活動の目的
平成11 年(1999) に発足した、にいやま「文化を楽しみ育てる会」は平成25年度で創立15周年を迎えた。記念事業の一つとして「にいやま文化財と字図」マップならびに、その解説書「伝えたいわがふるさとの文化財」の作成に地域を挙げて取り組み、全戸配布することにより、地域に矜り(ほこり)を持ち文化力に支えられた地域づくりに寄与したいと考え企画する。
発足以来、まちづくりの基本は文化力にあり、地域に根ざした活動こそが本物と考え、埋もれ消えかけている文化財(史跡・地名他)を掘り起こして、父祖が土地に刻んできた文化、土の中に埋もれた文化財や、土とともに語りつくられてきた文化を地域のものとして再発見し伝えていこうと考え実践してきた。
笠岡市では、現在各地域で「まちづくり協議会」が発足しているが、その活動に深みや品格を持たせるには、文化力を欠くことはできない。そのためには、太古より先人たちが営々としてつくり残してきた文化財等をマップや解説書として残し、それを地域各戸に無料配布し、周知を図ることが地域づくりの一助となればと考え実施した。
活動の経過
1 本企画以前
創立以来、2月11日(建国記念の日)に「史跡探訪ウォーキング」を実施してきており、平成24年で14回になる。掘り起した史跡・地名他は151件になり、参加者も児童、保護者、地区内、地区外で延べ1,854名になった。
第1 回
日時:平成12 年2月20日(日) 8:00 ~
地区・テーマ名:山口地内(10 件)、萌黄ケ原から坊山
参加者:69 名
第2 回
日時:平成13 年2月11日(日) 8:30 ~
地区・テーマ名:新賀地内(10 件)、分水石から寺子屋
参加者:79 名
第3 回
日時:平成14 年2月11日(月) 9:00 ~
地区・テーマ名:山口地内(9 件)、古墳公園から大庭集落
参加者:77 名
第4 回
日時:平成15 年2月11日( 火) 8:30 ~
地区・テーマ名:長迫地内(9 件)、海神社から
参加者:150名
第5 回
日時:平成16 年2月11日( 水) 8:30 ~
地区・テーマ名:山口地内(6 件)、木山捷平生誕100周年記念
参加者:154名
第6 回
日時:平成17 年2月11日( 金) 8:30 ~
地区・テーマ名:山口地区と新賀地区の境(13 件)
参加者:149名
第7 回
日時:平成18 年2月11日( 土) 8:30 ~
地区・テーマ名:戦国山城めぐり(10 件)
参加者:179名
第8 回
日時:平成19 年2月11日(日) 8:30 ~
地区・テーマ名:大旱魃をゆく( 昭和14年)(9件)
参加者:136名
第9 回
日時:平成20 年2月11日(月) 8:30 ~
地区・テーマ名:市内最大の尾坂池を行く(14件)
参加者:144名
第10 回
日時:平成21 年2月11日( 水) 8:30 ~
地区・テーマ名:明治30 年の古地図で山口の昔を歩く(12 件)
参加者:151名
第11 回
日時:平成22 年2月11日( 木) 8:30 ~
地区・テーマ名:小学校6 年生の案内で古墳の歴史を歩く(12件)
参加者:172名
第12 回
日時:平成23 年2月11日( 金) 8:30 ~
地区・テーマ名:地蔵峠・山の池・政所跡を歩く(15件)
参加者:129名
第13 回
日時:平成24 年2月11日( 土) 8:30 ~
地区・テーマ名:尾坂川について知り考えよう
(新山小学校5 年生と)(14件)
参加者:112名
第14 回
日時:平成25 年2月11日(月) 8:30 ~
地区・テーマ名:疎開村大之平を訪ねよう
( 地元自治会、老人会 協力)(8 件)
参加者:153名
掘り起した史跡・地名他について、哲学者和辻哲郎氏の説「文化は自然に対する言葉である。自然を材料として、そこに何らかの人工を加え、それを一定の価値のあるものたらしめる過程が文化なのである。したがって、その価値のあるものが文化財と呼ばれている」に従うことにした。地名については、元日本地名研究所長の故谷川健一氏の説「地名は大地に記されたあぶりだしの暗号である。その暗号を解くのに、文献を調べ、現地に足を運び、古老に聞き、推理を重ねることになる」に従うことにした。
2 標記事業に限定した活動経過
4月:
・役員会を開き、正副会長会で協議した15周年記念事業とスケジュールについて協議承認した。
監修委員2名と実施委員長を決定する。
全役員を新賀地区と山口地区に区割りし、代表者を中心に作業を進めることにした。
5月:公民館自主講座「にいやまの昔を訪ねよう」で作成した雛型を典型例に山口地区72件、新賀地区40件を取り上げ、執筆要綱と執筆者を決めて作業にかかる。
6月~ 7月:
・旧村内8 地区の地区公会堂他で、「意見を聞く会」を実施した。
・「マップと字図」の作成は、土地評価図をもとに別途委員で進めた。
・原稿の部内検討をした上で、監修委員に検討いただき、執筆者に修正をお願いした。この際「意見を聞く会」での意見を反映させるようにした。
・写真班を作り現地での撮影作業を実施。極力、地区民に案内を頼み、その意見を取り入れた。
・第15 回総会兼合同委員会でまとめて印刷所送付、初校をもらう。
8月~ 10月:
・4 校で校了という原則で、作業。
・全戸配布のための準備、自治会の行政協力委員の方への依頼。
・10月19日~ 20日全戸配布(531部)、今までの協力者へも送付。
10月27日(日):
にいやま「文化を楽しみ育てる会」創立15 周年記念式典
場所 笠岡市立新山小学校体育館
・15周年記念事業の発表
・感謝状贈呈(監修者2 名)
・記念講演会 「正月はなぜめでたいか」-備中の正月習俗から- 神崎宣武先生
・参加者 104名
1月4日(土):
・新春内部研修会で反省(会計報告その他)
活動の成果
創立以来14回にわたり「史跡探訪とウォーキング」(参加者150名程)を実施し掘り起した151 件を精査し新賀(40件)、山口(72 件)の文化財を、「にいやま文化財と字図」マップと解説書「伝えたいわがふるさとの文化財」として出版し、全戸配布した。各戸や施設で掲示利用していただいている。
旧村内各地区を巡回したり、自治会等で協力をお願いしたことで地域を挙げての気風の醸成につながり、父祖が営々として自然とかかわり残してきた文化財を知ることにより、地縁や父祖とのつながりを疎ましく考える世情のある中で、この地に矜り(ほこり)を持つ人ができ、新しい地域力を育てることに貢献できつつある。
難地名の解明にも巡回して「意見を聞く会」で意外なヒントが得られたり、不明の峠道に「自分の家があり数年前まで訪ねていた」という発言に喜んだりした。
個人での研究者が発見でき、協力者が出てきた。
活動の課題
以前この地域に存在していた「甲弩郷史談会」を引き継ぐかたちで発足し、15 周年を迎えた私どもの会では、第8 回瀬戸内海文化研究・活動支援助成をいただくことにより15周年記念事業を実施し、所期の目的を達成できた。
文化活動は「創造」「継続」「発展」のサイクルで進展するものと考えており、それぞれの難しさにも直面しているが、世代交代のためには、新しい挑戦こそが大切だと実感している(小字や家名など)。
15年を経過すると、役員の高齢化も進み、継続のためにも人事の世代交代も喫緊の要事となっている。