活動の目的
1.豊かな日常をつくる 2.福島県やいわき市の地域文化・美術の系譜を伝え、つなぐ 3.芸術・文化を活用し、新たなコミュニティーを作る 4.芸術・文化活動の担い手となる人材を育成するため、学びと実践の場をつくる 5.市内外、県内外、地理・分野・年代を超えた広域なネットワークを構築する 6.民間主導型の芸術文化拠点を構築する
活動の内容
いわき駅前中心市街地一円の商店等を活用し、現代美術の展示を軸とした芸術祭を開催した。三浦かおりは出展にあたり、2万人を越える相双地区からの避難者の思いや、いわき市で暮らす人々へのリサーチを重ね「声にならない声、音にならない音」である「。」に着目し、いわきの詩人草野心平の詩「故郷の入口」が書かれた原稿用紙を分解・再構成して作品へと昇華させた。他の作家も、避難者が住まう復興公営住宅や農家等へのリサーチを行い、それぞれの作品に活かした。活動を通して、本地域では昔からインディペンデントな芸術活動が盛んに行われていたことが分かり、いわきの現代美術の系譜を辿る企画も実施した。WS形式で制作したガイドブックは、近隣の商店主に好評を博した。
実施場所:いわき駅前中心市街地一円の商店、いわき芸術文化交流館アリオス、草野心平記念文学館
参加作家、参加人数
参加作家37名。芸術祭で作品を鑑賞した市民5584名。
関連イベント・WS参加者、延べ526名。
フリーペーパーのつくりかたWS65名。オープニング50名。シンポジウム・トーク2本71名。子ども向けWS2本101名。映画上映4本86名。ライブ2本99名。ツアー1本32名。ダンス1本22名。
他機関との連携
いわき芸術文化交流館アリオス、草野心平記念文学館、マジカル福島実行委員会、いわき駅前観光案内所、3.11被災者を支援するいわき連絡協議会、平商店会連合会、地元飲食店と連携し、事業を実施した。
活動の効果
芸術祭の準備に多数の市民が関わった。そこでアーティストたちの斬新な視点や、普段は気にも留めていなかった課題、自分たちの住む土地の価値や文化が自然と見いだされ、多様性を受け入れる土壌が中心市街地に形成された。物理的な場として新たな「アートスペース」が開拓されたこともさりながら、芸術・文化が豊かな暮らしをもたらすということに理解を示す市民が増え、多方面での協力者が増えたことによる中心市街地の芸術文化活動基盤強化という効果がみとめられた。
活動の独自性
福島県いわき市というデリケートな課題を抱える地域で、アーティストが自由な表現行為を行うにあたり、当団体の広域なネットワークと、行政を含めた他組織間での信頼関係が担保となっていることが分かった。これは、アーティストやアートの専門教育を受けた人間がアート自体のために行う活動ではなく、地域の課題に直面しつつも、この場所で日々の生活を営んでいる市民が「自分たちの暮らす地域を自分たちで豊かにして暮らしていきたい」という思いを原動力として、主体性をもって活動が行われているからこそ生まれている信頼関係であることが分かった。つまり、この活動を支える実行委員の一人一人が、本活動の独自性そのものである。
総括
活動の中で、芸術祭自体よりも開催のための準備が、大きな効用をもたらすことが分かった。そして、アーティストと「街や人」をつなぐコーディネーターの層の厚さが、その地域の芸術文化基盤となることが分かった。本活動による実践を通したコーディネーターの育成は、継続して実施していきたい。そのため、H29年度は、人の興味関心を刺激する「作品力の強化」を意識しつつも、展示を主目的としない「アートプロジェクト」を芸術祭のプログラムとして積極的に組み込んでいきたい。いわき市の現代美術の系譜を辿るプログラムは、世代を超えて反響が大きかった。今年度はリサーチ段階から発信を行いたい。芸術祭の紹介と街の案内を兼ねたガイドブックは商店街からの評価が高かった。本活動の実績が認められ、2017/3/29に「いわき文化まちづくり会議」といういわき市長を招いたシンポジウムを、当団体といわき市文化振興課が共同主催するに至った。パネリストは、H29年度のいわき市の文化事業の実行委員として活動を行う予定。「玄玄天」が市の芸術・文化運動の活性化に寄与し、いわき市の芸術・文化の継続的な発展への礎の一つとなったことが本活動の最大の成果である。
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いわきの現代美術の系譜を辿るシンポジウム
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三浦かおりの作品を批評する赤坂憲雄
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草野心平記念文学館の正面大窓への展示作品