アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2016

学校法人 東北芸術工科大学

実施期間
2016年4月~11月

活動の目的

「街づくり」は「人づくり」を大きなミッションとして掲げ、社会貢献や環境保護への関心や行動力をもつクリエイターや創造的市民を輩出し、地域社会の活動人口を増やしていくことにより、芸術文化による街づくりに貢献する。

活動の内容

4月より本格的に出品アーティストとの打ち合わせや展示会場のロケハンを行い、具体的な展示計画のプランニングを開始した。また、文化庁補助事業として採択された「市プロジェクト会議」を並行して定期的に開催。アーティストと市民の新たな協働もスタートした。
並行して、学生アシスタントを募集し、定期的な勉強会を通して芸術祭運営等の準備を行った。一般の学生ボランティア向けには、6月と8月にメイン会場となる市街地で1回ずつ研修会を実施し、芸術祭本番に備えた。
芸術祭は、山形県郷土館「文翔館」をメインに、市街地の歴史的建造物やリノベーション空間、本学キャンパスなど10数カ所の会場で、9月3日から25日まで開催した。

参加作家、参加人数

荒井良二(絵本作家)、いしいしんじ(小説家)、大原大次郎(グラフィックデザイナー)、ナカムラクニオ(6次元店主)、ミロコマチコ(絵本作家)など45組が出展。200名を超える市民や学生がプロジェクトをサポート。山形県内の他、全国各地から60,627人の観覧者が訪れた。

他機関との連携

山形県生涯学習文化財団や県立図書館等の公共施設、リノベーション関連企業や物件、民間店舗等との連携によりプロジェクトを実施した。

活動の効果

準備段階から、これまで構築してきた市民との協働プログラム「みちのくつくるラボ」や、今年度スタートした「市プロジェクト」などによるプログラムを継続的に展開。準備や実施・運営に関わった市民や学生は220名を数え、2014年度の第1回芸術祭での160名を上回り、活動人口の拡大が図られた。また、集客数も60,627名を数え、第1回の36,390名を大きく上回ったことから、交流人口も大幅な拡大を図ることができた。

活動の独自性

本芸術祭の最大の特徴は、芸術大学という教育機関が運営母体となっていることである。規模や集客数、経済効果などにあまりとらわれることなく、アーティストと協働することにより、主体性を持って街づくりに参画できる創造性豊かな市民や学生を育成することが、大きな目的となっている。
また、アートやデザインの他にも、音楽、ファッション、文学、本、民俗学、食などジャンルにとらわれないプロジェクトを展開していることや、空洞化する市街地でリノベーション物件を活用していることなども、本芸術祭の大きな特徴といえる。

総括

参加者の多くは県外(特に首都圏)からが多く、芸術祭としての認知度は高まってきた。一方で、芸術祭特有のアートファン層と比較した場合、一般の地元市民(特に山形市以外の県内)での認知度はまだ十分とはいえず、芸術祭浸透に向けた地域への広報活動や自治体との連携などが課題となる。
また、アート関係者からは、大学が主催する芸術祭ということで、「全国各地で行われている自治体主体のアートフェスティバルとはどこかが違うのだろう」という印象と期待を持たれる方が多かった。実際に参加された印象や他の芸術祭との相違点などに関しては、「行政主導では扱いにくいテーマもあり、大学主催の強みが感じられる」など、大学主体の運営に関する評価が見られた。一方で、「主催・事務局が大学単体の組織に集約されることから、外部の多角的な視点が運営に入りにくいのではないか」との指摘もあった。また、各会場間の移動手段や交通案内などアクセス面での不便さの指摘があり、インフラ整備などにも今後の課題として取り組んでいきたい。
なお、本学が山形市とリノベーション分野で包括協定を締結するなど、今後の創造的都市形成の一環として発展の可能性も見えてきた。

  • ミロコマチコと市民協働の里山動物記朗読会

  • 川村亘平斎ら滞空時間による水上能舞台公演

  • いしいしんじのその場小説に荒井良二が共演