活動の目的
本活動は大崎上島(広島県豊田郡大崎上島町)における「郷土知継承活動」の課題に対し、現実的な解決策を示すことを目的に運営された。具体的には島内児童・生徒が郷土学習で活用できる書籍の制作をゴールとし、「島内在住の郷土史家(馬場宏氏・金原兼雄氏)の業績を総括し学術的検証を加えること」、「わかりやすい表現をすること」等を制作へのマイルストーンとして位置づけた。
活動の経過
1)郷土史家による業績の総括
馬場・金原氏の業績総括にあたり「過去に発表された書籍・出版物の調査」「郷土文化に関わる活動」の調査を本人からの聞き取りを含め実施しただけでなく、その成果に対し学術的検証を加える作業を行った。検証作業は「信頼性の向上」を最優先課題とし、当該方面に詳しい学識経験者を交えることとしたが、同時に郷土史家当人の成果・主張を尊重することを心掛けた。
2)執筆
申請者が執筆を行った。執筆に当たっては島内の教育関係者から話を伺い、島内で実施されている郷土学習「大崎上島学」を意識し作業を進行させた。そのため「書籍で扱う題材は島内各地域を網羅すること」、「積極的なふりがな付加」、「あたたかみを出すためのイラスト」等の配慮を心掛けた。
3)活用・運用に関する助言
運用・活用に関する課題や、類似の事例を調査する必要から、学芸員の経歴を持つ学識経験者からアドバイスを受けた。
活動の成果
関係者の健康問題もあり当初の予定より完成が遅れたものの『大崎上島 金原さんと馬場さんの残してくれた事』(吉村印刷)が完成した。
1)島内教育機関への配布
島内で実施されている郷土学習「大崎上島学」は幼稚園から高等学校までを視野に入れ実施されているが、当該書籍の性格上「小学校・中学校・高等学校」への配布を予定している。また同時に申請者の勤務校である広島商船高等専門学校、並びに関係各所への配布も行う。(平成29年5月~)
2)大学COC事業への活用
広島商船高等専門学校が展開している大学COC事業「教育・文化グループ」における活動での活用を予定している。また広島商船の授業でも活用していく。(平成29年4月~)
3)成果発信(学術面)
「郷土史家による業績の総括」に関しては、その成果を平成28年9月3日の日本島嶼学会大会で報告した。(中道豪一「郷土史家 金原兼雄・馬場宏による研究成果の評価と継承 ―歴史をめぐる危機的状況の認識と克服―」)また平成29年度は広島民俗学会や郷土史に関連する学会における成果発信を計画している。
4)成果発信(学術以外)
近隣の公共図書館への献本をはじめ、教育機関以外にも関心のある人に向け書籍の配布を行う。現在は島内の観光案内所に配置してもらうことになっているが、順次、人の集まる施設や場所にも配置してもらえるよう交渉していく。
活動の課題
早速続編を希望する声を頂いた。すでに第3弾までの企画は考えているが、資金的な問題もあるため、無理のない範囲で進行していきたい。また瀬戸内海の他地域、瀬戸内海以外の離島地域とも交流が生まれたので、本助成成果を運用・発展させ、離島地域における郷土知継承活動の1テストケースとして提示していけるような展望を描いている。