瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

小林和作旧居再起動計画+

NPO法人 尾道空き家再生プロジェクト

実施期間

活動の目的

地域にとって重要な文化的な背景を持ち、かつ優れた木造建築である小林和作旧居の持つ問題点を解消し、再生と活用を通じて、次世代への継承が活動の目的である。また、没後50年近く経ち、記憶が薄れゆく画家・小林和作についての記憶や戦後の文化活動のあり方に新たに光を当て、家の来歴・価値をしっかりと再認識すると同時に、これまであまり注目されてこなかった出雲街道に面した長江エリアの魅力を再発見し、発信する機会を作る。小林和作旧居を次の担い手に適切に継承するため、様々な実験的仮活用を通じてガイドラインを案出し、運営体制を構築する。また、和作旧居だけでなく地域にも視野を広げ、尾道市内で解体の危機や継承の困難に直面している建築の保全に関するアドバイスや適切な改修工事によって危機から救い、次世代へと継承する「尾道瀬戸際建築不動産」事業の開始準備を行う。

活動の経過

●和作旧居の建築調査をもとに作図と所見をまとめ、登録有形文化財申請準備を行った。
●毎月和作研究会を開催し、和作旧居が抱える課題と和作をめぐる尾道の文化や芸術についての話題を共有する機会とし、その成果を和作ウィークで発表した。
●環境整備を定期的に継続。改修に向けての整備も行い、イベント開催のため状態を整えた。
●「建築塾 建物探訪編 古社寺めぐり」(5/14開催20名参加)と「失建築編」(5/28開催21名参加)を開催した。
●アーカイブ作業では瓦全房にある小野鐡之助関連の資料の整理を進めカテゴリごとに分類した。
●長江エリアの地域情報をリサーチし、記事、地図としてまとめ、「空きプレス」を作成。(3,000部印刷、10月末発行)
●通年で仮活用を継続実施。
国内外美術家との交流イベント「アフタヌーンティー茶会」(8/1開催33名参加)を実施し、「第2回和作ウィーク」(11/3~13 216名参加)では小林和作ゆかりの画家、丸木スマの展覧会を開催。会期中専門家によるトーク、和作研究会発表のほか、ツアー、活用のためのワークショップを実施した。また、地域大学の茶道部の活動と連携した茶会を開催(2/6開催12名参加)大学生利用者にアンケートを行った。
●地域小学生との交流を2回実施。見学会(7/7、50名参加)と「竹ベンチワークショップ」(3/6、50名参加)開催。裏庭の整備も開始した。
●新事業「尾道瀬戸際建築不動産」事業内容の検討とウェブサイト準備を行った。

活動の成果

●小林和作旧居の価値付けをしっかり行うため登録有形文化財に申請し、さらに環境整備、改修準備でハード面の大改修に備えることができた。
●学芸員等専門家が参加する和作研究会を通年で毎月開催することによって、画家小林和作や地域文化に関する多彩な知見を得ることができ、和作ウィークでの発表につなげることができた。また、活用方法についても議論を重ね、丸木スマ展の開催をはじめ、茶会など様々な仮活用企画の立案や次年度以降の再生・活用についての方針や計画を立てることができた。
●建築塾開催により、これまでなかった新たな視点で尾道の街並みの特長や歴史に対する理解を参加者とともに深めることができた。
●アーカイブ作業では瓦全房にある資料の整理を進めカテゴリごとに分類し、次年度のリサーチに繋ぐことができた。また、次年度の韓国人アーティストとの共同リサーチに繋がることとなった。
●「空きプレス」では、これまでまとめていなかった小林和作旧居を中心とした長江エリアの地域情報をまとめ、発信することができた。
●「アフタヌーンティー茶会」、「第2回和作ウィーク」、地域大学の茶道部と連携した茶会など多彩な仮活用イベントの開催を通じ、和作旧居の魅力やエリアの可能性を地域内外に広く発信できた。茶会は参加した多くの国内外のゲストに好評で、丸木スマ展も美術愛好家や地域の方にとても喜ばれた。また茶道部学生からはアンケートによる率直なコメントや感想を得、仮活用イベントの実施後、その成果を今後の文化的活用の方向性の明確化と具体的な運営計画立案に役立てることができた。
●地域小学生との交流も生徒に好評であり、次年度も引き続き地域学習のプログラムに組み込んでもらえることとなった。
●新事業「尾道瀬戸際建築不動産」を開始するにあたっての土台が整い公開準備ができた。

活動の課題

今後NPOとしては常に文化的商都尾道らしさを考え、危機に直面している魅力的な建築を保全し、面的なまちづくりを展開していきたいと考えている。
この小林和作旧居の再活用のプロジェクトはその上で大事なステップになる。失われつつあった尾道の貴重な文化資源を、これまで培ってきた空き家再生の知識や経験を活かし、次世代に引き継いでいく事例になりうるからだ。これまでの取り組みで旧居の経営上の問題と文化的活用のバランスが具体的に見えてきたので、次年度以降改修や活用をより積極的に行なっていく。今後「尾道瀬戸際建築不動産」事業も展開し、様々な領域の専門家や幅広い世代の参加を促し、知恵を絞り、かけがえのない個別の建物の再生と継承にチャレンジし、面的な町並み保全へとつなげていく計画である。

  • 国内外のアーティストとの交流茶会

  • 「丸木スマ展」展示風景

  • 小学生対象の竹ベンチ制作ワークショップ