アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

アートと左官 -人とまちをつなぐ仕事-

特定非営利活動法人 八女空き家再生スイッチ

実施期間
2017年7月~11月

活動の目的

築約130年の大型木造建築「旧八女郡役所」の中央にある大空間の再生と活用を、伝統的な左官仕事とアートイベントを通して地元の人たちとの関わり合いの中で行い、地域にとって魅力ある空間作りを実践する。

活動の内容

(1)有明高専建築学科の学生を中心に一般の参加者も募り荒壁塗りのワークショップを開催(7月17日、8月18・20・21日)。土捏ね、竹割り、藁切りに始まり、木舞かき、荒壁塗りという伝統的な手法で行った。
(2)荒壁のみではあるものの、空間として一応の仕上がりができた旧八女郡役所の大きなホールで「パラモデル・ハヤシヤスヒコ インスタレーション展」を開催(2017年10月8日-11月26日)。
(3)ハヤシヤスヒコ氏によるプラレールを使ったワークショップを開催(2017年10月9日)。会場にあるものを参加者が持ち寄って作品を制作。
(4)ハヤシヤスヒコ氏を囲むトークイベントの開催(2017年10月8日)。
実施場所:旧八女郡役所

参加作家、参加人数

(1)有明高専建築学科生10名(大牟田市)、その他11名 (2)ハヤシヤスヒコ(パラモデル)、来場約1,500名 (3)ハヤシヤスヒコ(パラモデル)、木村日出夫(studio rakkora)、他10名 (4)ハヤシヤスヒコ(パラモデル)、木村日出夫(studiorakkora)、他15名

他機関との連携

三宅洋児(左官)、有明高専建築学科加藤研究室、八女伝統工芸館、地元伝統産業の職人および工房、九州芸文館、八女市役所、八女市観光協会八女支部

活動の効果

伝統的木造建築の大空間で学生や一般のボランティアと一緒に荒壁塗りをして会場を仕上げ、参加者と空間の関係性を深めることができた。その空間での今回のインスタレーション作品は、主要部分が伝統産業を中心とした八女の物産で構成されていたことや、会場が酒販店や絵本店が入店している建物ということもあり、普段アートを意識しない方が多数来場された。空間の持つ力と建物の利活用について再確認し、行政を含めた地域の方に認知してもらうことができた。

活動の独自性

旧八女郡役所という歴史的な建物の内部を伝統的な左官仕事で再生することにより、力強い空間を生み出し、その空間で八女の物産を使った緊張感のある作品が展開された。作品中のプラレール上をスマートフォンで動画を撮りながらトミカが走るようになっており、来場者は空間を体感するだけでなく、画面上に映る動画により水平移動する視点でも作品を鑑賞した。さらに、撮影した動画をSNSに公開することで時間を超えて作品の体感を共有することもでき、映像の中に歴史的建物の空間や地域の物産、時には鑑賞者当人も映し出され、さまざまな関係性の広がりを作り出した。また、左官仕事とインスタレーションという、まったく異質な作業を空間を作るという評価軸で価値づけしようという試みでもあった。

総括

当初は作品制作と左官仕事を同時期に展開する予定だったが諸事情で時期をずらすことになり、アーティストと職人の交流ができなかった。一方で、当初から意識していたようにアート作品を通して旧八女郡役所と地域に興味を持つさまざまな人たちとの新しい関係性を構築する大きなきっかけになった。

  • インスタレーション展の様子

  • ワークショップの様子

  • 荒壁塗りワークショップの様子