活動の目的
以下2つのミッションのもと、かつて一大観光地として栄えた十和田湖畔休屋地区が“消費される観光地”から脱却して大自然とともにある“文化醸成地”となることを目的に活動している。
ミッション①:十和田湖畔がこの土地らしく続いていくために、自然と人間の在り方と“上質な日常”とは何かを考え続ける。
ミッション②:日々の美しい自然に呼応するような、新しい視座をもたらすものとしてアートを挿入し、人々が新たに十和田湖の楽しみ方を発見できるような仕掛けを創り出す。
活動の内容
2022年の初年度は、2018年から開催してきたマルシェで音楽イベントも同時開催し、そこへ現代アートや食のイベントを追加する形での開催となった。
1 とわだこマルシェ:7月と10月の2回、主に青森県・秋田県の生産者、飲食店、クラフト作家が毎回15店舗ほど出店。マルシェ来場者でアート作品鑑賞希望の場合はご案内した。7月には八戸市で音楽活動をする団体の音楽ライブも同時開催した。
2 現代アート:キュレーター兼アーティストとして島袋道浩氏、アーティストとして中山晃子氏が参画。会期中合計5点の作品を滞在制作し公開した。
3 食イベント:「地域の食を耕す 北奥レストラン」と題して、地域食材をふんだんに使用し新たなレシピを開発するPOP UPレストランを開催した。音が生まれた背景やカルチャーなどを紹介。
参加作家、参加人数
参加作家/島袋道浩、中山晃子
食の専門家/楠田裕彦、真藤舞衣子、大越基裕
アート作品鑑賞者数:約100名/アートイベント参加者数:延べ約100名/マルシェ来場者数:約1,000名/音楽ライブ参加者数:約60名/食イベント参加者数:約30名
他機関との連携
地元協賛企業(株式会社PEBORA、協同組合タッケン、三八五流通)、協賛協力(株式会社東北博報堂)、環境省十和田八幡平国立公園管理事務所、地元宿泊事業者、地元小売店、地元飲食店、JR東日本
活動の効果
初年度から地域住民や作家との協働による制作が自然発生的に生まれたことや、地域住民にとってもハッとさせられる瞬間や十和田湖の新しい一面を発見する機会があったことは、特筆すべき結果だと考える。主催者がお膳立てをせずとも“文化を醸成する”上質な時間が訪れたことは、主催者だけでなく参加者の心にも強く残ったと感じる。自然を深く洞察し人々に新たな視座をもたらす試みは、観光や関係人口増という概念から飛び出し、これからの十和田湖で自然と人がどのように共存していくかを考える契機となったと考えられる。
活動の独自性
会期を夏から翌年の冬(7~2月末)までと長期間で設定することで、アート作品鑑賞やイベント参加の際に、四季折々、刻一刻と変化する十和田湖の自然に触れてもらうことを意図している。そして、アート作品鑑賞を完全予約制とすることで、この土地を通り過ぎるかのように訪れる一般的な観光客が対象ではなく、強い目的意識をもって訪れる人のみを受け入れるという、ある種閉鎖的にも見える取り組みとなった。しかしながらそれは、質より量を追い求めてきた観光へのアンチテーゼとも言え、それに共感を示し訪れてくれる人々は必ず一定数いると信じているし、それが事実であることがわかった。初年度でこれを強く実感できたことから、次年度以降もブレることなくこのやり方で取り組んでいこうと考えている。
総括
純度の高い自然に囲まれた十和田湖を、アート作品というメディアと作家の新たな視点を通して見ていくという行為は、長年この地域に暮らしてきた地域の人々にも大きな発見につながり、ひいてはここに暮らす喜びを再発見/再認識することにも繋がったのではないかと考えている。これは参加者の感想でも聞かれたことだが、主催者且つこの土地に暮らす一人の人間としても初年度からこれを実感できたことは大変大きな収穫であるとともに、今後も継続していくための大きな後押しとなった。
次年度以降は、前年度参加したアーティストがもう1組のアーティストを選出する形で、アーティストのバトンが渡っていくことが“キュレーション”のようになっていく形を目指していく。また、現代アートに加え日本の伝統芸能である講談の十和田湖オリジナル講談も制作発表することで、初年度以上に幅広い年齢層の多様な人々にアプローチしていきたいと考えている。
現状福武財団の助成金・企業協賛・自己資金のみという運営費の脆弱性については今後も課題となるが、表層的なアートイベントにならないよう、地域住民やアーティストと共に自然と対峙していくことでこの地の新たな文化を醸成していきたい。
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中山晃子『湖畔遊覧記』公開収録風景
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アーティストによる作品鑑賞ツアーの様子
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7月のとわだこマルシェ出店者との記念撮影