瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

豊島壇山お散歩マップの作成配布

NPO法人 豊島観光協会 三好正文

実施期間

活動の目的

檀山は豊島の最高峰であり、山頂からの360度瀬戸内海を見渡せる眺望や、四季折々の豊かな自然、島の暮らしを物語る開拓団の歴史等、豊島の魅力を伝える貴重な観光資源である。そこで、檀山を豊島の新たな観光資源として、効果的にPRするとともに、貴重な自然環境を守り、島民にとって望ましい活用方法を模索するため、ヒアリングを行い、その結果をPR冊子にまとめる。

活動の経過

檀山を活用するにあたって、本活動の目的は大きく二つある。
(1)檀山は豊島のシンボルであり、その関わり方や今後の活用方法については、島内でも様々な意見がある。そこで、できるだけ多様な声を拾うため、関係者へのヒアリングを行い、島内での意見集約と情報共有を行い、合意形成への1ステップとする。
(2)檀山はいまだ豊かな自然が残っており、豊峰権現を祀ったスダジイの森などは島民にとって信仰の場所でもある。そうした貴重な自然環境や歴史的遺産への配慮とマナーを観光客に呼びかけるため、檀山への島の人たちの想いを冊子にし、理解を促す。

活動の成果

檀山のPRツール作成にあたり、以下の通り、関係者5人にヒアリングを行った(一部抜粋)。
(1)開拓団の人たち
戦前に山火事で焼けた開け地を使い、昭和23年から国の指導で檀山開拓団が始まった。昭和30年代は檀山で9軒程が暮らしており、自給自足が中心。生活はとにかく厳しかった。洗濯物を抱えて唐櫃の清水まで山道を降りるのは重労働。井戸への水汲みは晩ご飯を作るには5回、お風呂を焚くには20回必要だ。一方、今でも檀山が一番と語る人もいる。山では生き物から多くのことを教わった。例えば、母性の強さ。一度卵を抱えると虫も鳥も絶対に動かない。草刈中に間違ってキジを伐ることさえあった。麓へ降りなくても、下界のことはよくわかる。環境破壊が言われ始めた頃は、空気が変わった。車が入るようになると草が枯れた。植生が変われば虫や生き物も変わる。草が変わると人の心が変わる。
(2)豊島をきれいにする会
山頂までの道沿いに植えられていた防風林を伐ってつくった展望台は、檀山の木で、檀山の人たちがつくったおもてなしの現れ。山頂から見る多島美をぜひ多くの人に見てもらいたい。特に夏~秋の夕日は何ともいえない。
(3)檀山の自然について
檀山は草花が多様で飽きることがない。例えば、アケビは実だけじゃなくて実は花もかわいいとか、足元に種がいっぱい落ちていれば、それはたいてい鳥の仕業。見上げれば、その実がいっぱいなっている。観光も必要だけれど、何を大事にするか。自然を壊さないやり方を工夫して。
(4)岡崎公園の思い出
かつての島の若者は、中学を卒業すると島外で就職するのが常だった。大阪で住み込みで働いていた頃、岡崎公園から見る瀬戸内海の風景が支えだった。故郷の原風景、この風景を守りたいという想いが島おこしに携わる原動力になっている。

活動の課題

来年の瀬戸内国際芸術祭を想定しつつ、観光客を山頂へ誘導するための導線づくりや、アクセスルール、休憩所の整備など、具体的なしくみづくりが急がれる。また島民の理解を促すためにも、それらのプロセスを島全体で共有するための配慮も重要と思われる。