瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

「古刺繍の探究を通じて、太鼓台と地歌舞伎との関係性を深める」

観音寺太鼓台研究グループ 尾崎明男

実施期間

活動の目的

① 伝統文化への深い理解が、地方に力を与える。 ② 太鼓台・豪華刺繍のルーツを、地方文化の先輩格の地歌舞伎・古衣裳に見いだし、双方が奥深く関連している事実を客観的に捉え、発信していく。 ③ 伝統文化の持つ歴史の重みと先人たちの熱い思いは、太鼓台と地歌舞伎だけにとどまらず、他の文化へも波及する。古刺繍の継続的探求は、地方全体にパワーと好影響を与える可能性がある。

活動の経過

H24年度には、「太鼓台装飾刺繍(古刺繍)の調査および研究~松里庵・高木家工房作品を中心に~」によって成果報告『太鼓台文化の歴史』を、H26年度には、地歌舞伎の古衣裳から太鼓台刺繍への関連を学ぶため「太鼓台文化を探究する~古刺繍における地歌舞伎衣裳と太鼓台との関係性について~」に取り組み、『地歌舞伎衣裳と太鼓台文化』を上辞した。27年度ではテーマに表題を掲げ、前年度の続編となる『地歌舞伎衣裳と太鼓台文化・Ⅱ』を発行した。
途中経過ながら、これまでの一連の作業からは双方文化の深いつながりが見えてきている。また、一連の活動で得られた客観的な情報は、継続的に発行している成果報告書やマスコミ報道などを通じ、近隣各地に広く情報発信している。
これまで複数の地歌舞伎団体-高松市・祗園座(H26.8)および土庄町・小海(おみ)歌舞伎(H27.7)-から協力が得られ、グループが有する「太鼓台古刺繍の情報」を手がかりとして、歌舞伎衣裳を調査・撮影させていただいた。引き続きH28年度には、小豆島・中山歌舞伎の衣裳に取り組むこととしている。

活動の成果

H27年度実施の成果として、箇条書き的に記す。
① 小海の歌舞伎衣裳の中に、太鼓台古刺繍と関連したり酷似する古衣裳(古刺繍)を、何点か確認することができた。報告書の中で「小海農村歌舞伎の衣裳集(抜粋)」として紹介した。
② さらに、太鼓台と地歌舞伎の双方古刺繍の「数珠繋ぎ的関連」を通じ、新たな作品同士の関連が広がり、古刺繍を通じた地方での伝統文化同士の深いつながりが見えてきつつある。
③ 全く別のものと考えていた太鼓台と地歌舞伎の双方文化が、豪華で華やかな“刺繍”を通して、深く関わっていたことが理解できている。
④ 地歌舞伎の盛んな小豆島を探究の舞台にしたことで、新たな活動の展開(複数の地歌舞伎団体との共同実施体制)を構築しつつある。
⑤ 伝統文化を継承するには、個々人の客観的でぶれない深い理解が必須である。狭い単独の伝統文化の枠内で取り組むのではなく、互いが協力・コラボする共同作業がとても重要である。
⑥ 撮影した衣裳写真(前・後ろ、拡大撮影を含む)は、A5判で約600ページのアルバム(8分冊)に編集し、撮影データとともに自治会へ提供できた。
同時に、全ての参加者へもデータ配布し、今後のそれぞれの探究に活用できるよう配慮した。
⑦ 太鼓台文化圏および地歌舞伎伝承の関係地の図書館等(主な中学・高校の図書室含む)へ、報告書『地歌舞伎衣裳と太鼓台文化・Ⅱ』を寄贈し、双方文化の発信を行うことができた。

活動の課題

身近な古里の古刺繍や古衣裳が、貴重な文化遺産として再評価されるよう、さらに異文化とのコラボを強化し、正確・客観性のある解明に努めたい。
また、太鼓台や地歌舞伎団体の古刺繍・古衣裳群を横断的に捉えた「古刺繍・古衣裳のデータベース化」をも見据え、継続して取り組みたい。

  • 中山歌舞伎の舞台を興味深く見学

  • 衣裳の撮影風景

  • 提供したA5判アルバム・全8冊