活動の目的
アートによるソーシャルインクルージョンの推進の方法として、「表現未満、」プロジェクトを行っている。「表現未満、」とは、特別な力がある人がつくる特別な行為ではなく、誰もが持ち得る自分を表す方法としての表現を大切にしていく文化を育てることを目的としている。
活動の内容
「表現未満、」プロジェクトは5つの事業がある(観光事業、拠点づくり、ひとインれじでんす、しえんかいぎ、スタ☆タン)。
スタ☆タンは、全国公募を行い62組の応募があった。1次審査を通過した「表現未満、」な19組が創造都市浜松の殿堂アクトシティ浜松中ホールにて発表した。拠点づくりは、他財団(日本財団)の支援を受けて中心市街地に念願の拠点を建設する運びとなった(2018年10月完成)。観光事業は、第1回観光サミットを行い、観光事業の意義を議論するとともに、そのプラットフォームとしてサミットのあり方を議論した。同時にレッツの観光のあらましを紹介する展覧会「レッツ観光局」を中心市街地のギャラリーにて20日間行った。
実施場所:アクトシティ浜松中ホール、浜松市中心市街地
参加作家、参加人数
スタ☆タン:応募者62組、出演19組/審査員:片岡祐介(音楽家)、椹木野衣(美術批評)、ジョニー大蔵大臣(パンクロッカー)、ナガオカケンメイ(デザイン活動家)入場者400名
観光事業:東浩紀(思想家)、ナガオカケンメイ、川延安直(学芸員)、陸奥賢(観光家)、佐々木誠(映画監督)、アサダワタル(日常編集家)総参加者500名
他機関との連携
静岡県文化政策課、浜松市創造都市推進課、浜松市文化政策課、浜松市産業振興課、浜松市障害福祉課、日本財団、浜松市賑わい協議会、中日新聞、静岡新聞、静岡放送、K-Mix、浜松市文化振興財団
活動の効果
●平成29年度 芸術選奨文部科学大臣新人賞をレッツ代表久保田翠が「表現未満、実験室その他」で受賞した。●今までの実績が評価され、浜松市中心市街地に重度の障害のある人を核とした文化発信拠点を建設することが実現した。今後「表現未満、」の拠点として事業を展開することが期待されている。●2回目となるスタ☆タンは今までとは違う客層の来場が多く、事業の周知を行うことができた。
活動の独自性
東京オリンピック、パラリンピックの影響によって障害者の作品作りばかりが目立つが、その中で障害のある人たちの「存在」をアートによって顕在化させる活動は他に例がない。同時に市民誰もが持つ「表現する力」を奨励していくことで、「ひとりひとりが認められる社会」「混ざり合う社会」を実現しようとするレッツの活動を「表現未満、」プロジェクトとして推進している。この中の5本の事業は、障害、文化・芸術、街づくりといった分野横断を実現し、アートが持つ多様性、包括性、創造性今までとは違った角度からアプローチしていく方法として、ようやく注目され始めたと感じている。
総括
レッツは設立から18年、一貫して「さまざまな人たちがともにいきる社会」ソーシャルインクルージョンの実現を訴えてきた。それは、重度の知的障害者の「障害」を「そのひとの存在そのもの」と位置づけ、アートを通して顕在化させていくことをひたすら行ってきた。
昨年度から始まった「表現未満、」プロジェクトは、そうした事業をブラッシュアップし、5本の事業として行っている。そうした実績が認められ浜松市中心市街地に拠点建設が可能となったことは大きな前進である。また、2回目となるスタ☆タンは、全国から公募が集まり、浜松の音楽の殿堂で行ったオーディションは、今までにない市民の音楽性を多くの方々に示す好例となった。次回開催への待望も熱く、事業として自立の可能性がある。3月に発表された芸術選奨文部科学大臣新人賞にレッツ代表の久保田が選出されたその作品名が「表現未満、実験室その他」であったことは、社会的な課題に対して文化・芸術が優れた働きをするとともに、人が人として認められ、人権や生存権を回復していく力が芸術にあることを認められる時代になったと感じている。福武財団には長年にわたり応援していただきましたこと、心より感謝申し上げます。