活動の目的
珠洲市は「祭とヨバレ(食)」に象徴される「忘れられた日本」が現存する過疎高齢の「さいはての地」である。地方創生の切り札として、北川フラム氏を総合ディレクターに迎え、2017年秋に奥能登国際芸術祭を初開催した。
活動の内容
9月3日から10月22日の50日間、「奥能登国際芸術祭2017」を開催した。4月から地域住民や学生、サポーターなどと協力しながら作品制作等の準備を進めた。
7月に渋谷ヒカリエ8/(東京都)にて開幕直前展を開催し、前年度行った写真と言葉のコンテスト受賞作品の展示や祭りの紹介を通して芸術祭開催地をアピールした。併せて作品プランや石川直樹写真展、トークショーを行い、芸術祭の具体的イメージを膨らませる場となった。
開催期間中には延べ500人を超える市民の協力を得てイベントを運営し、県内外から想定を上回る71,260人が来場した。
実施場所:石川県珠洲市全域
参加作家、参加人数
北川フラム(総合ディレクター)、浅葉克己(クリエイティブディレクター)、福田敏也(コミュニケーションディレクター)、石川直樹(公式写真)、アデル・アブデスメッド、岩崎貴宏、河口龍夫、塩田千春、ひびのこづえ、トビアス・レーベルガーほか
参加作家/作品数 39組/40作品(イベント含む)
来場者数(推計値) 71,260人(延べ396,134人)
他機関との連携
珠洲市、珠洲商工会議所、市内および県内の関係団体・事業者の外、金沢美術工芸大学、金沢21世紀美術館とも連携して事業を実施した。
活動の効果
芸術祭開催により従来にない視点から珠洲市の文化資源等の価値、魅力を見直し、国内外からの評価により、市民が生業を含めた文化に対して誇りを再認識することができた。
芸術祭開催により、多くの市民が土地の魅力を引き出すアート作品を鑑賞し、あるいはサポーターやガイドとして運営に携わり、本市の魅力を心を込めて伝えることで、地域への誇りや愛着が深まった。さらに、7万人(推計値)を超える来場者による賑わいと活気を肌で感じ、本市の未来に希望を感じることができた。
活動の独自性
能登半島の先端に位置する珠洲市は、東アジア地域に向けて突出しており、古くから海と陸の交流が盛んに行われたことにより特異な文化が育まれてきた。地理的に孤立していることから、日本文化の源流ともいうべき昔ながらの暮らしや風習“忘れられた日本”が今でも残る。奥能登珠洲に眠るポテンシャルをアートの手法により掘り起こし、日本の“最涯”から“最先端”の文化の創造を試みる。
総括
「奥能登国際芸術祭2017」の開催により、これまで思うように伝えることができなかった珠洲市の魅力である祭りと食文化に象徴される日本のおもてなし文化、世界農業遺産に認定された里山里海を、現代アートの手法によって親しみやすく伝えることができたと同時に、市民が地域への誇りと希望を感じることができた。
高齢化率40%を超える本市にとって、人口減少に歯止めをかけるべく移住定住を促進し、魅力的なまちづくりを進めることが急務であることから「奥能登国際芸術祭」を開催した。芸術祭の開催によって、アートの手法を用いることで本市の魅力がわかりやくす伝わり、市民が希望を感じることができるということが実証された。今後大きな成果を生み出していくためには、芸術祭の取り組みを継続していくことが必要であり、次回、東京オリンピック開催年である2020年の開催に向けて、着実に準備を進めるとともに、2017年の開催によって生み出された新たな流れを大きなものに育てていくことが重要である。