活動の目的
本事業は、国東半島にアートによる新たな巡礼の道を構築しようとするものである。半島内には、11名の国際的なアーティストによるサイトスペシフィックな作品が点在している。それらが道標となり、旅人をこの地の奥深くに流れる固有の歴史や特異な景観、土地の恵みへと導いていく旅を、数種類計画する。現在、世界は分断と対立が進んでいる。この流れは、コロナ渦においてますます進行している。多様な考えを受け入れ、平和的に共存させるという日本人古来の合理的考え方、神仏習合。その発祥地、ここ国東半島から〝Unity in Diversity(多様性と調和)〞の理念を世界に向け力強く発信することを目指し、本事業を実施する。
活動の内容
1 作品展示/イギリスの現代彫刻家 レイチェル・ホワイトリード氏を選定し、国東市鶴川地区の商店街に隣接するエリアに作品を設置した。地域の方へ作品のコンセプトや設置までの経緯などを解説した。また、島袋道浩氏、アントニー・ゴームリー氏、川俣正氏、宮島達男氏による作品も、国東市各所で展示・公開した。
2 ツアー/11月21日~3月28日の間に計10回催行。国東半島の魅力を体感する新しい旅「カルチャーツーリズム」をテーマに、食文化や地域体験と共にアート作品をめぐるツアーを実施。
3 国際シンポジウム『Dialogue in Kunisaki』/3月27日に開催。アーティストと多様な対話者による連続の対談イベント。作品の設置意図や国東市の可能性、アートが社会や地域に何を与えることができるかを考える場として実施。国東半島の新たな魅力を世界に発信することを目指した。
4 中山晃子スぺシャルライブパフォーマンス『全ての色は流転する』/3月6日に開催。画家・中山晃子、小鼓奏者・福原千鶴、音楽家・大口俊輔によるイベント。国東半島をリサーチし制作した物語を主軸に進行する作品となった。
参加作家、参加人数
作品展示 レイチェル・ホワイトリードほか 鑑賞者数/7,069名
ツアー 島袋道浩ほか 参加人数/115名
国際シンポジウム
出演/アントニー・ゴームリー、川俣 正、レイチェル・ホワイトリード、島袋道浩、宮島達男(登壇順)、南條史生(キュレーター/エヌ・アンド・エー株式会社代表取締役)、山口祥平(大分県立芸術文化短期大学准教授)、今福龍太(文化人類学者)、河村任(国東市職員)、成仏桜会の方 参加人数/延べ615名( うちオンライン341名)
ライブパフォーマンス/中山晃子、福原千鶴、大口俊輔 参加人数/116名
他機関との連携
一般社団法人 国東市観光協会、株式会社UNAラボラトリーズ、(公社)ツーリズムおおいた、国東半島峯道トレイルクラブ、世界農業遺産旭日プロジェクト、旭日ネット、くにみ匠塾実行委員会、国見アートの会ほか
活動の効果
観光協会やボランティア団体、地元ガイドやアーティストなど多くの人が協働し本事業を実施したことで、関わった一人ひとりにとって国東半島の魅力を再認識する機会となった。また、さまざまな切り口のツアーを企画したことで、今後多様なツアー事業を地域で自走させていくモデルをつくることができた。ライブパフォーマンスにおいても、国東半島の歴史や伝承を新たな切り口で紹介することができた。以上のことから、地域資源の活用を継続的におこなう仕組みの基盤が造成できたといえる。
活動の独自性
本事業は従来の芸術祭に代わる地域とアートの新たな関係性を見出す一つの提案でもある。地域にもともとある資源に注目して周遊するシステムを作る文化観光を軸としている。この土地の「恵み」を改めて見直すこと、作品を設置する場所と向き合って生まれるサイトスペシフィックな「アート」を同等の価値として位置付け直すとともに、テーマ毎に企画した辿り方を紹介した。芸術祭に代わる新たな取り組みとして構想された、アートを活かしたエコミュージアムともいえる本事業によって、新たなる国東半島の魅力の創出の一助となることができた。
総括
本事業は2014年度「国東半島芸術祭」で設置された作品に加えて、新しく設置された作品をほかの文化施設や地域資源とともに周遊する仕組み作りとして実施した。新型コロナウィルス感染症の影響が色濃く残り、地域の観光や経済が停滞するなか、新たな作品制作やツアー、各種イベントを企画し実施できたことはとても意義があった。新しく設置したレイチェル・ホワイトリード氏の作品は、この地域の特徴を象徴するものである。日本でレイチェル・ホワイトリード氏の恒久作品が設置されたのは初めてのことであり、非常に困難な日本家屋の型取りを実現させたことで、地元の職人の方々の技術の高さを国内外にアピールできるものともなった。失われつつある国東ならではの文化を後世に残していくうえで、この作品が大切な資源になるという声も寄せられた。これから国東市では、レイチェル・ホワイトリード氏の作品が設置された鶴川商店街エリアに観光拠点が整備されていく予定となっている。今後ますますアート作品や地域資源を活用し、多様性と調和の理念を国東半島から発信することに寄与し続けたいと考えている。
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レイチェル・ホワイトリード作品 写真:久保貴史
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レイチェル・ホワイトリード作品お披露目
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アートガイドが作品の説明をする様子