活動の目的
湖と田んぼのつながる原初的風景の木崎湖にパプア・ニューギニアの秘境探検を行った探検家の西丸震哉の記念館が建つことから始まった原始感覚美術祭によって、生活や信仰、農業、経済、科学など分化できない生きることそのものをつなぐ、新たな在り方の“文化”をつくることを目的とする。
活動の内容
7年目となる原始感覚美術祭では、水の地、木崎湖自体が語りだす「水のかたりべ」をテーマに開催する。地が語る、その媒体=語り手として、その地に住み着いた作家が、地の文化を受け継ぎ、語り継ぐこと、地に根づいていくような企画を行い、マレビトとして訪れる滞在作家が、新鮮な驚きとともに地の声を造形空間として立ち上げることで、木崎湖という地は今、新たな伝統を語り始める。
作家プレゼンテーション、みのくち祭り、原始感覚獅子舞、市が立つ、原始感覚シンポジウム、うみに聴く水の沙庭、即興朗読ワークショップ、原始感覚AAF学校、千年の森祭り、原始感覚火祭り、古代人の原始感覚、原始感覚マラソン、原始感覚映画上映、原始身体音
実施場所:長野県大町市
参加作家、参加人数
インドラ・ミロ、リー・クーツィ、マンメイト、平川渚、田口ランディ、長谷川章、茂木健一郎、あふりらんぽ、美麻源流太鼓、齋藤徹、大塚惇平、小山修三、三角みづ紀、雪雄子、斉藤“社長”良一、バッキ―、林栄一、外山明、Toki、はまぐちさくらこ、森妙子、佐藤啓、杉原信幸、淺井真至、スコット・リバーほか
延べ参加者10000人
他機関との連携
■信州山岳文化創生会議の協力でカーボンリザーブアート開催。■千年の森自然学校での展示とイベント開催。■キッズデイ大町での淺井真至のワークショップ。■地元のやまびこ祭り、北アルプス三蔵呑み歩きへの参加。
活動の効果
まれびととして訪れる作家が、土地の声に耳を澄ますような作品を制作し、住み着いた作家と地元のお囃子が獅子舞を舞うことで、地の人、外の人、住み着いた人が一つの空間を創り出した。初参加した地元の美麻源流太鼓の子どもたちは素晴らしい演奏を行い、見に来ていたピアニストの方が、ヨーロッパのフェスティバルに紹介したいと名刺交換をしていた。普段出会うことのない人が出会うことで生まれる縁こそが祭りの意味である。
活動の独自性
木崎湖畔で無農薬のお米作りを行う農家の心意気に惹かれて集まった仲間たちが、大地とともに生きる「生活における花」としての祭を作り上げてきた。原始感覚というテーマをもとに、ジャンルを超えた表現者が集い、木崎湖の豊かな自然とその地に暮らす人と出会うことでしか生まれえない常設作品を制作し、原始感覚の里を形成する。滞在作家のうち4名が地元民と結婚、定住し、3組のカップルに4人の赤子が生まれ、外部と内部を結ぶ場になっている。地元で面白いことをやりたい人自らが企画を行い、実現できる場となることで、継続的な祭りづくりを行う。
総括
オープニングとクロージングにイベントを集約して開催したため、作品展示のみを見に来る参加者は若干減少したが、各担当者が自主的に企画を行い広報に努め、イベントの集客は増加した。平川渚の「ミナワ」は湖の蛇の鱗のような土地のスピリットを造形化し、マンメイトは農家の人の身体を土地の山に見立て、農家の方の体の型取りすることで、土地の人との関わりを持つ制作を行った。滞在制作で生み出された作品に奉納舞を行う原始感覚獅子舞では、朝一番に舞った中村家の家主さんからご祝儀を頂いた。予期せぬ心遣いは、祭りの始まりの志気を高めてくれた。朝から参加してくれた作家の田口ランディさんが途中から、門づけの唄を即興で唄って獅子舞に加わってくれた。作品を見て回るだけではなく、異形の獅子舞が入ることで、より濃密な作品空間を体験できて面白かった。ぜひ来年もやろうと言ってくれた。地元作家の企画した火祭りには、たくさんの若者が訪れ好評だった。千年の森祭りでは、踊りが子どもの感性を刺激し、子どもたちの即興の影遊びの方がメインになるほどの盛り上がりを見せた。原始身体音ではジャズの名手と舞踏、詩と踊りの交差する創造的な時間が生まれた。
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「ミナワ」平川渚湖畔の木々に糸を編み続けた
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原始感覚獅子舞@リー・クーツィ「漣劇場」
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原始身体音雪雄子、斉藤“社長”良一ほか