アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

龍宮学校生徒会

龍宮学校生徒会

実施期間
2017年4月~2018年3月

活動の目的

高知県西南に位置する鵜来(うくる)島は、人口20名強の限界集落島です。海から見てひと際目立つ白い小中校舎は、2008年に廃校となり、現在に至っており、島民はほぼ後期高齢者です。「龍宮学校」では、時代の波に呑まれ廃校となった学校に再び生命を吹き込むことで、島の未来を考えるきっかけにしようと考えます。

活動の内容

島の廃校を舞台とした夏の「龍宮学校」の授業では、島民から、長く漁業を営んできた島独自の伝統料理や技術と知識を学んだり、日本各地から訪れた作家が先生となるなど、自分の能力や思想に基づくさまざまな授業を行いました。「日本未来会議」をテーマに掲げ、学校開催前に島の行事や空き家整備を手伝いながら、限界集落としての課題に向き合うことで、鵜来島にしか存在しえない学校となりました。
また、島の行事内で映像発表を行ったり、イベント後にも活動をまとめた本を企画・出版するなど、1年を通して島と向き合うことで、島民だけでなく、島を出た方々、島を思う日本各地の方々を繋げる大きな土台を作ろうとしています。
実施場所:高知県宿毛市沖の島町鵜来島

参加作家、参加人数

現代美術作家から、現代魔術研究家、料理人から猟師にいたるまで、さまざまな表現者、計13名が日本各地から集いました。これまで参加者は島の宿泊上限者数30名に限られていましたが、今年はお盆で島に帰省した方や、民宿のお客様など100名近くの方にも認知いただくことができました。

他機関との連携

「鵜来島地区」「島を守る会」と連携して、島の行事と絡めてアートプロジェクトの作品を発表。島内の民宿「しまの灯」や「うぐるBOX」にご協力いただき、宿泊場所の確保や、島を訪れる旅行者とアートプロジェクト参加者との交流を行った。

活動の効果

最も直接的実益のあるものとしては、人手不足のために難しくなった伝統や文化の記録と継承、整備の充実などが挙げられます。文化的効果としては、伝統と現代芸術への理解、同時に、外部(他者)を受け入れる包容力、一過性ではない継続的な思考と行動が期待されます。島外の私たちが島の活力となることで、今まで島行事に関わらなかった人も島に目を向けるようになった、島の未来について考えるようになったと、喜びの声をいただきました。

活動の独自性

体験型のアートやワークショップは多々ありますが、私たちの独自性は何といっても「代替現実」です。外音のない閉ざされた離島、庭と道の境界線がなく、歩いて10分程度の限られた居住区、隣り合わせの廃墟や山林大海。この鵜来島の土地性によって曖昧にされた境界線は、「学校生活」という代替現実上で、自己実現と社会貢献の認識を、より深い心理体験としてもたらします。
本年は「日本未来会議」というテーマを掲げて授業を開催する最中に、国民保護サイレン(ミサイル)テストが行われ、まさに未来を思考する代替現実となりました。

総括

2017年夏、日本国内では「ミサイル」や「自己防衛」など、にわかに不穏な単語が飛び交い、海の向こうとどう向き合うのか、試されているかのようでした。時同じくして開催された「龍宮学校-日本未来会議-」では、限界集落となった島から、参加者それぞれのふるさとを臨み、深く思考する数日となりました。
これまで島の行事とは一歩切り離して活動していたアートプロジェクトでしたが、盆行事の後に、廃校に残されていた過去のビデオを編集して2020年につなぐ作品を発表したり、島民の方も先生や生徒となって授業に参加いただいたり、学校イベント開催後も本の出版企画をスタートさせることで、内外をシームレスに紡ぐ渦を作り出そうとしています。
「なんもない島だと思っていたけれど、みなさんと話をして島の魅力に驚いた」「島の未来を考えるのは難しくて、どこか人ごとのように過ごしていたけれど、島のどこが好きで帰ってきたか思い出した」などなど、直接プロジェクトに参加しなかった島の方からも感想をいただきました。少人数で続けてきたアートプロジェクトですが、思いを込めて投げた小さなボトルが波に乗り、どこかの誰かにたどり着く....そんな可能性を感じることができました。

  • 盆祭りの終り、昔の運動会を廃校舎に投影

  • 島の漁師が教える「縄術」の授業

  • 未来の昔話を作る授業「ひめひこ講」