活動の目的
高見島を1つの美術館として捉え、人々が集まりゆったりと芸術を楽しむ場にし、同時に島の伝統的な家屋や景観を保存することが、このプロジェクトの目的である。現在、島民の数は減少し空き家が崩壊し続けている。現状維持のためにも、ここ数年のうちに手を打つ必要があると考えている。今後も修理した空き家を作品展示会場として使い、新たな場作りを行う。高見島の住民の方々、そして多度津町、ボランティアの方たちと協力しながら、人が集う場所を継続的に作っていくことが当面の目標となる。
活動の内容
「瀬戸内国際芸術祭2022」では継続作品5点に加え、新作7点を空き地や空き家で展開、島全体を使って作品を公開した。昨年度に行った空き家修理作業があったからこそ、新たな空き家で新作を公開することができた。鑑賞者は島に点在する作品を鑑賞し、同時に島の景色も楽しんでいた。2013年からの活動の積み重ねから、多くのリピーターの存在も実感している。
今年は新たに「TAKAMIJIMA INSIDE GALLERY」をオープンし、これまで島に関わった24名の作家の作品や記録冊子などを販売した。
参加作家、参加人数
2022年は11名の作家が芸術祭に出品し、加えてこれまで島に関わってきた作家24名も「TAKAMIJIMA INSIDE GALLERY」に出品する形で参加している。「高見島プロジェクト」は、多度津町、多度津高校、地域のボランティア、芸術祭サポーター、島民の皆様の協力のもと、活動を行なっている。
他機関との連携
高見島の島民の皆様、多度津町、香川県、多度津高校、地域のボランティア、さざえ隊、京都精華大学、アートフロントギャラリー
活動の効果
昨年度手を加えた空き家4件を整備し、「瀬戸内国際芸術祭2022」の会場として保存し、新作とともに公開することができた。前年度から展示会場として使用している空き家のメンテナンスも行えた。新たにオープンした「TAKAMIJIMA INSIDE GALLERY」では、多くの来場者からショップの可能性が見え、売り上げからも今後の継続的な島での活動を行ううえでの足がかりを作れたと言える。
活動の独自性
「高見島プロジェクト」は2013年から4回の芸術祭に参加し、これまで合計9件の空き家を整備し展示会場としてメンテナンスしている。それを可能にしているのは、近隣に住むボランティアの人々や多度津町による日々の支え、環境整備があるからである。また、ほかの島と比べて芸術祭では空き家を使用した新作が多いのも独自の傾向であり、それが高見島を訪れるリピーターの増加に繋がっていると思われる。ショップができたことで、芸術祭期間以外での活動の可能性が広がったとともに、これまで島に関わった多くの作家との新たな協働も期待できる。
総括
高見島は芸術祭に関わる島の中でも最も過疎化の進む地域であり、島民の数も年々減っているのが現状である。その中で9件の空き家を展示会場として整備し1件の空き家を宿舎としてメンテナンスしながら管理している。新たにオープンした「TAKAMIJIMA INSIDE GALLERY」では地域の方々、参加アーティストにもギャラリースタッフとして働いていただいた。ここでは地域の方々,鑑賞者と我々アーティストとの多くのコミュニケーションが生まれ、プロジェクトの取り組みに賛同の意見を多くいただいた。私たちアーティストにとって、この場で地域の方々、鑑賞者の生の声を聞けたことはとても貴重な経験であった。
島には依然崩壊が進む空き家があることは無視できないものの、芸術祭期間以外も人が訪れる場所を目指すという、「高見島プロジェクト」の基盤が整い始めたと言える。今後も、マネジメント人材を公募で募集するなど運営方法を見直しながら、プロジェクト参加者が安心して活動できる環境づくりを進めていきたい。地域住民、多度津町、そして大学機関との連携を深め、意見交換、目的共有を大切に、継続的なプロジェクトを目指す。