アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

下町芸術祭2017

新長田アートコモンズ実行委員会

実施期間
2017年11月3日~25日

活動の目的

阪神淡路大震災から20年経った2015年から始動した「下町芸術祭」は、歴史的にも移民が多く文化的多様性を持っていること、震災という共通体験を得ていることなどを活かし、新たなインフラを作ることではなく、文化芸術活動を媒介として町の持つ魅力を再発見し、未来に向けて次の町のビジョンを構築することを目指しています。

活動の内容

下町芸術祭2017は「境界の民」をコンセプトに5つのプログラムを展開しました。「下町とは何か」という問いから始まり関西の3都市を巡りながら2019年までの作品展開を視野に入れた森村泰昌「下町物語プロジェクト」、開催エリアの移民の歴史を紐解きながら、新たな家族の有り様を提示したKobe-AsiaContemporary Dance Festival #4「家族の系譜」、若手作家を招聘し滞在制作した作品を古民家で展示する「Dialogueon the Borderline」、瀬戸内各地でアート、クリエイティブなプロジェクトを運営している団体を招聘し、情報共有とともに瀬戸内圏として新たな文化経済の流れを生み出していくことを目指した「瀬戸内経済文化圏 OPEN SUMMIT」、芸術祭のプレ事業として町の持つ歴史や移民の生活、多文化共生やアートマネジメントのあり方など、町を構成するさまざまな要素を学び直す「下町芸術大学」を実施しました。また、芸術祭期間中はアーティストによるトークイベントやガイドツアー、ボランティアチーム「こて隊」によるツアーを毎日行いました。
実施場所:神戸市長田区

参加作家、参加人数

森村泰昌、野原万里絵、村上文子、小倉和、安達大悟、河地貢士、下町すちゃらか喜劇団、ジェコ・シオンポ、グェン・チン・ティ、エグリントンみか、目黑大路、矢内原美邦、レ・カイン、安藤朋子、羊屋白玉、筒井潤、セレノグラフィカ、余越保子、山下残、服部滋樹、原田祐馬、ARCADE、BEPPU PROJECT、STANDプロジェクト、ディスカバーリンクせとうち、YCAM地域開発ラボ、うなぎの寝床、道後オンセナート、瀬戸内国際写真展、RDND、DOR

他機関との連携

兵庫県、神戸市、長田区などの地元自治体と連携し、文化芸術系の部署だけでなく開催エリアに関わるさまざまな部署と横断的に連携を図りました。また、地域の40以上の団体と連携しています。

活動の効果

■来街者の増加、町の認知度の向上
当芸術祭期間中に延べ2万人の方にお越しいただくことができました。また、当エリアで課題となっている空き家、空き地の利活用についても認知が広がり、移住等の問い合わせを開催中から受けています。
■地域団体の連携促進
今年度より実行委員会を拡充し、地域内の企業や地縁団体、NPO、まちづくりコンサルタント、福祉施設、病院、商業団体、金融機関など約40団体の組織構成に変更し、芸術祭終了後も相互の連携が生まれています。

活動の独自性

下町芸術祭は決して大きな規模の芸術祭ではありません。しかしながら、当エリアで活動してきたダンスボックスをはじめとするアート団体が中心となりながら、アートを媒介とし、地域内の人や団体がつながるハブとして民間で連携して行っています。単発のイベントではなく、日常的に地域でさまざまな事業を行っている団体や企業が連携することで、この芸術祭はアーティストとそれぞれが協働した成果発表という側面も持ち、町の持つ可能性を拡張しています。また、今年度実施した「瀬戸内経済文化圏」や「下町芸術大学」は、地方都市での活動を考え、地域内でのネットワーク化を図るなど、芸術祭としては珍しい企画ですが、これらの企画を行うことで、より芸術祭の持続可能性を高めています。

総括

下町芸術祭は2015年より始まり、第2回目の開催となりました。1回目の課題を解決するために、ディレクター制度の導入、実行委員会の組織構成の変更などに取り組みました。ディレクターに企画を委嘱することで、先進性の高い企画が行え、実行委員会を拡張することで、より地域の方々との連携を生むことができました。地域の「祭り」として、芸術祭がさまざまな人や組織と横断的に連携し、芸術祭終了後に地域の中に豊かなつながりが残っていくことを目指しています。本年度はその一端をつかめたように感じています。
「瀬戸内経済文化圏OPEN SUMMIT」という企画では、アートプロジェクトに関心の高い人だけでなく、地域団体の方々が6時間にわたるサミットから懇親会まで多く参加してくださり、今後の瀬戸内というエリアでの連携を考える上で非常に有用な機会となりました。今年度実施したプログラムは、ほとんどを継続していきます。プログラムを継続させていきながら、地域の中でできることの可能性をより拡張していきたいと思っています。

  • Kobe-Asia Contemporary Dance Festival

  • 下町物語プロジェクト

  • 瀬戸内経済文化圏