活動の目的
①しまなみ海道の開通により、人の流れが変わり空き地が増えた大山祇神社参道にて、子どもたちが島民と関わりながら、にぎわいを取り戻す。
②子どもたちがバンブーハット(竹の小屋)を制作する。自らの手で原寸大の小さな建築物を作ることで、建築の楽しさを体感しながら学ぶ。
③参道の空き地を制作場所にすることで、神社の歴史に触れ、場所の意味を考える力を養う。
活動の経過
2015年から大山祇神社の参道の空き地で子どもワークショップを開催し、今活動は2回目となる。今回は講師に構造エンジニアの金田充弘氏を迎え、島に自生している竹を使用して、人が入ることができる仮設建築を制作することになった。島の中心部にあり、日本総鎮守と呼ばれる大山祇神社は、大三島の歴史、文化、生活を語る上で最も重要な場所といえる。その参道の衰退は今後の大三島にも大きな影響を与えると考え、島の活性化を促すためのワークショップを目指した。島民の人々と意識を共有するために、事前に参道の周辺地域の組長会に参加して、活動趣旨、内容を説明し、ご理解をいただいた上でワークショップを開催した。また材料に竹を活用する背景には、島内にはあらゆる場所に竹が自生しているという状況があり、竹林の管理に困っている所有者を探して活用した。子どもたちも、身近な材料を自ら加工し、材料の特徴を把握し、建築物を制作する一連のプロセスを体験することができた。
活動の成果
本活動では、約20名の島内外の子どもたちが竹の小屋を制作した。制作場所は神社からほど近い、かつての参道の趣を残した場所に建つ老舗旅館の敷地内の空き地を拝借した。参道には古い建物も多く、島外から参加した子どもたちは、環境の違いに刺激を受けていた。ワークショップでは、四つのグループに分かれ、はじめに基本形となるドームを竹と紐を用いて制作した。その後は子どもたちの自由な発想のもと、ドームをカスタマイズしながら、形を作っていった。竹の特徴であるしなりや繊維質の構造を理解すると、子ども同士、意見を出し合いながら、思い描く形を導き出していった。形がおおよそ完成すると、内部空間への関心が芽生え、次第にそこでどのように過ごすかを想像し始めた。残った竹材を利用して椅子や床を作り、なかには楽器を制作し、奏でる子どももいた。他者と過ごす居心地の良い空間を目指し、初めて顔を合わせた子ども同士がアイデアを出し合い、共同作業を進めていく自発的な行動が多く見受けられた。一連の作業を通して、建築に付随する人や環境の関係性を踏まえた参道の空き地固有の表現ができたのではないかと考える。また、参道が制作する子どもたちの声でにぎやかになっていくと、自然と近隣の人々も様子を見に顔を出してくれた。なかには道具を貸し出してくれる人も現れ、本活動を温かく見守ってくださった。準備段階から竹林所有者にもご協力をいただき、重機による竹林の険しい山の整地や運搬時の作業に当たっていただくなど、さまざまな島民との関わりのなかで、ワークショップの開催に至ることができた。こうした間接的な参加が輪を広げ、島の活性化につながることを目指して、今後も活動を続けていきたい。
活動の課題
参道の空き地の活用方法として、ワークショップという形で仮設建築を制作し、設置したが、本来の参道のにぎわいを取り戻すためには、日常的な活用が必要不可欠である。今後は、島民とともに活用の方法を導き出すためのヒアリングや提案が必要である。
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大山祇神社参道。趣のある建築が多く残る
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子どもたちが自ら考え、形を作っていく
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完成したバンブーハットに集まる子どもたち