アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

River to River 川のほとりのアートフェス 2022

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実施期間
2022年10月22日~11月13日の金土日祝12日間

活動の目的

コロナ禍からの地域の芸術文化活動やコミュニティの再興、アート関係者への支援、これまで前橋で行われてきた地域の人達とアートプロジェクトを通じて提示した問題や価値観を市民や街が継続的に支えること、前橋の歴史や文化の発信と活用、保存についての問題提起していくことを目的に、2021年より街を回遊しながら多様な作品を楽しむことができる「River to River川のほとりのアートフェス」を開催している。

活動の内容

前橋の中心市街地の歴史的建造物や文化芸術拠点10ヶ所に、前橋内外のアーティストを招聘して作品展示と作品やグッズ販売を行った。文化財の建築空間を活かした滝沢達史によるインスタレーションと、広瀬川美術館の建築や収蔵品とコラボレーションした衣真一郎の絵画や陶作品、赤い糸を持った人物写真で見えないつながりを描く市民参加型のコセリエ/ITOPROJECT、来場者と会場を出て1対1のパフォーマンスを行う内田望美、透明なモチーフと光を構成して心象風景を描く牛嶋直子、太平洋戦争~戦後の日米関係をテーマにした増田拓史による映像と写真と立体インスタレーション、市内の母子生活支援施設に入居する母子と長期プロジェクトを行うタイムカプセルプロジェクトは活動報告を展示した。

参加作家、参加人数

参加作家/滝沢達史、衣真一郎、牛嶋直子、増田拓史、コセリエ/ITO PROJECT、内田望美、タイムカプセルプロジェクト(廣瀬智央+後藤朋美+のぞみの家)
来場者数/全会場の延べ人数 3,187人
※2会場はパスポート不要で観覧可能のためカウントせず

他機関との連携

今年度初開催の大規模イベント「前橋BOOK FES」(主催:前橋BOOK FES実行委員会、共催:前橋市)等と連携・相互発信を行なった。今回初めて地元企業・団体から協賛を、3会場は昨年度の開催を受けて声をかけていただき会場として使用した。

活動の効果

コロナ禍でアートを通して人々が交流する機会が減っていたが、それを回復する機会になった。来場者からは、古くから存在しているが初めて訪れた会場があり新たな街中の魅力を発掘する機会になった、市民参加型の作品や社会的養護が必要な人と協働しているプロジェクトの紹介展示の感想としてアートができることを考えた、との声もあった。アートを通じて地域の歴史や魅力、課題を考える活動になった。

活動の独自性

前橋にゆかりのある作家や移住者、旧安田銀行担保倉庫や広瀬川美術館といった歴史的建造物、BentenaSHOPやヒロセーヌパドルなど新しく生まれ変わった建物など、(新ー旧)と(内ー外)が入り混じり、重層的、多様な様相や人々とのつながりをアートフェスを通じて可視化している。街なかの関係者と密に情報共有することで、他団体のイベントなども併せて発信し、街なかを多面的に楽しめるよう企図している。

総括

今回は、前回と比べて以前から行われていた他団体によるイベントが復活したり、新規のイベントも開催されるなど、街の動きが活発になってきた。中でも市内外から4万人を超える人々が訪れた「前橋BOOK FES」は関連イベントとして本事業も位置付けられた。街のプレイヤー同士が連携し、各々の得意な分野を持ち寄って展開できるのが、地方都市にある可能性だとも感じた。本事業を2か年開催する中で、フェスの準備期間やITO PROJECTなどの参加・協働型の作品が、初めて出会う人、コロナを経て久しぶりに会う人たちの交流・再会の場になっていた。現在の前橋では、前橋にゆかりのあるアーティストの作品と街とをまとめて鑑賞する機会は、本アートフェス以外はないので、今後も実践を積み重ねていくことで見えてくるものもあるのではないかと期待している。
これまで培ってきた関係性と、学生などの若者にもアートフェスに関わってもらう中で、アート以外の様々な領域の人たちが行き来しはじめている。次年度以降は運営に継続的に関わる人を増やすこと、これまでの作品やプロジェクトの言語化にも意識的に取り組み、変化していく街の中でアートによる地域への洞察をより具体的に深めていきたい。

  • 滝沢達史《桃源郷》旧安田銀行担保倉庫 写真 Satoshi Mori

  • 衣真一郎《山と川》広瀬川美術館  写真 Satoshi Mori

  • コセリエ《ITO PROJECT》Bentena SHOP