活動の目的
過去5年間に開催された大船渡復興東北三大まつりを継承するとともに、三陸沿岸の郷土芸能をはじめとする文化・営みへの誇りを取り戻し、三陸沿岸地域の震災復興、持続可能なまちづくりを文化芸術により後押ししていきます。さらに、東京オリンピック開催にあわせて行われる文化プログラムの一つとして、国際的な「祭博」への発展を目指します。
活動の内容
9月10日18時より、北東北を代表する祭りと、三陸沿岸に伝わる獅子舞、虎舞の団体を国内外10地域から8団体招聘し、大船渡市内の商店街の県道を3時間にわたって練り歩きました。沿道には大勢の方が見に来られ、総勢15団体、400名の練り歩く様子に圧倒されていました。
10日、11日の2日間は、商店街の界隈で芸能団体による演舞が披露されました。日常空間で伝統芸能を身近に感じられる、観客を巻き込んだ交流を図りました。
9日は、宮田亮平文化庁長官にも来ていただき、国際フォーラムを開催しました。文化庁の震災復興に対する想いや取り組みの報告、三大まつりの連携プログラム・三陸国際芸術祭での取り組みの事例を共有し、それぞれの活動から見えてくる未来について語り合いました。
また、現代美術家二人が数カ月前から大船渡に住み、地域の方たちと協働しながら、作品制作を行ない、商店街内に作品を展示しました。当日は店先でガラスアートをしながら、見に来られた方や商店街の方との交流を行なっていました。
参加作家、参加人数
北東北を代表する、秋田竿燈まつり、盛岡さんさ踊り、弘前ねぷた、三陸の郷土芸能である獅子舞・虎舞5団体(大槌虎舞、甫嶺獅子舞、浪板虎舞、女川獅子舞、金津流獅子躍)、国内外3団体(胡屋・仲宗根遊び獅子、ライオンダンス、バロンダンス)、そのほか八戸(内丸えんぶり組)、インドネシア(エユセル、サンガル・スニ・マリシン)、フィリピン(フィリピン国立芸術高校)からも迎え、総勢15団体400名が2日間、演舞を披露しました。
他機関との連携
祭博全体は、NPO法人JCDN主催の三陸国際芸術祭との連携プログラムとして、また、国際フォーラムは文化庁、国際交流基金アジアセンター、公益社団法人企業メセナ協議会、NPO法人JCDNとの共同主催で開催しました。
活動の効果
今年は、事務局を商店街の中央に置き、祭りの準備を行ってきました。市民の方たちがふらっと寄り、様子を尋ねたり、お手伝いをしたり、と積極的に関わりを持ちました。また現代美術家の作品制作にも関わり、ともにまちなかアートを展開していきました。自然と自主性が生まれ、それぞれが地域のために行動し始めました。
活動の独自性
2016年は、三陸沿岸に伝わる獅子舞系の郷土芸能(大船渡市内だけでも81団体)を特に取り上げました。また、三陸沿岸だけではなく、沖縄、海外からも個性的な獅子舞系の団体(計8団体)を招聘しました。普段は主に集落のお祭りで披露することが多い郷土芸能ですが、商店街界隈でさまざまな獅子が行き交う様子に対し、普段郷土芸能を見慣れている市民や遠方からの観客から「迫力があった」「芸能が海でつながっていることを感じた」などの感想を聞くことができました。さらに、地域コミュニティーにおける芸能の意味を解説するなど、一般の方々との交流を多く行い、郷土芸能の発祥の深み、今後の広がりを感じられるものとなりました。
総括
【地域から世界へ】
郷土芸能のように地域に根ざした芸能を残す取り組み、伝統と現代を結ぶ取り組みはアジアの国々でも行われています。2016年は、そのような団体を招聘し、芸能交流を行うなど、同じ場で演舞を行いました。出演者からは、「表現することへの意識を変えられた」という声が出たように、刺激を与え合うだけではなく、それぞれが芸能に対する立場を考え直す場となりました。
地域の中で育まれ、継承されてきた郷土芸能と国内外の芸能団体との出合い、地域の方たちと現代アートとの出合い、今年の祭博ではさまざまな出合いが生まれました。海外の団体は地域の小中学校、福祉施設での交流を行い、それぞれの場所で、その地域の芸能を楽しみました。特に福祉施設の高齢者の方から、大船渡音頭を教えられ、いっしょに踊ったのは印象深かったようで、音源を持ち帰ったほどでした。
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沖縄の獅子とバリの獅子との出合い
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大船渡音頭を習うフィリピン国立芸術高校生
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梯子の上で舞う浪板虎舞