活動の目的
現在、別府だけでなく、大分県全体でアートと地域性を掛け合わせた地域の魅力創出の取り組みが盛んである。本事業を通して、2018年に大分県で開催する国民文化祭や2020年のオリンピック文化プログラムの機運を高めるとともに、大分県が掲げる「創造県おおいた」の推進や、さらなる地域の魅力創出の促進につなげていきたい。
活動の内容
2009年から計3回実施した「混浴温泉世界」の後継企画として、「in BEPPU」を今年度から始動した。毎年1回、国内外で活躍するアーティスト1組を招聘し、別府の地域性を活かした大規模なプロジェクトを実現させる。第1回目となる今回は、現代芸術活動チーム【目】を招聘し、別府市役所でツアー型の展覧会を実施した。作品「奥行きの近く」は、この市役所の窓の外に、白く霧がかった世界を作り出し、庁舎内にもさまざまな仕掛けを施した。その不思議な風景と、公務が行なわれている市役所内空間との対比によって、鑑賞者の足元に続く日常を異質なものに変貌させる。鑑賞者は、何気なく置いてある物体や市役所にいる全ての人に対し違和感を感じ始め、さらにはツアーが終わった後も作品が続いているかのような錯覚を覚える、非日常的な体験ツアーとなった。
実施場所:別府市役所内(大分県別府市上野口町1ー15)
芸術祭期間:2016年11月5日~12月2日
参加作家、参加人数
参加作家
・現代芸術活動チーム【目】
参加者
・1,122名
他機関との連携
主に別府市と連携を図ることで、別府市役所を会場に、偶然市役所に来た方にも作品ツアーに参加頂ける機会を作ることができた。他、大分市、別府市内の旅館・ホテル・大学等、JR、連携機関は多岐にわたる。
活動の効果
会場が別府市役所ということで、普段アートになじみのない人にも多く参加して頂いた。展覧会を別府市役所との綿密な協働のもと作り出したことは大きな成果といえる。また、今回のツアー作品のガイド役には、前回の芸術祭で関わったボランティアの方々が再度集まり、前回の経験を活かした質の高いツアーとなった。
関連企画である「ベップ・アート・マンス 2016」は過去最高の参加登録者数87名、プログラム数97となったほか、参加登録者の満足度も9割をキープしており、市民の恒例行事として定着しつつある。
活動の独自性
誰もが参加できる市民文化祭「ベップ・アート・マンス 2016」と、質が高くエッジの効いたアーティストによる個展形式の芸術祭「目 In Beppu」を両輪としてプログラムを実施することにより、市民の鑑賞と表現活動の両方を充実させる仕組みを確立した。市役所の庁舎内でのツアー型の展覧会開催という取り組みを通して、普段アートに関心のない別府の市民にもアート作品を体験していただく機会を提供した。別府市役所や市民との綿密な協働による展覧会づくりも本事業の大きな特徴といえる。
総括
「混浴温泉世界」が2015年に閉幕し、その後継事業として始まった「in BEPPU」。本年の第1回目の「in BEPPU」は、アーティスト集団【目】を招聘し、別府市役所を会場に「目InBeppu」を開催した。知覚を揺さぶるようなこのプロジェクトは、賛否両論引き起こし、図らずもアートとは何かについて考える契機になった。現在、大分県は地域性を活かした文化振興事業が盛んに行われている。さらに、2018年に大分県で開催される国民文化祭では、全18市町村で新たなアートプロジェクトの実現を目指しており、「in BEPPU」はそのリーディング事業としての役割が期待されている。そのためには、より一層の質の向上、実施体制の強化が求められている。来場者はツアー参加者1,122名と、目標の1,500名の75%にとどまった。芸術祭の初回という知名度不足のうえ、作品制作の遅れや、スケジュールと広報の遅れなどが原因であり、次回以降の課題となった。そこで、「目 In Beppu」をいわば実証実験として実施することによって、現在の我々の実力を明らかにするとともに、東京オリンピック文化プログラムが全国で展開される2020年に向けたビジョンを策定する期間としても、本年の活動を位置付けた。次年度以降、このビジョンを実現していくために、組織の業務改善プロセスに重きを置いた課題解決評価シートを組み立てたいと考えている。
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市役所の窓の外に霧がかった不思議な空間をつくった
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「奥行きの近く」はツアー形式の作品
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アーティスト直筆のドローイングを市役所に展示