瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

「世界の宝石-瀬戸内海」を磨く ~海底ごみ問題の取り組みと見える繋がり~

特定非営利活動法人 グリーンパートナーおかやま 藤原瑠美子

実施期間

活動の目的

海底ゴミを減らすためには、瀬戸内海に注ぐすべての河川流域で環境の保全に取り組む必要がある。「海を美しくする」ことは「川を汚さない」こと、「森を育てる」ことであり、これは江戸時代に岡山の池田藩に仕えた陽明学者・熊沢蕃山の掲げる「山川は天下の源なり」にも通ずるところである。 グリーンパートナーおかやまでは、平成20年度より海底ゴミの回収体験学習と分別調査を通じた地域連携による瀬戸内環境の保全活動のプロジェクトを企画し、活動を行ってきた。これは海洋汚染に対する事後手当のような清掃活動に留まらず、瀬戸内海流域全域に対する啓発活動という意味がある。瀬戸内海は閉鎖性水域であるため、住民が意識して環境保全に取り組むことで、効果が目に見えて表れやすいフィールドであるといえる。一度住民の生活により汚れた海を住民自身の手で再びきれいに蘇らせることは、世界に対する見本ともなると考えている。 また海ゴミのみを活動対象とするのでなく、海に流れ込む川、その源流となる山について考え、学習すること、また瀬戸内海を取り巻く歴史、文化を学習することにより、より多くの宝を発見することが環境の保全に対しては必要不可欠である。これらの意識を啓発する機会として、サミットの開催と海底ゴミの回収活動の併催を実現する。 多様なセクターが一堂に会し、同じ体験を共有し、同じ会場で意見を交わすことにより、人任せにせず、誰もが海洋環境を保全する担い手であるという意識づけ及び具体的な役割分担を実現する。行政のみ、企業のみが海洋環境の改善に取り組むのではなく、一般生活者や農業関係者、若者、子どもなど、誰もが責任ある立場にあることを理解してもらい、活動を起こしていくことを目指した。

活動の経過

環境省中国四国地方環境事務所、香川県小豆郡土庄町住民環境課、岡山県循環型社会推進課、環境管理課、岡山ESD推進協議会、EPOちゅうごく、四国EPO、企業、岡山理科大学、岡山後楽ライオンズクラブを筆頭に高松、土庄、他のライオンズクラブ、一般(親子など)も参加し、目に見えない海底のごみの実態を知っていただいた。初めて参加する方が多く、岡山三大河川から流れてくる生活ごみの約80%が流域住民からのものであることが分かり、ごみに対する意識が変わった。

<調査結果>
・ごみの個数、重量調査
平成23年7月は、8隻の小型底びき網漁で引き上げられたごみは、重量が約57.4 k g 、個数が約891 個となっている(粗大ごみを除く)。
平成25年5月は、10隻の小型底引き網漁で引き揚げられたごみは、重量が約57.98Kg、個数が約1,041個となっている(粗大ごみを除く)。香川県小豆郡土庄町沖の海底ごみ回収は2回目。しかし種類によっては個数、重量が減少しているが、やはりビニール袋、ペットボトルは減少しにくい。また家電製品では、ゲーム機器などの生活ごみがあった。平成25年5月回収したごみの数量は、ビニール袋、プラスチック、ペットボトルなどが目立った。

・賞味期限別缶ごみ割合
また、2011 年~ 2013 年に土庄沖で2回、山口県岩国で1回、缶ごみの調査を行っている。缶の裏には賞味期限が刻印されており、参加者と一緒に賞味期限を一個ずつ調べていった。そこから分かったことは、海のごみとなった時期がある程度分かるということである。海底ごみとして堆積した年月が長ければ空き缶は、錆びで賞味期限が読めなくなる。そして10 年以上も年月が経っているものがあることも分かった。
・「世界の宝石―瀬戸内海」を磨く中国四国環境サミット―海ごみから瀬戸内海の環境を考えるin岡山 (6月15日<土>瀬戸内海視察と記念講演&交流会)
瀬戸内海の海底の美しさを取り戻す講演やサミット、円卓会議等の交流会を通して、瀬戸内海のクリーンな環境保全の啓発活動を行う。
新岡山港から瀬戸内海航路の豊島をめぐり、瀬戸内海の現状を視察し、瀬戸内海の美しさを取り戻す講演や、シンポジウム等の交流会を通して、クリーンな自然環境保全のための啓発活動として「ごみ0ゼロ作戦」を行った。
奈良県立大学教授西田正憲氏による基調講演では瀬戸内海の景観や歴史、船上シンポジウムでは様々な方々をお招きし瀬戸内海の景観、海ごみについてお話をいただいた。

・子どもサミットと啓発活動を考える円卓会議
(6月16日<日>山陽女子中学校・高等学校 上代淑記念館)
円卓会議では、様々な部門の方をお招きし海ごみについてディスカッションした。また活動事例発表後、井上いつのり氏とトークセッションで瀬戸内海のあり方、海ごみの活動など熱く語った。二日間にわたって南川環境事務次官をお招きし、活動そのものを知っていただいた。瀬戸内海がこんなにもごみ箱化している現状について、この中国四国環境サミットでディスカッションでき大変ありがたく、また次の環境事務次官に繋げることができた。そして瀬戸内海の海ごみに関心のある方がたくさん集まり、情報共有、情報発信することができた。一人一人の貴重なご意見ご感想をいただき、この活動を未来に繋げていかなければいけないと実感した。
子どもサミットでは、水信講師等の手作りで子どもたちが楽しく海の生き物になって瀬戸内海のごみの現状を体験した。体験したことを大人サミットでメッセージの船として制作。子どもたちが想い描くメッセージとは、自分たちのごみで海を汚してはいけない。海に棲む生き物が棲みやすいようにごみを出さない、などだった。

活動の成果

多様なセクターが一堂に会し、同じ体験を共有し、同じ会場で意見を交わすことにより、人任せにせず、誰もが海洋環境を保全する担い手であるという意識づけ及び具体的な役割分担を実現できた。行政のみ、企業のみが海洋環境の改善に取り組むのではなく、一般生活者や農業関係者、若者、子どもなど、誰もが責任ある立場にあることを理解してもらい、活動を興していくことを目指すことができ、また民が主導の中国四国環境サミットを終え、南川環境事務次官をはじめ官学民企業、一般の方々に現状を知っていただき、また海ごみの問題解決に向けての課題が共有できた。

活動の課題

「海ごみ問題」の課題でたくさんの方と繋がり、私たちの手で「瀬戸内海ゴミ0 作戦」に向けて頑張りたい。