に集まっていただき、これまで諸先輩方が培ってきた、龍野の芸術文化発信の場を繋げ、今後さらに広げていく可能性をみることができた。
龍野国際映像祭として映像からの芸術発信、山展と題し国内外で活躍するアーティストとたつのが有する歴史ある施設の融合、龍野舞台芸術として、発酵をテーマとしたアーティストトーク、元醤油蔵での現代劇や能舞台公演、たつの出身の作曲家によるコンサート等、多角的アプローチで参加者に働きかけることで、たつのが有する可能性を現状できる限り発信した。
初年度として、たつのを中心とした芸術文化発信のプラットフォームとしては基盤創りにとどまり、これから更に活動を深めていくなかで仲間を作り賛同者を増やすことが必要不可欠であり、それにより活動の広がりや奥行きを追求していく。2022年は、たつの地域にとどまらず西播磨の各地域と連携し、年間を通じ多彩な芸術文化活動を盛り上げ発信していく。

  • 開会式典での「樽の唄」上映の様子 © たつのアートシーン実行委員会/撮影:宰井琢騰

  • 会場の一つ「ガレリア アーツ&ティー」風景  写真:宮嶋龍太郎

  • 薮田翔一作曲コンサートの様子 © たつのアートシーン実行委員会/撮影:宰井琢騰