活動の目的
地域文化の醸成を基軸としたアートプロジェクト。見方をずらすことで見えてくる地域課題の真相を解明する一助を、アーティストの目線による新しいアプローチが担う。地域資源の掘り起こしと発信、それに伴う来訪者からの評価によるシビックプライドの醸成、そしてその先の持続的な未来に向けて、ひと・まちの健康・健全化を目指す。
活動の内容
2地域における拠点づくりとその活用方法を創造しながら、地域の文化醸成・人材育成に取り組んだ。
①臼井地区:水と土の芸術祭2015で林僚児(アーティスト)は、約400年の歴史を持つ白根大凧合戦の素材と、新しいお祭り「狸の婿入り行列」を融合させる作品「巨大狸ドーム」を制作。2016年の白根大凧合戦のパレードに参加し、融合のお披露目をした。「狸の茶の間」は引き続き交流拠点として運営。
②白根地区:地域の洋品店として慣れ親しまれた「天昌堂」が閉店して約3年後の2016年、菊池宏子(アーティスト)・市原幹也(演出家)・林敬庸(大工)とともに地域の交流拠点として再生するプロジェクトと、それを教材とした人材育成を実施した。
実施場所:新潟県新潟市南区
参加作家、参加人数
参加作家:林僚児、菊池宏子、市原幹也、林敬庸
参加者:①制作参加者4人、パレード見学者 約2,000人、狸の茶の間参加者 延べ452人 ②人材育成受講生8人、地域参加者 延べ913人
他機関との連携
新潟市、白根大凧合戦協会、臼井地区コミュニティ協議会、白根商工会、白根仏壇組合、白根商店会連合会、(一社)白根青年会議所
活動の効果
2015年度から始まった活動による、新しい目線での地域活動の増加とその成功体験により、区内全体に「チャレンジしてみよう」という機運が若手を中心に高まっており、区の既存行事にも新たな試みを取り入れるなど、活動の効果が直接的だけでなく、間接的にも出ている。行政との協働意識も醸成され、意思疎通がうまくいくようになった。
活動の独自性
拠点活用によるコミュニティー再生は健康福祉課や地域課で、観光開発や土産品開発は産業振興課で、など、現代アートが社会で果たす役割を多角的にとらえ、新潟市南区のまちづくりに実際に活かしている。また2017年度から新潟大学医学部と共同研究し、現代アートがソーシャルキャピタルの醸成に寄与し住民の健康度を上げる効果について、実証していく足掛かりを作った。
総括
臼井地区では、「狸の茶の間」を拠点に、狸をテーマにした地域ブランディング・コミュニティー再生が継続実施されている。白根地区では、人材育成の受講生とともに「天昌堂」を再生し、交流スペース、地域の茶の間、ミュージアムが完成。プロの大工が入ることで、地域の建築様式から文化を知るきっかけとなり、規則正しい規律の中での協働作業は、日常の「当たり前」の尊さを学ぶ機会となった。現代アートの概念は、物事を多角的に捉える基礎となり、受講生の企画による「つながるベンチプロジェクト」を商店街の店主たちと協働して実施。商店街をつなぐ文化の掘り起こし・可視化を行い、店主たちが今度は自らが主役となりその文化を発信していくきっかけを創りだした。これら地域の拠点がまさにハブとなり、人と人、人とまち、過去と未来をつなぐ媒体として、まちづくりに活用されている実例となった。また、この拠点形成を担う人材育成を同時に行うことで、未来に向けて継続的に運営可能な仕組みを創りだす総合事業となっている。この実例を他区に飛び火させながら、2018年の水と土の芸術祭での回遊性の形成、さらには、2020年の東京オリンピック文化プログラムへの火付け役を担っていく。
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「つながるベンチ」発表会
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墨付けから手刻みまで行った交流スペース
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白根大凧合戦のパレードに巨大狸ドーム出現