活動の目的
限界集落である飛生地区で、廃校になった旧校舎を拠点に、2009年から「飛生芸術祭」を継続して開催。アートを通じた交流の活性化と、創造する場としての幅広い活用方法の模索、そして地域性を活かしたアートの発信を目指す。
活動の内容
春から秋にかけて「飛生の森づくりプロジェクト」の活動を行い、アートの森の整備や交流活動を実施。「飛生芸術祭 2016」では飛生地区の未来への想像図を体感できる作品「タイムトンネル」を公開、Ayoro Labolatory+石川直樹による「アヨロパラレルワールド」では地元アヨロ地区の風景を展示空間に再現。オープニングの「TOBIU CAMP 2016」では子どもを対象としたワークショップを充実させた。アイヌ民族博物館の担い手とともに実施する「ウポポ(伝承歌)大合唱」を実施。また、奈良美智氏、日比野克彦氏、大友良英氏らの参加もあり盛況であった。
実施場所:飛生アートコミュニティー(北海道白老郡白老町字竹浦520)
参加作家、参加人数
飛生アートコミュニティーの作家を中心に、アート、音楽、ダンス、人形劇などさまざまな出演者が参加。「明後日朝顔プロジェクト飛生」の開催により日比野克彦氏を招聘、急遽アニメーション上映会が決定した奈良美智氏も参加。
期間中は約1,400人が訪れ、10世帯ほどしかない飛生地区が賑やかになった。
他機関との連携
開催地の飛生町内会、アイヌ民族博物館、白老町観光協会、竹浦小学校などと連携して事業を実施した。また、「明後日朝顔プロジェクト」など他地域の団体との交流にも発展。
活動の効果
「飛生芸術祭 2016」に訪れた来場者が、企画をきっかけに白老町内を回って地域を再発見し、地域活性にも貢献できた。また、運営面においても地元の協力者が確実に増え、自主的な関わりが見られるようになった。子どもたちを対象にしたワークショップを充実させたことにより、アートへの興味が広がるなど次世代への長期的な効果も期待できる。
活動の独自性
過疎化が進む集落に若者たちが集まりさまざまな活動を行っている。会場となる飛生の森はかつての学校林であり、再び子どもたちが集える森の再生を目指して2011年から活動を継続している。「飛生芸術祭」は、アート作品を単体で見せるだけでなく、「飛生」というアイヌ語の地名の語源にインスピレーションを受け、飛生の森を中心に会場空間づくりや作品制作を行っている。また、その空間に来場者が加わることで一つの物語が完成すると考え、全体を一つの作品として表現していることに独自性があると考えている。
総括
「飛生芸術祭」は2009年より毎年継続して開催してきた。2011年からは「TOBIU CAMP」、「飛生の森づくりプロジェクト」など、より多くの人を巻き込む活動に発展し成長している。この度の「飛生芸術祭 2016」では8年目にして過去最高の来場者数に達することができた。天候に恵まれたことも理由の一つにあげられるが地元を中心に認知度が高まってきていることは実感できる。10世帯ほどの限界集落である飛生地区に、都心からも若者が集まり、森づくりや芸術祭を行う動きは、地元白老町の活性化にも少なからず寄与してきたともいえる。また、これまでもウポポ大合唱などで協力関係にあったアイヌ民族博物館とも2016年から正式に連携という形で、表面的ではなく新たな分野を作るべく、今後の関係強化を進めている。2020年に開館される国立アイヌ民族博物館との関係も視野に入れた動きに発展することを目指したい。作家アーティストにおいては、飛生アートコミュニティーの作家や毎年継続して参加するアーティストに加え、奈良美智氏や日比野克彦氏、大友良英氏、石川直樹氏など著名な方々が活動に興味を示して参加があったことも、過疎地域の小さな取り組みが少しづつ理解されてきた証拠ではないだろうか?